ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記外伝U(その3)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 8/17)


「て、テレパスになったあっ!?」

「こ、こら!声がデカいわよ真鈴!!」

蛍に口を押さえられた真鈴が『ンー!ムー!』と何か言っているが、
今、教室にいる初めての中間テストを終えたばかりの同級生達はたいして気にしていなかった。
『ああ、いつもの西条と横島の漫才か』と。

「ぷはぁ!・・・・にしてもあの水にそんな効果があるとはねぇ〜。一応文字通りの成果出るんだぁ」

蛍の手をはずし息を吐く真鈴。

「・・・・・・・・・・何よ、その『私もわからなかった』みたいな反応はぁっ!?
 それにテレパスたって微々たるもんよ?たまにしか聴こえないし、ノイズが走ったみたいに聞き取れないほうが多いし」

昨日、忠志の思考を読んでからも何人かの思考を聞き取って蛍は自分の能力のことが大体わかった。
1、自分がテレパスになったこと
2、対象者に触れなければ心の声は聞こえない。
3、聞き取れるのは1セリフくらい
4、聞こえてもノイズが入って理解できることが少ない。
5、たまにしか発動しない。


「とにかく、別にこんな能力欲しくないから『責任』取ってどうにかしなさいよね!」

「お嫁に来る?私、『受け』でいいわよ♪」

「冗談はいいから何とかせぇや・・・」

「怒らないでよぉ〜!
 まだあの潜在能(以下略)で本当にあんたの潜在能力が目覚めたのか、
 それともあの水にたまたまそういう能力が身につけれる効果があるのか分からないし・・・
 ちょ〜っち調べさせてよ。・・・・でも、そういう能力があったほうが便利で楽しそうじゃない♪」

「人の心の醜さを聞き取って人間不信になっちゃうっていうお約束は勘弁して欲しいのよ、
 私のおじいちゃんがそうやって苦労してたの真鈴だって知ってるでしょ?」

「そう言えばそうだったわね・・・・ま、今日カオス師匠に相談してみるからどっちにしても明日になるかな」

「早くしてよね・・・」

自分の実験品の効果にウキウキとしている悪友にゲンナリとした表情の蛍、
そんな蛍に真鈴がちょんちょんと指で触れた。

「何よ?」

蛍は机に伏せていた顔を面倒くさそうに真鈴のほうに向ける。

「ね?ホントにテレパス能力見せて〜♪私の思考読み取っていいから♪」

いきなりに何を言うんだと目を細めて悪友を見るがその瞳は蛍と反してキラキラと輝いている。
こういうときの真鈴は何を言っても無駄だと蛍はタメ息をつきながら観念すると

「はぁ〜分かったわよ・・・多分上手く出来ないけど」

蛍はそう言って真鈴にメガネを外させその額に手を当ててみる。
う〜ん、と集中させてみるがやっぱり何も聞こえない、不安定な能力なのだから当たり前だが
悪友は相変わらずワクワクと言った表情で結果を待っている。

(そんな期待されても上手く出来ないわよぉ・・・・っていうか何でこんな能力が・・・
 おじいちゃんがテレパスだから?でも霊的特殊能力は必ずしも遺伝するとは限らないし、
 じゃああの水のせいのなのかしら・・・・、というか真鈴があんなもの作って飲ませるからじゃない、
 ホント小学校のころから毎回毎回・・・・なんか腹立ってきたぁ!)

ミシぃ!

「いたたた!?」

真鈴は突如こめかみに走る痛みに声をあげる。
それもそのはず・・・握力45kgの蛍のアイアンクローが炸裂しているのだから。

「・・・・『実験品が上手くいって嬉しいなぁ、これを発展させて世界征服の足がかりにしよう』
 なんて考えてるわね・・・」

「当たってるけど今のは心を読んだって言うより!」

「あんたの考えそうなことくらいわかるわよ!!」

「あいたたたっっ!!!怒ってる!!蛍怒ってるぅーー!!」

「あったりまえでしょ────っ!!」

怒号と共に繰り出される蛍のアイアンクローから真鈴が開放されたのは、
クラスメイトの仲裁が入った10秒後のことだった。






「ただいまぁ〜」

少し間伸びた声で蛍は自宅の玄関の戸を開ける。
現在の時刻はAM1:10。テスト週間は早く帰れるのは今も昔も変わらない、
当然、一般家庭なら父親は会社にいる時間なのだが・・・

「お、蛍。おかえり」

蛍を出迎えたのは真昼にも関わらずパジャマのまま廊下を歩いていた横島だった。
GSはもちろん昼には事務処理や接客などの仕事もあるのだが、総じて深夜に仕事をすることが多い。
だから横島が昼に家にいることも珍しくはなかった。

「あ、パパー、んー!ただいまぁ♪」

「た、ととと」

蛍は靴を脱ぎ玄関を上がるとギュっと勢いよく横島に抱きつく。
この光景は別に珍しいことではなくいつも帰宅したときは包容しあうのが二人の習慣。
ちなみに忠志からは『ファザコン』とか令子からは『いいかげん親離れしなさいよ』とか言われるのだが、
蛍は大して気にしていない。

