ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−57


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 8/11)




「………何故に今頃なんですか?」

魔鈴の素朴な疑問。

「今だからじゃよ。」

カオスの素っ気無い返事。
それっきり、マリアの切られた右腕の調子を見ている。

「フム。霊圧に耐え切れずに、回線がショートしておるな。まだまだ改善の余地はあるということか。」

ほっそりとした白い腕から覗く、無骨な配線。それを手に取りながら、カオスは呟く。
だが、それで満足しない魔鈴は更に問い質す。

「これからは、何てお呼びすれば良いんですか?」

「ドクター・カオスで構わんよ。ワシとあ奴は同一の存在ではないからな。」

「では、ドクター・カオス。もう一度お尋ねします。何故に今頃なんですか?」

そしてゆっくりとカオスが魔鈴に視線を移す。その様子はいつものような好々爺の風情。

「じゃから言っておるじゃろう?今だからじゃよ。」

「例えば………アシュタロスの時には動かなかった貴方が、何故にリリス相手に動くのですか?」

「――――反作用。前回は反作用があった。あれはアシュタロスの動きが大きければ大きいほど、反作用も大きくなる。じゃからこそ、ワシは捨て置いた。宇宙の意思と名付けられたシステムの1つ、反作用。アレがアシュタロスを始末してくれることは分かりきっておったからの………。」

「…………魔王の知識ですか?」

魔鈴の問いには、何を今更とばかりに答えない。

「今回、動いたのは、さっき説明したとおりに、連環が反作用の上位コマンドじゃからじゃ。連環に付随する現象には反作用は生じない。つまり、リリスの行動も連環発動のひとつの現象じゃ。当然、それを阻止したワシらの行動もじゃがの。」

「だから、貴方とマリアさんが動いた?」

「うむ。」

カオスの返事は短い。

「貴方の行動は魔王の――――最高指導者達の意思なのですか?」

「ワシの意思はワシの物じゃよ。ただ、奴らからの介入が無かったことを考えると、黙認か、承認されている行動だったようじゃの。何らかの介入があるかもと、マリアに勝負を急がせたのじゃが………。」

「では、最後の質問です。横島さんは、貴方の正体を知っているのですか?その上で協力を要請したのですか?」

「知っておったなら、こんなまどろっこしいことはするまい?つまりはそういうことじゃよ。」




そして二人は沈黙する。
連環と、横島の目的は知れた。
そして、プレイヤーとしての彼らの役目も終えた。





後は――――発動を待つのみ。











地下でリリスが降臨したことも知らず、地上部分では相変わらず横島達の戦いは続いていた。
とは言っても、消極的な攻撃しか出来ない美神達。既にタマモとルシオラによる令子の幻像達は姿を消している。
さらに、別に勝たなくても構わない横島。その戦いは千日手の様相を見せていた。



八房を振るう、シロ。

横島は霊波刀で受けきれるだけ受け、残りは斬られるに任せる――――シロは本気で斬れない。横島には大したダメージにならない。

狐火を放つ、タマモ。

横島は文珠でそれをシャットアウト――――タマモは本気で焼き尽くす気がない。横島にはダメージにならない。

ネクロマンサーの笛を吹く、おキヌ。

唯一動かぬ美智恵を解放しようとするが、微動だにしない――――己の無力さに歯噛みする。横島は苦笑するだけ。

神通鞭を振るう美神。

横島はそれを巨大な、それこそ壁のようなサイキックソーサーで弾き返す――――美神の霊力では突き破ることは出来ない。横島は涼しい顔をしたまま。



リグレットは、己の記憶を探っている。生まれてから数ヶ月も経っていない彼女ではあるけれど。彼女の中にはもうひとつの人格の記憶がある。同じく1年も生きられなかった、横島にとっては愛すべき、後悔の象徴。彼女にとっては、忌々しい憎しみの象徴。ルシオラの記憶。細部に渡って、慎重に鮮明に探し当てる。





『見つけた………!!』






ある意味、横島に最も残酷な復讐を。








現状で封印は叶わない。弱らせてからでなくては、叶わない。横島は封印を警戒しているから。強引にでも封印する方法を模索しなければならない。
それを知る令子は盛んに攻撃を仕掛ける。
だが、横島は時にはかわし、時には無防備にその身体を放り出す。

『弱い』

今の横島は本気で弱い。
とは言っても、攻撃力に関してはさすが魔族と思わせるようなものだが、殊、防御力に関しては問題外なくらいに弱い。
その耐久力は大したものだが、一撃一撃がとんでもない威力になる。
彼女達が本気を出したら――――仮にタマモとシロがレヴァーティンを放ったら、一撃で全てが終る程度に弱い。
どれだけダメージを与えれば弱るのか。横島の表情にはどれだけダメージを与えても変化はなく、実際、彼女達がどれだけダメージを与えたかすら定かではない。だからこそ、本来なら最高の一撃を加えなければならないところなのだが、殺してはならないという制約が彼女達を縛る。


