++女友達 2++
投稿者名:姫桜
投稿日時:(03/ 8/ 2)
「・・・何かあったワケ?」
エミが先に口を開く。仕事上ではライバルだが、プライベートでは別に憎みあっているわけでもない、友達だ。その友達のいつもとは違う表情が妙にひっかかっていた。
「何で?」
コーヒーにいつもは入れない砂糖を一さじ入れてかき混ぜながら答える。
「いつもと違う。」
「・・・何もないわよ。いつもと一緒。」
一瞬の沈黙の後に、強がる言葉を紡いだ。
「・・・ならいいワケ。」
今日のエミは意外とあっさりしていた。いつもなら深く追求してくるのに・・・。そんなエミの態度が、美神にとっては何だか消化不良だった。
「ただちょっと疲れてるだけ。」
本当は、誰かにグチを聞いてほしかったのかもしれない。美神の口からは、隠していた弱音が漏れた。
「最近色々あったから。所長は大変。」
美神はコーヒーを一口飲むと窓の外を眺めた。
「・・・・。」
エミはかける言葉が見つからず、ブラックのコーヒーを一口飲み込んだ。こんな表情(かお)をしている美神は初めて見た。
「書かなきゃいけない書類も溜まってるし、丁稚の教育はしなきゃいけないし。」
美神もコーヒーを一口飲み込む。
「同感。」
エミはただそう言って頷いた。
「ま、イヤじゃないけどさ。」
また一口、コーヒーを飲み込む。
「たまに疲れるのよね。」
そういって、口元に一瞬の笑みを浮かべた。
「・・・横島でもデートに誘ったら?」
本当に疲れきっている美神を何とかしようと、エミの口から出てきた言葉がこれだった。美神は横島の名前を出すと、とたんに元気になる。・・・というかムキになる。そんな美神が女らしく輝いているというのは、友達であるエミが良く知っている。
「な・なんでそこで横島くんなのよっ!?!?!?」
エミの思惑通り、美神はムキになって怒鳴った。
「いつもの令子に戻すのは、横島が一番なワケ。」
「別に私は横島くんの事なんかなんとも思ってないわよっ!ただの丁稚。」
「どうだか。」
「だっ・・・・もういいわよ。何でも。」
美神はこれ以上ムキになってしまうと、完璧にエミのペースに巻き込まれてしまうと察し、もう何も言わないでおこうと諦めた。
「私の勝ちなワケ。」
「誰もあんたと勝負なんかしてないわよっ!」
「令子はいつものそのテンションが一番なワケ。」
「へ?」
エミがふと漏らしたその言葉に、美神は思わずマヌケな声を出してしまった。
「疲れたら、またバカみたいにふざけあったらいいワケよ。私も、あんたと喋って疲れなんて忘れたワケ。」
エミはそう言うと残りのコーヒーを飲み干した。時折見せる、彼女の友達思いな一面が、彼女の最大の魅力だろう。
「・・・そうね。私も何かスッキリしたわ。」
美神も、残りのコーヒーを飲み干す。
「・・・・今度、助っ人代3%引きにしてあげる。」
美神はボソっと早口で言った。これが、彼女の精一杯の感謝の言葉。「ありがとう」なんて柄じゃない。それに、「ありがとう」なんて使い古された言葉を使うような仲じゃないから。
「助っ人なんて必要ないワケ。」
「あら、あんたの無能な事務所には毎日でも助っ人が必要なんじゃない?」
「大きなお世話なワケ!」
いつも通りのリアクション。いつも通りのふざけた会話。こんなやりとりが、2人のパワーの源かもしれない。
「さてと、帰って溜まってる書類朝までに片付けないと。」
そう言って美神はさりげなく伝票を持ってレジへ向かった。
「・・・ほんっと、素直じゃないワケ。」
そんな美神を、エミは微笑んで見つめていた。
ふざけあったブラックな会話の中に、ふと励ましの言葉という砂糖を混ぜて、少しだけ甘くなった会話を消化する。そして、最後にいつもの苦味が残る。そんな事がさりげなく出来る間柄が、彼女達の友情。お互いが、そんな関係にいつも励まされている。お互いに、こんな事本人の目の前では言えないけれど・・・。仕事の上では負けたくないライバル。だけど、いなくなってしまっては困る存在の大きさ。大げさだけどこれが、彼女たちの女友達。
END
今までの
コメント:
- ここまで読んで下さったみなさま、ありがとうございます☆久しぶりの投稿で緊張してます(笑)今回は、美神とエミの友情を書いてみました。如何でしょう??皆様のコメント、お待ちしております☆ (姫桜)
- 二人の「らしい」やりとりが良いですな〜
どっちかというとエミのほうが大人に描かれてますね。
まあ、エミのほうが重い過去背負ってますしね。
でも、幾つになってもこの二人はこういう関係のままなんでしょうね。
お互いに表面的には友達だとは認めようとはしない、と。
ところでエミに一言。
あなたも十分に素直じゃないんですが?
