#まりあん一周年記念『ヒト』(完結編6)
投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 8/15)
シアワセに。
このひとたちを、シアワセに、してください。
ゆったりと、蒼くなった唇で笑みを刻みながら、言う。
「どこか…いたいの?」
穏やかとすら言える口調で。
痛み止めを投与したといっても、それはほんの気休めにしかすまないもので。
きっと、この少年にはいままで経験したこともないほどの激痛が、襲っているというのに。
少年は笑みさえ浮かべ言うのだ。
「大丈夫?」
と。
本来言われるべきは自分なのに。
熱いものが、こみあげた。
じわりと、涙が目じりに滲む。
「ジムこそ大丈夫か?」
震える声で、カオス。
「ちょっと…いたい…なぁ」
へらっと笑いジム。
本当は、ちょっとどころではないのに。
痛いといったら、いつもカオスやマリアが心配するから
ジムは、痛みや苦しみを堪える癖があった。
本当なら、心配させて嬉しいと思うはずなのに。
この子供は、それを申し訳ないと、いや哀しいと感じていたのだ。
口癖のようにいっていた言葉がカオスの頭をよぎる
『あのね、僕!カオスとマリアが笑ってるのが一番すきっ』
息を吐きカオスは、申し訳なさそうに、その怪我の原因を聞く。
もし誰かがジムを傷つけたとしたらなば、其相応の、ジムにしたことを万倍にして返すためである。
これは、はっきりいってカオスのエゴだ。
が、ジムを傷つけた人物が、無事でいることはどうしても、どうしても許せなかった。
「けが…?」
ジムはふうっと自分のなかの気力を集めるかのように、一息つくと変わらない穏やかな、声でいう。
「喧嘩…しちゃった」
と。
「ベンク…に悪いこと…した…なあ…だって、僕が、ベンクを…傷つけたら…すごく…いやだもん………」
ざわっと
その言葉にカオスが反応する。
「ベンク…がやったのか」
「ううん…事故だよ。」
ジムはその言葉にはっきりと首を振る。
「多分……ベンクは…僕の…ためにして…くれたんだ………………うん今ならわかるや…………だって……ベンクは、僕の親友だもん」
切れ切れの言葉に確信を込めて。
「それとも…カオスは…僕の…親友が…信じられない?」
きらっと瞳にいつもの光を浮かべジム。
ぽたりと、涙が一粒落ちた。
「馬鹿じゃな……オマエの親友を信じられないわけがないじゃろう…が」
「……ありがとお…おとおさん」
少しずつ体の痛みがなくなっていっている。
痛みが引いているのではないのだ。
なくなっている。
これが、どういうことか幼いジムにもわかっていた。
なのに怖いとは思わなかった。
あちらには、メアリがまってくれているからだろうか?
ジムには分からない。
ただ寂しいと。
それだけをおもっていた。
大好きなひとたちと、別れないといけないことが
別れなければいけないことが
マリアはじっと椅子に座っていた。
回線が壊れたかのようにただひとつのことを、呟いている。
「ドクターカオス・大丈夫・ジム・治す」
まるで自分に言い聞かせているかのように、無機質な声で淡々と。
その時
ばんっと
音をたててドアが開いた。
マリアが、振り向くとそこには、横腹を抑えて肩で呼吸をしているベンクがいる。
途中なんども転んだのだろう、体のあちこちには擦り傷だらけだ。
が、歪んだ顔のその瞳には強い光がある。
「ジムはどこ?」
ベンクはへたりこんだ後、懸命に動かない足を、震える全身で夜道を走ってきた。
ここで何をされてもいいと思っていた。
カオスに殺されるとしても、マリアに傷つけられるとしても。
それでもジムにあいたかった。
だってまだベンクはジムに謝ってないから。
喧嘩した仲直りをしてないから。
もしこれが、最後だとしても。
つづく
今までの
コメント:
- 動かないマウスでかいてみました(つд`)
そしてこんな結末ですいません(駄目)
いやだけど…あああっ(実はいまだに迷って……ないやいっ(つд`)
と、いうかみなさま本当にコメントありがとうございますまじ嬉しいです
というかこんな一周年とかいっておきながらオリキャラばっかなお話を読んでくださるみなさまに本当に感謝でございます
> |д゚).oO(実は次回微妙だなんていえないよなあ (hazuki)
- ここでベンクが来てくれた!(喜) 最後の別れに……ジムはもう……(涙) (ヴァージニア)
- ジムがどういう形であれ、死を迎えてしまう事については個人的には文句はありませんです。
ここで死ぬ事になろうともそうでなくとも、永劫の時をゆくカオスとマリアと共に在り続けることはジムには叶わないのですから・゚・(ノД`)・゚・
必ず訪れるであろう別れをおやびんがどう描いていくか、ハンカチ用意してお待ちしております(ノ_・。)(既に使ってますけれど(ぇ) (志狗)
- ジムが・・・ジムが健気だ(つД`)
頼むから治って・・・頼むから(涙々)
次回も楽しみにしてます(^^)投稿、お疲れさまでした。 (NGK)
- 微妙だなんて言わないで(ノД`) (挨拶)
ベンクの気持ちも分かるんです………
どんなことになっても友人の容態を見たい。
できることなら力になってやりたい。
たとえその代償として八つ裂きにされたとしても。
涙をこらえながら次回に期待ですぅ……… (ハルカ)
- 『親』たる二人を気遣って。親友を気遣って。
でも、それがジムにとっては当然であるかのようで。
ジム・・・あまりに優しい・・・なんて健気な・・・
「……ありがとお…おとおさん」←ここで涙腺決壊しました。
違う時間に生きる以上、いつかは確実に別れることになる『二人』と『一人』が、
どのような形の別れを味わうことになるのか。
どんな形のものであれ、それがいつかは良い思い出となりますように。 (L)
- 考え方によってはカオスたちに拾われなかった方が良かったかもしれない…けれど、拾われえて幸せだった…そんなジムの一生と言うものが今正に終わりを告げようとしていますね。ジムにしてもベンクにしても、気持ちに動かされた形での行為からきたこの現状からどのように発展していくのか、不安と期待が入り混じっております。カオスの反応の一つ一つから彼の胸の内がどのようになっているか伝わってくるようで緊張しました。次回を楽しみにしつつお待ちしておりますよぉ♪ (マサ)
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