「…………リグレット?」

それは偶然だった。誰かが横島の背後に位置しているのに気付いた令子はひとり呟いた。

「???」

横島が振り向いた先には――――白いワンピースを纏ったルシオラが居た。




「…………………………………。」

「どうしたの、ヨコシマ?」

あの時と同じ口調で。

「フフッ、変なヨコシマ。」

あの時と同じ表情で。

「ねぇ、本当にどうしたの?」

「………それで揺さぶりをかけてるつもりか、リグレット?」

「何のこと?」

横島の冷たい視線に、キョトンっとした表情を浮かべる。
本気で分からないかのように。

「くだらない。俺の注意を引いて、後でこそこそと美神さんが封印の準備か?」

振り向きもせずに、美神の行動を言い当てる横島。
それに怯んだ様子も見せずに、ルシオラが一歩、二歩と前に進み始める。

「どうしてそんなこと言うの?」

言いながら、バイザー着用の姿に変身する。普段のリグレットなら、ルシオラを想像させるからと絶対にならない姿。

「フゥ――――」

やれやれ。そんな様子で肩を竦める横島。
見くびられたもんだ。今更こんな手が通じる奴だと思われていたなんて。
失望、なのだろうか。横島は吐き棄てるように言った。

「もう良いさ、死ねよ。」

何に苛立っているのか。横島自身にとっても定かではないのだが。
言って、ルシオラに向かって魔力の砲撃を放った、その瞬間だった。

「しまっ――――!!!!!!」

横島のすぐ傍、リグレットが魔力の篭った手刀を振り下ろした!!






















「………別に俺は構わんが、連環が発動しちまうぞ?」

リグレットの手刀は確かに横島の胸を貫いていた。だが、もはや人間のように血を吐くようなことは無かった。
そして横島は尚、死にはしない。
いや、実際にはかなりのダメージなのだが、それと悟らせることは無い。

「さっきのルシオラは、タマモだったのか………。」

「………そーゆーこと。リグレットにルシオラの姿、形を幻術で見せてもらって、声とかはリグレット本人の真似をしただけ。=ルシオラの声色でしょ?」

横島の魔力砲は、ルシオラに扮していたタマモを直撃していた。そのダメージは甚大なのだが、彼女もまた、持ち前の気の強さが、この場面でそれを悟らせることを拒んだ。

「で、これからどうするんだ?」

「リグレットは正しくアンタの娘よ。アンタの魔力との親和性がある。だから………同一化してもらうわ。」

「弱らせて封印じゃなかったの?!」

令子が今度は、リグレットとタマモに向かって神通鞭を構える。

「実際、無理でしょ。ここは魔界よ?人間が施した封印なんて、時間が経てば、魔界の風が解いてしまう。」

「この城は人界環境でしょうが?!」

「それを維持してるのは、横島の魔力よ。封印されたら魔界に戻るわ。」

「同化したら、魔力が変質してしまう。それは死と同意義だぞ?」

横島の冷静な突っ込み。だが、それに対してもタマモは動じない。

「構わないわよ。連環の発動は仕方の無いこと。干渉者の存在を忘れたわけじゃないでしょ?」

ここで何故に干渉者=令子の存在が出てくるのか。さすがに横島にも真意が図りかねた。

「アンタのことだから、連環を利用した後に姿を消すつもりでしょ?いえ、自分の存在そのものをかしら?でもね、それも干渉者次第よ?アンタ、美神を上手く丸め込むつもりでしょうけど………。」

「俺の存在そのものが、疫病神なんだよ。」

横島の独白など、タマモは聞き入れない。

「させないわ。こんだけのことをして、さようならなんて言わせない。アンタは………どんなに惨めで、どんなに悲惨な状況でもきっちりと生きてもらうわ。やり直してもらうわ。美神に全てを託してさようならなんて虫が良すぎるのよ!!!!!!」

タマモの激白を静かに見つめる。
本来の格で言えば、下に当たるはずのリグレット。
だが、タマモの幻術を見抜けなかったように、リグレットの接近に気付かなかったように、弱体化した横島には、リグレットによる吸収を防ぐことは不可能だった。

肩を竦めて、己の胸を貫くリグレットに言った。





















「土壇場で思いついたにしては上出来な策だよ。
 やれ、リグレット。最後の勝利者がお前だってのは意外だったけどな。」












そして『連環』が発動する。









今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa