ザ・グレート・展開予測ショー

#まりあん一周年記念『ヒト』(完結編4)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 8/ 4)

だから、どうか─












何が起きたのか、ベンクには理解できなかった。
なんで、助け様ようとしたジムが目の前に倒れているのか。


知らず手が、がくがくと震える。

今日マリアとカオスが、ジムのいっしょに住んでいる人が『人』じゃないと聞かされた時、まっさきに思ったことは
ジムを助けないとというコト。
だってジムは、人間でいっしょにいることは、おかしいのだ。

ベンクは知っている。
ジムがどれだけマリアとカオスを好きでいるかを。

だから、離さないといけないと思ったのだ。
だってすきなひとが自分と違うだなんて哀しい。

それにそんなもの人間ではないものは、当然のように迫害される。

マリアはいい。
カオスも、いい。

だってそれを耐えれるだけのものももっているだろうし、それにそれが事実なのだから。

けどジムは?

ジムはどうなのだろう?

人間なのに、人間から迫害されるなんて、イヤだ。
それに耐えれたとしても、もうこっち側には戻ってこれない。



なら、と思う。
ここのひとたちは、みんな優しいからジムを迫害なんてしないから。
ジムが人間ということを知ってるから。

そりゃ本当はすごく嫌だけど、それでもいいから
憎まれてもいいから、悲しまれてもいいから
ジムをこっち側に戻さないと。


マリアを悪く言うのは、苦しかった。
いままでなついていたから。
すきだったひとだったから。
カオスのこともすきだったのだ。
─裏切られたという思いはもちろんあるけども─



それでも、人を、好きだった好ましいひとを悪くいうのはこんなに苦しいことだったのか?とベンクは思う。
元々が一本気で、口から出る事を思うことにさして違いのない人間だったから。
どうしようもない違和感に、胸が苦しくなった。



そして大切な、いやこんなことに鍬を振るうのも、たとえそれを食らっても平気だと聞かされていても
それを振るうのはひどく恐ろしかったし、哀しかった。



だけど、それでも助けたかったのだ。
大切な親友を。














音をたてずに鍬が落ちる。
心臓が激しく動いているのに、すうっと手足が冷たい。


赤い液体が地面を濡らしている。
それは誰の血だろう?

「うわあああっ」

ベンクはみっともなくその場にへたり込む。
がくがくと震える足が言う事をきかない。

マリアはそんなベンクを見て、そうっと頭を撫でる。

「ベンク・正しい・なにも・悪くない」

その顔に
表情のないはずのその顔に泣きそうな笑顔を見たのはきのせいだろうか?


マリアはひょいっとジムを抱き上げて言う。

「ジム・助ける」

たったそれだけを。
もう元にもどったその無機質な表情で。






マリアは走った。
腕の中にいるジムを揺らさぬように最新の注意を払って。
そして可能な限りのスピードでもって。

だらだらと血が流れる、尋常ではない血液がマリア腕をしたたりおちる。
そしてそれと反比例すかのように下がっていく体温。


ぴーっと耳障りな機械音が闇夜のなか、響き渡る

【警告シマス・防止許容範囲外ノ水分・起動障害トミナシマス・腕ニアルニモツを直チニ・廃棄】






「拒否・します・ジム・マリアの・子」
ベンクとも・約束・した・


続く

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa