ザ・グレート・展開予測ショー

雨(その十)


投稿者名:NATO
投稿日時:(03/ 8/15)

「ふざけないで!!」
突然立ち上がり、叫ぶタマモ。自分でもどうしてこんなことをしたのかわからなかった。
目の前のヨコシマも目を見張る。
「それがどういうことかわかる?ヨコシマは守ることですべてを愚弄してるのよ!ヨコシマの中にはルシオラしか居ない。守られることで感謝することも、自分のせいで受けた傷に謝罪することもできない。そんなのってないわよ!」
止めることのできない言葉。抑えきれない悲しみ。
ヨコシマの言葉を聞いて、自分がこの男を好きだということを本当に認識する。
だから、その言葉がたまらなく悲しい。
ふと出てくる涙。
それを見てヨコシマの顔色が変わる。
さらに涙があふれる。うれしかったから。でも、その顔の裏にあるものを知ってしまったから。
「美神さんの態度も分るわ。結局誰でも変わらない。あなたは命がけで守るの。違う。首を突っ込むことで死ぬ時を待ってるのよ。」
「ちがう!!俺は死ぬつもりなんて・・・」
ヨコシマが声を上げる。でも、
「それは守り始めた後の話よ。あなたは知ってるから。自分のために死なれることの苦しさを。それだけのこと。結局あなたは誰だって守る。そして、誰も守るものじゃない。教えて。ヨコシマにとって私は何?その場限りで守られるべきもの?もしかしたら自分を殺す場所を作ってくれる存在?」
ヨコシマはうつむく。こんなことを言いたくは無かった。でも、言わなければ私を、すべてを見ないだろう。ずっとルシオラのために、すべてを捨て、何かを守り続ける。
私を見て。この言葉がいえたらいいのに。でも、彼が盲目のうちは、そんなことを言っても惨めでしかない。
「・・・タマモはタマモだよ。俺にとって、大切なもののひとつだ。」
必死で考えた結論。取り込まれそうになるのを必死でこらえる。ここで話を終えれば、きっとこれからも彼は笑ってくれる。そして、永遠に彼に近づくことはできない。ある意味ではこれも本心なのだろう。自分に気がついていない彼の。
「違う。嫌いではないものってだけ。シロもおキヌちゃんも、美神さんも、毎回顔が変わる依頼人さんだって同じ。それの名前が違うからって、ヨコシマにとって何の意味も無いはずよ。」
「・・・」
「ヨコシマにとってこの世界に居るのはルシオラさんだけ。私だって、居なくなっても変わらないわ。必死で探しはするでしょうけどね。もし私が別のところで幸せに暮らしていたら?口だけ寂しくなるって言って。本当に寂しそうな顔して、別のもののために命をかけるの。」
もはや流れる涙は止められるものではなかった。青ざめる横島。もし、この男が薄情なら、タマモを抱きしめてやればすんだだろう。完全に無視してしまってもいい。
でも、この男はそんなに器用ではなく。
「じゃあ、どうしろっていうんだよ!!ああ、そのとおりだ。俺にとってルシオラ以外はみんな変わんねーよ。でも、もうルシオラはいない。ほかのものを守る以外、あいつにできる償いは無いじゃねえか。」
おそらく自分にさえ初めて口にするだろう本音。言った自分に驚いている横島。
自分で気付かせたことのはずなのに胸に突き刺さる言葉。
「わかった?そういうことよ。あなたが思っていることって。どうすればいいか教えてあげるわ。私を守って。守るべき何かじゃない。あなたの目の前に居るタマモを守って。償いじゃなくて、ルシオラの代用じゃなくて。」
「・・・どうすればいいんだ?」
「抱きしめてくれればいい。いまは、それだけでいい。」
相手を認識する。ただそれだけのことのやり方もわからないくらいに、ヨコシマは壊れている。どうして誰も気がつかなかったのか。彼の優しさは、きっと巧妙にそれを隠していたのだろう。自分自身にさえ、気がつかせないほどに。
「どうしてだ?」
「・・・?」
「何でお前はそんなに俺を信じられる?俺がお前を裏切らない保障は?俺はお前を守りきれるのか?俺には自信が無い。誰か一人を守るなんて、自分を信じることができない俺にそんな資格があるのか?」
「資格なら私があげる。私が私のために、あなたを信じて、私を託す。それ以外に私を守る資格なんている?」
横島が泣く。コイツが流す本物の涙なんて、始めて見たような気がする。自分も涙を流していることを思い出し、森の中で泣きあう私たちは、誰かが見たらさぞかし異様な光景だろうと思う。
ヨコシマもそう思ったのか、二人して顔を見合わせ、泣きながら笑い出す。
横島は急に真顔に戻ると無言でタマモに近づき、そのまま抱きしめる。
「・・・ずるい。」
タマモは涙を止める間を失い嬉しそうに呟く。
「涙なら、俺が止めてやるさ。たとえいつだって、な。」
一気に溢れる涙。止めなくてよかったと思う。こんな陳腐なセリフに感動したと知られたら、私は二度とこの男に逆らえなくなる。
「馬鹿、どうしてこういうときだけそんな台詞が出てくるのよ。」
真っ赤になったタマモが消えるような声で文句を言う。
それを横島は自分の口で塞ぐ・・・。
森の夜は、深けていく。

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