まあ、美神に比べれば素直ではありますケド。 (L)
- はじめまして、姫桜さん。 私的にこのようなかっこいいエミを見ると、私は燃えます。(笑)
ちょっと仕事に疲れた美神を何気に励ますエミ、大人の女同士の会話ですっごくいい感じでした! グチを話せる相手って、それはもうその人に対して心を開いていたりするんですよね。 気軽に嫌味を言い合って、それをお互いに楽しめる相手ってそうザラにはいませんし、なんだかんだいってこの2人、ハタから見てるといい友達です。 伝票をレジへ持っていった美神にはちょっと驚きましたが、これが美神なりの感謝の仕方なのでしょうね。 この友情、大いに同意します。 (ヴァージニア)
- 何気ないふとした日常のワンシーン・・・。
美神とエミの友情・・・・そんな言葉で表せない会話がとてもいいです。
姫桜さんの文はとても清清しくて好きです♪ (ユタ)
- 姫桜さん、お帰りなさい。
思いきり悪態をついてはしゃぎあえる、気の置けない友達とは良いものです。まさしく人生のビタミン剤。
常に元気で頑張って行く為には、こういう会話もたまには必要ですよね。 (黒犬)
- 初めまして姫桜さん、dryといいます。
表面的な遣り取りと違い、まったりと流れる時間。如何にもありそうなプライベートでの一幕でした。
この二人、女友達というか、喧嘩友達という雰囲気ですよね。
変に馴れ合ったりはしないが、互いに相手を認めている。何だかいい関係です。
投稿お疲れ様でした。 (dry)
- お久しぶりです。
この二人の友情っていうのは、言葉としては凄く違和感のあるものかもしれないけれど、二人の仲に存在するものとしては一番納得できるものな気がします(笑)
エミと美神のやり取りの構図もしっくり来るものがありました。はっきりと言葉にしなくても繫がり合いを自覚できる二人の関係は良いものですね。
投稿お疲れ様でした(^^)
|д゚).oO(ここに冥子が絡むと、それはそれで二人の緩衝材になっちゃうんだろうなぁ…起爆剤かもしれませんが(笑) (志狗)
- お久しぶりです。
私もエミさんと美神さんの自然なやりとりに賛成です♪
出来の悪い(苦笑)弟子を持つという点では同じ境遇にある二人、エミさんももしかしたらちょっと疲れて散歩に出てきたのかも。
そんな二人もいつものやりとりで両方元気になれる。仲良しとは言えないけれど、素敵な関係ですね。
ケch……もとい、守銭D……もとい、お金が好きな美神さんがコーヒーを奢ったり助っ人代をまけると申し出たりするのは、本人にとっては最大の感謝の表し方なのでしょうね(笑)
あ、そういえば今回の投稿。
苦心して二つにお分けになったみたいですが、一つにまとめても字数制限には至りません。
次回作のご参考まで。 (斑駒)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa