ザ・グレート・展開予測ショー

#まりあん一周年記念『ヒト』(完結編7)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 8/20)

マリアは、ベンクを責める事なくジムのいる場所へと通した。
こんなにも、闇が、夜が、恐ろしいと感じたことはベンクはなかった。
知らず震えてくる身体で、目の前のベッドにいるジムを見る。

ぼんやりとした灯りに照らされた顔は、ひどく蒼く生気というものが感じられない。

マリアは、くしゃっとベンクの頭を撫でて『有難う』といった。
きてくれて、有難うと。
無機質な、感情を込めてないだろう声音で
あたたかい。言葉を。

ジムはベッドの上から、ベンクを見つけるとゆるりと、笑顔を浮かべる。

「ジム……」

ぐっとその様に痛みを感じ、ベンクは喘ぐように、名を呼ぶ。


「……きて、くれたんだ…あ」

へらっと、いつもの彼の笑顔で、そしていつもの声とは比べ物にならない小さな声で、言う。
あまりの声の小ささに鈍い痛みを、ベンクが感じるほどの小ささで。

ベンクはがくがくと震えながら、近づき、がばっと音がつきそうな勢いで頭を下げて云う。

「ごめんなさいっ!」

それだけを。
だらだらと涙を流しそれだけを言う。
きっと
これを云うまではなかないと、決めていたのだろう。
それ以上は、既に言葉にはなっていない。
ただ嗚咽だけがその部屋に響いていた。





そんな中小さな、声が聞こえた。
ほんの小さなだけれども、誰も聞き逃すことのない声。




「…………………………うん。許して…あげ……る」


いっそ、あっけないといえるほど、明るい声が。


「だからさ、…………なかないで?」



ベンクは、目を見張ったまま
涙を流すことすら、一瞬忘れ、ジムを見た。


なんでだろう
なんで、ジムはこんなことがいえるんだろう。

気にしないでとも、云うわけではない。
オマエのせいだと、云うわけでもない。
ただ、許すと。

こちらのこころに一番、負担をかけない言葉をかけてくれるのだ。
特別、力があるわけではない。
頭がいいといっても、学者になれるほどではない。
特別なものは、何一つもっていないそれなのに。

なのに、なんでこんなに強くて、優しいのだろう。



「馬鹿…やろっうっ!!!」
ぼたぼたっと涙をこぼしながら、ベンク。

「馬鹿って……ひ…どいなあ」

「俺は、…オマエを傷つけたんだぞっ!許すなよ!」

「……………いや…だよ」

「なんでっ!!!!」

「だって…ベンクも、傷ついて…るもん………」

「……?」

「だって……こころが…いた…い…って…いってる…」
肩で息をしながらも、迷いなくジムは云う。
笑みを、刻んだまま。

「僕……ね…ベンク…だい好き…だよ……………」

「俺だって!」

「………………うん。しってる……だからさ、いいんだ」
他のひとなら、ちょっとは悔しいけど。
ベンクだから。
ベンクがしたことだから、うん。
許せる。

へらっとわらってジムは云う。


「だから…僕が…許したん…だから…ベンクも許して……親友の………最後の…頼みだよ」




「…ずりぃ…よ」
涙を流し、首を左右に振りながら、ベンク。


「ゴメン…ね」
ジムはそんなベンクを見て、すこしだけ、目を辛そうに細め云った。



つづく

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