ザ・グレート・展開予測ショー

頑張れおキヌちゃん!  除霊道オリンピック!  〜大波乱!百合子との一回戦〜


投稿者名:ギャグレキスト後藤
投稿日時:(03/ 8/14)

●ルール

使用結界 :

   形はボクシングのリングに同じだが、5マイト以下の霊力・妖力・魔力は即時に吸収される。
   圧迫型特殊フィールドというシステム上、重力が普通の地面より1.5倍ほど高くなっている。


使用可能霊力 : 
  
   本戦は、1戦辺り最大20マイト規制
   一秒以上規制マイトを越えた時点で、その選手は降板し不戦敗扱い。


使用可能道具 : 

   銃刀絡みの殺人道具、霊力などを防御出来る遮蔽物、他、なんでも持ち込み可能。
   ただし、霊力を5マイト以上放射できないものは幾ら持ち込んでも特殊フィールド内で効果を発揮できない。

   フダは、上記に従い、500万円=1マイト換算。



●一回戦……


「えーー長らくお待たせしました。全先鋭の32人の入場です。」

実況の言葉に合わせ、入口が開く。
重苦しい中、キヌは緊張して十二指腸を…いや、心臓をドキドキときめかす。

他の選手は、パツキンやら、紫っぽいバニースーツやら、派手な先頭衣装を身につけた長身がゾロゾロ。
圧迫されるのも、プレッシャー星人(*1)に魔法を喰らったような気分だったからであるのは違いない。

キョロキョロと目当てのバトルフィールドを見渡し目指す。
すると、美神さんが手でおいでと合図しながら、指を指した。
そこに抽選で決まった場所があって先に気を回してくれたのだろうと察した。

しかしタール液で固まったように(*2)両手が同時に前に出たり、両足を前に出してこけるのはコッケイ。
それもまた苦労して、導師様から新たに貰った胴衣を着ていたのもあると思われる。
その胴衣は赤のダンビラが入った青系の紋に、緑がかった装束。

導師と横島が、選びに選んで編んだ装束。
300年前の導師の優しさと、柔らかな匂いが重なってキヌの脳裏に広がる。
スカイブルーに決めた着衣が清清しく、新鮮さ…やる気を取り戻させてくれる。

やる気は再び沸く。
ナレーションがそこへタイミング良くマイクをシャウト。

『えーー、これから16試合を同時に始めます。』

開始の前合図であるブザーが鳴ると同時、キヌの鼓動は一気に上昇した。
苦しみさえ覚えるほどの重みがあり、その視覚の先には覚えがあった。
解説者の声を聞くまでは少なくとも理由は分からなかったが、今漸く見えてきたような錯覚に襲われた。

「う…うそ?こ、こここれって…」

キヌの素っ頓狂な声が特殊なリング結界に響くが、その相手にはまったく動じる事も無かった。
紛れも無く、キヌの対戦が相手がよりによってこうなるとは、スタッフすら予想し得ない展開だったからである。
厄珍も、思わず目を丸くして眼鏡を外して擦るほど。

『では一回戦開始です!
 おキヌちゃんの対戦相手は、ナルニア代表のユリコ・ヨコシマ…って…へ?』

私もすかさずこの名前を見て驚いた。
ユリコ・ヨコシマ…百合子・横島…

 …横島百合子!!

「な、なんと、これは何て驚きでしょう。
 おキヌちゃんがまさかまさか、一回戦初っ端から運命の対決になろうとは?
 これは勝てますでしょうか…」

解説の途中、既に戦いは始まっていた。
キヌと百合子の間には、高密度の霊気がスパークして火花を散らしていた。
緊張どころか、体が金縛りになったように二人は動かない。


「ぐ…」
「これはまた成長したわね、おキヌちゃん!?」


唇を強く締め腰を落とすキヌ。
まともに掛かって行けば、あの伝説の初代ゴーストスイーパー大樹(*3)すら軽々すっ飛ばす百合子の殺人パンチを喰らうのは見えている。
かといって、守りに徹していれば不意打ちから一気に叩き込まれてしまう。

ますます体が強張るが、心の中で何かがうずく。
この人には闘って勝たない事には、自分が乗り越えられないかもしれない。
その苦しみは…

途端、キヌは体を先に動かしていた。
…自分の意思じゃないのに、体が動いている。


「消えた?」

百合子は一瞬、キヌの姿を見失う。
あの百合子が驚いた素振りを見せたのはそのまた一瞬だった。
が、見渡しても周囲一体、音しか聞こえなかった。
百合子としては音より速いスピードで動いているとしかとても考えようが無いが、それを破るように200キロはありそうな重さの肘打ちを構す。

「…たっ!」

キヌの声がかすれると同時、消えかけていた姿もかすれた。
が、再び姿を消し、尚も百合子の隙を付狙う。

「…なんて速さなの!」

呟いたかのようにつばを吐き捨てる百合子。
そのツバに、思わず反応して体を止めてしまった。
汚さの余りに掛かるとスピードを落とす原因となるとキヌの体が覚えていたのだ。

