ザ・グレート・展開予測ショー

〜キツネと仕事とウェディングと エピローグその3 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 8/18)



〜キツネと仕事とウェディングと エピローグその3前編〜





「・・しかし・・考えてみれば、とんでもない仕事だったよな。」

「・・ほんと・・。」

早朝。

横島とタマモはそろって帰路についていた。
まだ夜明け間もないということもあり、通りを歩く人影はない。

普段、喧騒に包まれた商店街とは一線を画した風景がそこにはあって・・、

・・・・・。

・・2人は・・。

・・・・。

・・・。

「「・・・眠。」」

・・いい感じの雰囲気などには全くならず、どす黒いクマを浮かべながら、そうつぶやいた。

そもそも、情趣や風情といったものは、心身優良なときにこそ生じるものであり・・、
その点、彼らは・・徹夜明け、空腹、出血多量、というそんな状況。

タキシードとドレスの上に、血がべっとりとこびりついた・・・・、
この服装だけ見ればもはやスプラッタ映画のワンシーンに近い。

・・・。

「・・あのさ〜・・。」

横島がどんよりした様子で声を漏らし、

「・・・何?」

気だるげにタマモが言葉を返す。



「この依頼・・依頼人を倒しちゃったってことは、当然、報酬は前金だけってことだろ?」

「そうね。」

「・・ということは、やっぱり当然のごとく美神さんは怒り狂うよな?」

「そうね。」

「・・・その上、朝帰りじゃあ・・おキヌちゃんやシロのフォローも望めないんじゃ・・」

「全くその通りね。」


・・・・。

・・破滅だった。
タマモはそれほど被害を被らないから良さそうなものの、自分は・・。

・・・・自分は・・・・。

・・・。

「いやー!!!!鞭イヤー―!!せっかん嫌いーー!!」

がんがんがんと・・、横島は柱に頭を打ちつける。
とりあえず朝からこれではご近所迷惑だ。


本当に・・、悪魔と死闘を演じていた彼とは別人のようで・・・。


「・・・あぁ、もう・・。分かったわよ。今回は私がなんとかしてあげるから。」
タマモは、頬をかきながらそうつぶやいた。


「・・・マジ?」

「命を助けられたんだから・・まぁそれぐらいはね。」

瞬間、横島は顔を上げて・・・・、


「た・・タマモ様ーーー!!!」

「抱きつくなぁ!!!」


――・・スパコォォォォォォン!!

晴天の中、素敵な殴打音が轟いた。

                   

                ◇



「・・・全く。」

呆れながら、しかし少しだけ心臓を高鳴らせながら、
タマモは自販機のボタンを押した。

コーヒーのブラック。
結局、昨夜は飲み逃した。
横島の希望もあり、改めて飲みなおそう、と決まったのは先刻のことだ。

・・ついでに白状すれば、美神たちの分も買ってご機嫌を取ろう、という算段もある。

先程のやりとりで、行動不能の相方に代わり・・タマモが1人で缶を抱え上げて・・・。


「・・・っと。さすがに5人分はちょっときついわね。」
少しよろめく。


横島を呼ぼうと、口を開きかけた・・・・その時。

「・・・あ。」

腕から、缶が1つだけこぼれ落ちた。


――・・カラン、コロン・・・。



「・・・・・。」



(・・とりあえず、あれは横島の分で決定ね。)

なんて・・なに気に失礼なことを考えながら、タマモは大儀そうに腰をかがめて・・・。


・・・?


そこで気がついた。
落としたはずのコーヒー缶がすでに、目の前に差し出されている。


「――・・落としたよ。」


そこに立っていたのは、少年だった。
蒼髪に緑の瞳。透きとおるように白い肌と、異常なほどに整えられた顔立ち。

美しいと感じる前に、まず寒気が走る。

人間の美ではない。
それは・・精巧に象られた人形の・・いやそれよりももっと得体の知れない魔性の美だ。

・・胸の中で、なにかがざわめいた。

――・・コイツに関わってはいけない。

目の前にいるこの存在は『危険だ』・・・それも圧倒的に・・。


「・・クス。妖狐か・・。間近で見たのは初めてかな。」

怯えるタマモの様子を意に介することなく、少年は無邪気に頬を緩める。


「・・・あ・・あなた・・一体・・。」

「・・彼との絆、大切にしてね。それが君の生き残る道でもあるんだから。」

タマモの腕に缶を収めて・・、彼はたしかにそう言った。


・・・そのまま・・・歩いて行ってしまう。


「・・・・。」

振り向けば、彼は姿を消していて・・・。





「どうかしたか?タマモ。」

戻ってこないのをいぶかしんだのか、横島がノロノロ近づいてきた。


「・・・・。」


「タマモ?」


「・・・なんでもない。」

タマモはポツリとつぶやいた。





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