ザ・グレート・展開予測ショー

奮闘記 傍系番外編


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(03/ 8/22)

「・・・・ん」
おかしい。私は体育館で燃え尽きようとしていたはずなのに。
建物の中にいるようだ。
見たこともない場所であるが、何処と無く懐かしい。
瞳孔が復活する。
三世院京華、古びた寝床にて介抱されていたのだ。
「保健室かしら?」
健康優良児の彼女とはいえ、そこは年頃の女の子不意に保健室が必要になることも多々ある。
だが違う。どうも物置代わりの部屋であるようだ。
「・・・気が付きましたか」
ドアが開いていたことに気が付かなかったのは不覚だ。
そのドアの先がすぐ階段になっているところをみると屋根裏で有ることは判る。
「あ、貴方は?」
大柄な男が足音を極力消して入ってきた。手に何かを持っている。
真っ黒な服である。それが直ぐにキリスト教に属する者がきる法衣で有る。
名乗ろうかと男がクチを開きかけた時、
「・・・あっ!」
半ば朦朧としていた意識が戻ってきた。
あの場所、体育館裏で。
霊力の暴走はよもすれば生命の危機である。本人も相手も。
その時であった。
今目の前にいる男が二人の間に入り、
『ぬん!』
と、自らの体で暴走を止め、なおかつ火炎を上空へとやり消し去る。
更にライバルの手にある神具の状態見ただけで、
『これはいかん』と、幾ばくかの霊力を与えていたのだが、それは覚えていない。
感覚で車に乗せられたのは覚えている。
ではここは何処であろうか?
いずれにせよ、目の前の大男は命の恩人であることには間違いないようだ。
とりあえずは起き上がろう、と背中に力を入れる。
「待ちなさい」
「えっ?」
「これを」
と、手に有るものを見せる。声をあげる京華である。
「あ、あたくしの制服?」
じゃ、ベットの中のあたしはと、急いで腕やらおなかをさする。
どうやら下着はそのままであるらしい。
ということはだ。この男が?
「いいえ。ここまで貴方を運んだのはお友達です。火炎による破損が酷かったので」
焦げ目、破れ箇所を使える部分を裁断し、裏打ちを行ったと言う。
「若干、丈が短くなりましたが、然程問題は無いでしょう」
少々、出て行くので着替えなさい、とつげ、一度ドアを閉める。
「・・・?」
あまりにも非現実的な展開になる。混乱も収まらない。とりあえずは従おう。
それで体を動かす。奇妙な事に一切の外傷も無い。疲労も無い。
「悪戯もされて・・ないみたいですわね」
であった。
先ほどまできていた制服が確かにやや小さく感じるが、言われなければ気が付いたかどうか。
「よろしいですかな?」
ドアの外からの声。
「はい、着替させて頂きましたわ」
尚、脱がしたのが、同性友達で有ることは後に判ることである。
ドアが開く。男は先ず十字を切る。
「先に名乗りましょう。現在バチカンに属する神父で、極東宣教活動の職にある、クリスチャン名『レジット』と申します』
「私は、三世院京華、と申しますわ。まずお礼を申し上げます」
礼を尽くす形が英国式であったのは、身に付いた事である。
「失礼とは存じ上げましたが、お体の傷も多く疲労も溜まっておりましたので、霊的治療を施させていただきました」
「それは・・」
判らないことだらけの京華である。
第一、ここが何処か不明である。
それを察したのかレジット神父、
「ここは、現在GS協会会長、唐巣枢機卿の教会です」
補足を加えよう。我々の知る唐巣和弘氏は自称の神父であった。
だが、時の流れが幾つかの奇跡を呼び、現在関東圏でのキリスト教聖者の中で、
バチカンから正式な枢機卿を承っている現在である。
尚、呼び方を『すうききょう』師、神父、司教、大司教、の次の位であり、法王への切符へともいえる地位である。
最も本人にはその気はないであろうが。
相手が相手だ。京華が気色ばむのも無理は無い。
「おやめなさい。枢機卿は私よりも強い」
そう。あのときいとも簡単に事態を終結させたレジット神父よりも強いう事は。
「わたくしでは、かなわない相手であると?」
「左様、ですが、枢機卿が貴方と話したがっております。どうぞ、礼拝堂へ」
差し出した左手に誘われるが如く、歩みだした京華であった。
「・・似ておられる。故、フラウ女史に」
「!今なんとおっしゃって?」
この神父は母を知っているのかと問おうとすると、
「このレジット、極東支部に来る前、英国との確執を取り除くために働いておりました故、何度か」
20代前半の頃に会っているとか。
母を知る一人とは・・。改めてこの世界の広さを知る事になるのは後である。
唐巣教会、本人の地位が上がったところで然程の建物の改修を行わない。
ゆっくりあるいても、階段がぎしぎしときしむ。だが、レジット神父は音を立てていない。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa