ザ・グレート・展開予測ショー

なぁ (五)<最終話>


投稿者名:馬酔木
投稿日時:(03/ 8/ 8)












 令子のやつも長生きしたけど、おれはもっと長生きしたからなあ。
 いまさら手術も面倒で放っといた白内障もずいぶん進んじまったから、こんなすっきりした目でお前のツラ見るのは久しぶりな気がする。
 ちょっと前までずいぶん苦しかった気がするんだけどよ。
 目もアタマもこんなにすっきりした気がするのは、やっぱりアレか、霊魂が離れかけてるっつう感じなんだろうなあ。


 ああ、ったく。
 そんな顔ぐしゃぐしゃにして泣くなよ。
 エミん時みたいに、きれいに笑ってろよ。せっかくの男前が台無しだろうが。



 なあ、ピート。
 おれ達は、お前を置いていくんじゃねえ。
 おれ達は死んで、命ってやつはばらばらに細かくなって、他の色んなもののばらばらになった命と混ざり合って、お前のいるこの世界にまた何か別のものになって生まれてくるんだと思う。
 お前、おれ達が一人いっちまうたびに世界の色が消えていくって言ってたけど、そりゃあ違うぞ。
 おれ達はいっちまっても、またお前が見てるこの世界に戻ってくるんだ。だから、お前が見てる世界から色が減ってくってことは無いんだ。
 今までもこれからも、おれ達はお前を置いてくなんてことはない。


 おれ達は、ずっと同じ世界にいるんだ。


 おれは今、初めてそのことがちゃんとわかったんだ。
 おれ達は霊能力があるからよ、幽霊とか悪霊とかいっぱい見てて、輪廻転生ってのがあるってことも他の普通の連中よりもしっかりわかってたつもりだったけどよ、そういうことを本当に理解できたのは今が初めてだと思う。


 ああちくしょう、もどかしいな。


 このことが、お前にもわかったら、さ。
 世界から色が消えていくなんてそんな寂しいこと、絶対言わせねえのによ。


 ガキを殺した仕事の後も、横島の葬式の後に夕焼けを見た時も、おれは結局お前に何にも出来なかった。


 せめて今、ちょっとでもお前の頭撫でて抱っこしてやって、おれが今さっきわかったこと言ってやれればと思うのに、手も口も動きゃしねえ。


 お前が今、ものすごく寂しくて、世界から色が消えていくって思うのはさ。
 お前が生まれた島から人間の暮らしてる世界に来て、初めて出来た友達とか師匠とか大事なやつを失うってことを今、初めて体験してるからだと思うからよ。
 そんなことを生まれて初めて体験してるから、ちょっと心がギシギシ言ってるだけなんだ。
 そんな思い詰めておれ達のことだけ考えなくて良いんだ。おれ達は、お前の中にちょっとばかり覚えててもらったらそれで良い。そんなこっちゃ、これから何百年もどう生きてくんだよ。
 ちくしょう、心配で成仏出来ねえだろうが。
 だからまた、新しい友達つくれよ。
 そうしたらさ、きっといつか、おれ達が四人でつるんでたあの頃と同じようにか、それ以上に世界をきれいに見せてくれる誰かと出会えるんじゃねえかって思うからさ。
 顔上げて、目ぇ開けて、思いっきり大きく腕広げてみろよ。
 そうしたらきっと、なぁ。



 顔上げろ、目ぇ閉じるな。
 耳澄ませて、いろんなもん聞け。
 そんでもって、世界中のいろんなもん、新しいもんを一杯手に入れてけよ。


 だって、なぁ



 なぁ、おい






 だって、世界はこんなにも―――
























 ほら、ピート。
 いい加減、泣きやめよ。


 お前さ、この前、オカルトGメンから協力要請もらったんだって言ってたよな。
 そんでもって来月から、ヨーロッパの支部に特別顧問って名目で招待されるんだろ?


 良かったじゃねえか。これから、念願のGメンの仕事が出来るんだぜ。
 あのガキを殺した雨の日の仕事みてえな、汚い仕事を押し付けられるんじゃねえ。
 お願いですからどうぞ来て下さいって、頭下げて出迎えてもらえるんだぜ。


 それに、向こうじゃ確か、カオスがマリアと一緒に静養してるんだっけか。
 カオスはもうだいぶボケてきてるって話だけどよ、あいつらはまだもうちょっとお前の時間と付き合ってくれそうな奴らなんだから、久しぶりに挨拶してこいよ。


 ほら、そんな無茶苦茶に目元こするんじゃねえ。お前は顔白いんだから、真っ赤っかになったら目立って見っとも無ぇだろうが。
 ああそうだ、ヨーロッパ行く時は、昔着てたみたいなちゃんとしたスーツも着ろよ。ガキの格好のままじゃなめられるぞ。
 おれが昔羨んだみたいな、ぱりっとした格好で行けよ。



 そんでもって、お前が高校卒業したあの頃に。
 ちょっとばかし親が悪党で、ちょっとばかし国籍が無くて、人間じゃねえ血が半分混じってるってだけで、お前の努力とやる気と人格全部否定しやがった頭の固いエリート連中の集まりに、お前の実力見せつけてやれ。





 ほら、ピート。
 もういい加減泣くな。


 お前はおれ達「ジャリガキ四人組」の事務所の「看板」で、「三バカとツル」の、「ツル」なんだからよ。
 おれらがやっかみまくったその顔に笑顔浮かべて胸張って、別嬪さんで行けよ。









 ほら、ピート。


 前向いて、歩け。













































 じゃあな














<終>

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