「ママは?」

「ん?今日は朝から依頼人と打ち合わせがあるんだとさ」

「パパは行かなくてもいいの?」

「それが今日の依頼人はママのファンでな、『美神&横島事務所』じゃなくて、『美神令子』に依頼したいんだと」

「くすっ、ちょっと妬いてるの?」

「バーカ、ママはパパ一筋だから心配なんてしねーよ、
 結婚するときなんて『私と一緒になってくれなきゃ東京タワーから飛び降りてるやる』って言われたんだから」

娘のイタズラっぽい笑顔にあることないこと言う横島、
その後『ママに聞いてもいい?』という蛍の言葉に『今度、好きなもん買ってやるから勘弁』と頭を下げるのはお約束。

「パパにもファンがいたりするの?」

「ふふ、ママには内緒だぞ?これでもパパにも結構ファンがな・・・・」

「・・・・・・・・・」

ちょっといやらしい顔で耳打ちする父親に向けられたのは年頃の娘からの冷たい視線だった。
横島はその視線に気づき『あうあう』と言い訳するが蛍はプイっとそっぽを向いて自室へと行ってしまう。

(もう!・・・・・・・・パパのファンは私だけでいいのに!!)

ちょっと気難しい年頃の娘の心を理解出来ずに『娘に嫌われた』と廊下で落ち込む横島だった。(こんな感じで→_| ̄|○ )




二時間後・・・・



昼食をとって無事和解(?)した横島と蛍は居間でアルバムと写真を広げ楽しく語り合っていた。

「うわぁ〜、これ4年前の正月だよね〜?あ、これ小学校の入学式!」
「おいおい、蛍ぅ、アルバムを見て懐かしむのはいいけど写真の整頓手伝ってくれよぉ」
「分かってるってぇ〜!うひゃぁ、これ忠志が生まれたときのだ!」

返事はよいが一向に手伝う兆しの見えない娘にタメ息をつきながら横島は延々と写真を整理していく。
今はこの間のGWに行った旅行の写真の整頓をしているのだが、一緒に引きずり出したアルバムに蛍は夢中だった。

「あ、これ私のアルバム!」

蛍がまるで『宝物』を見つけたような輝く瞳で開いたのは『HOTARU』と表紙にプリントされたアルバムだった。
横島家には『夫婦用』『蛍用』『忠志用』『令花用』『家族用』の5種のアルバムがあり、
蛍は自分のアルバムを発見したのだった。

「ねぇ!パパ一緒に見ようよ!」

「後でな、後で」

「え〜、すぐ終わるから〜、ね?」

少しウルウルとした上目使いの視線に横島は思わず「うっ」と詰まる。
昔から蛍はわがままやお願いをするときの必殺技なのだが、親バカな横島はいつも・・・

「は〜、しゃ〜ねーなぁ。でも3時半までだぞ?パパ、仕事あるから」

と折れるのだった。
その返事に蛍は満足そうに笑みを浮かべると、あぐらをかいた横島の足の上によいしょと座った。
優しい父の温もりを感じられる特等席・・・・そこが蛍の決めた自分のいるべき場所。

「ほら、幼稚園の運動会・・・うふふ、パパったら父兄二人三脚で一等賞取ったのよねぇ〜♪
 あ、見て見て!七五三の着物初めて着たときの写真だぁ・・小さいなぁ私!」


今までの人生の足跡に嬉しそうな声をあげる蛍。
いや・・・、ただそれだけじゃない・・・パパが一緒にいるから・・・
それが蛍の心をさらに弾ませるのだった・・・。

そして・・・アルバムを持っていた手が滑り一番最初のページが開く。

そこに貼り付けてあったのは・・・・


「わ〜!私ってかわいい赤ちゃん♪」



蛍が生まれたときの写真・・・
ふさふさとした黒い髪に真ん丸い手足とぷくっと膨れた頬、誰が見ても心和む幼い生命。
例えそれが自分だと分かっていても自賛してしまうのは人の性(さが)だろう。

「ね♪パ・・・」

大きく引き伸ばされページいっぱいの大きさのソレを父にも共感してもらおうとしたとき・・・

「・・・!!?」


────・・・・・る・・・ぉ・・

蛍の中に一つの言葉・・いや、単語が流れ込んできた。

「ん?どうかしたか?」

「え?ううん!何でもないよ!あ、ほらもう3時半だよ!?仕事行かないと!」

「うわ!やべぇ!んじゃ蛍、あと片付け頼むわ・・・だぁ〜!令子に怒られるぅ!!」

蛍に促されバタバタと出勤の準備を始める横島。
そんな父に仕方ないなぁ〜という表情で苦笑いを浮かべる蛍だが・・・やがてその表情がしだいに曇っていく。
その理由は・・・・

(・・・・・確かに聞こえた・・・・さっき・・・パパが・・・)

大急ぎでスーツの上着を羽織る父を見つめる。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ルシオラって言ったのを・・・・)

先程聞こえた横島の心の声。
『ルシオラ』・・・・・・・・・。今まで聞いたことも見たこともない単語。
地名なのか、人名なのか、外国語なのかも分からない・・・・だけど・・・・





(だけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・





















ドウシテ・・・・・・・・・・・・・・・






コンナニモ・・・・・・・・・・
































不安ニナルンダロウ────













なぜか沸き起こる苦しさと悲しみ・・・・・そんな表情の蛍に・・・

・・・横島は気づいていなかった────




                                    その4に続く



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