しかしこの間、秒数のカウンターを見る限り、まだ僅か3秒間しか経っていない。


直後。
キヌは静止の体勢で真っ直ぐ立っている。
そればかりか来なとばかりに、手を自然に降ろしている。

百合子は一気に攻めようと思ったが、妙な感が体にくすぶる。
あまりに動けない百合子。
嫌な感じが抜けも無かったが、それもそのはず、キヌが目を閉じ何かを念じていた。

「那丹喪世範陀羅【ナニモヨハンダラ】、下丹喪脊範陀羅【ゲニモセハンダラ】、
 那丹喪世壇波羅【ナニモヨダンハラ】、下丹喪脊壇波羅【ゲニモセダンハラ】、
 那吏愈樹也波羅【ナリユキナリハラ】、成行成原【ナリユキナリハラ】・・・・・・」

念じる間に、キヌの体は一人ばかり分身して姿を現す。
その分身は死津喪 帰鵺…キヌの本当の名前で、キヌという名前こそ、死津喪家として生まれた時の人格(*4)
それを、人間の一人として具現化させた姿。
二人になったキヌが、2重に念じ聞こえ始める。

「な…なによ……!」

百合子は手に汗を握り締め始める。
考えがまとまりかけた時には、キヌは3分身していた!
死津喪帰鵺と勇退離脱した姿と、勇退離脱した後の本体である。
会場はざわつき始めた。


「行きます!」


そう言った0.01秒後には、さらにざわつき度は上がる!
3分身した姿が、ダッシュしつつ、さらに足を無数に左右上下天地無用の如く蹴りあげているのだ。

『うおおおーーーーー!
 これは、初っ端から『三千世界拳』を出しましたーーー!
 3人身×一人当たり1000分身のおキヌちゃんが百合子を襲っていくーーーーーーうう!』

解説通り、3人の身が百合子目掛けている。
さらに超加速を超えた最加速で複雑なステップを踏みつつ、何分身にも次々と分進体を増やしていく。

「……!!」

いかにも堪えきれるかという顔で、この様をじっくり見ている。
が、その百合子にしても耐えられるのが先か、キヌが疲労に倒れるのが先か…どうも不安が拭えなかった。

一分身が腹を圧迫し、また一分身が顔から頭を圧迫、もう一分身が背中を圧迫、別の一分身が右足、また別の一分身が左足を…
そして腹から胸にかけてそれとはまた別の分身が触れ交うように霊力を込めて攻撃しながら、肩にも不思議と全然別の分身が
乗っかるような苦しみを覚えさせられる。
こうも体中に確実に磨耗させられつつ、その分身はやまずに微かながらの攻撃を仕掛ける。
霊力計を見ても、まだ7.74マイトなのに何故これだけの威力を感じるのか、百合子には知る由も無い。

その3000体のキヌが会場に知れるや、注目を浴びて他の試合はストップするほどだった。

『な、なな何て凄い三千世界拳のラッシュでしょう!
 百合子選手、たまらず体のバランスを崩して倒れていく…』

私は思いっきり解説しつつその全てを捉えようとする。
が、それは出来ない。
何しろ、0.01/3000秒と言うのを捉えられるのは、もはや超加速を使えるものでもそうはたやすく目で捉える事は出来ない。

だがハヌマンは、その凡ての3000分身をきっちり捉えている。
それはつまり、3000分身を操るキヌ本体の居場所がわかっているということだ。
さらに、百合子の眼としても疲れが見えながらも辛うじて捉え始めていた。
ここだとばかりに、肘打ちを構したのである!

「…きゃっ!」
「やった!捉えた……わ?」

確かに、百合子の左肘はキヌ本人の頭を捉えていた。
が、髪の毛にかすっただけで、その数本の髪が逆に腕を奪って自身の背後への一撃をとることになった。

「…残念でした!
 本体はこっち…へ、え!??!」

キヌが留めの一撃を背後に当てるはずだったが、百合子選手はキヌの眼前から消えていた!
そう…And So!
500分身ほど失ったキヌの背後に、超加速で既に回りこまれていた!

「この一撃で倒れなさいっっ!!」

鬼神のような鋭き一撃が百合子の右腕から拳をうねらせ繰り出していく。


『おーーーっと!
 これはまさか、技の効果の切れる隙を窺っていたのか、百合子選手!
 あっさりとおキヌちゃんの脇へ拳が今命中するか……あ!』

解説者である私は思わずマイクにかじりつく勢いで声を張り詰めた。
それが思いもがけぬ展開だったのだ。
キヌの残りの分身が、うねりを利かした腕の勢いでさらに分身させられ、結果的に避けられないばかりか逆に反動がつき……
キヌの分身の前方向に蹴り上げた足が、反動で後方左斜めへ回転しつつキヌの左腕が百合子の右顎に決まっていた。

ふっとぶ百合子の体は数秒スローモーションで浮き上がる。
一瞬直後、百合子選手は受身を取る暇も無く、顎から顔にかけて首を唸らせたままで顔面からリングの柱へぶつけた。


これまた、秒数のカウンターを見ると、まだ僅か37秒間しか経っていない。
会場中は再度ざわつき始めた。


「こ…これが全大陸を掛けたオリンピックの試合か…!」
「うおおおーーー、これは燃えるぜー!」


柱にぶつかり倒れた百合子選手は、直ぐに起き上がる。
が、口の中をかなり切ったように血のツバをを柱脇のバケツに吐き捨てる。

「さて、再戦ね。」
「望むところです!」


一回戦はまだ始まったばかり。
この試合、どちらが勝つか!



                                             Continue・・・

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa