『キツネと仕事とウェディングと エピローグ その2』
投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 8/ 1)
〜『キツネと仕事とウェディングと エピローグ その2』〜
夜が明ける。
闇の支配する刻は過ぎ去り、代わりに朝陽が昇り始めた。
倒壊した式場の横で、何事かを言い合う声が聞こえて・・・。
「だ〜から!!式場が崩れたのは不可抗力なんだっての!!止める間も無く、相手が霊波砲をぶっ放したんだよ!」
「フッ・・。まだまだ新米だね。横島君。僕や令子ちゃんならもっと・・・。」
「・・・新米で悪かったな。ロン毛中年。」
「・・何か言ったかい?色情バンダナ。」
・・数秒後、お決まりのごとく、横島と西条の乱闘が始まった。
どっかーん・・だの、ばっきーん・・だの、なにやら物騒な音が轟いて・・・
それにタマモはため息をつく。
彼女が見つめているのは、瓦礫の中にたたずむ新郎と新婦の姿で・・・。
・・。
花嫁を救出した直後、
さら地となった式場には、新郎たちが殺到した。
なんと、再会に乗じて式を挙げてしまおう、などと言い出すカップルもいる始末。
あきれるやら、感心するやら・・・。
「・・・たくましいわね・・。」
ぼうっとしたままつぶやいて・・、
タマモは、その式場のない結婚式を傍聴する。
「なんだ?やっぱりやってみたかったのかよ?結婚式。」
闘いに一段落ついたらしく、横島がひょいっと顔を出した。
「結婚式はいいんだけど・・・相手があんたじゃねぇ・・。」
あくびをしながら話す彼女に、横島は何度目か分からない苦笑を浮かべる。
・・・・。
―――・・あなたは・・彼女を生涯、愛し、守り続けることを誓いますか?
誓いの言葉聞こえてくる。
青年は・・一瞬おびえたような顔をして・・・、花嫁へと瞳を向けた。
『生涯、愛し・・守り続ける。』
口に出してしまえば簡単なこと。
しかし・・今、幸せの中にいるあの2人は・・その言葉の意味をしっかりと見つめているだろうか?
・・・そうあってほしい、と横島は思う。
「・・・・。」
寂しげに目蓋を閉じる青年を、少女は瞬きもせず見つめていた。
一瞬だけ、彼にかける言葉を探して・・・、結局それを諦める。
自分は待つことに決めたのだ。
いつか青年が・・、自分に包み隠さず、全てを話すその時を。
・・・・・。
「・・ねぇ。横島?」
「うん?」
「・・・話してくれるんだよね・・。いつか・・。」
大人びた口調で尋ねるタマモに・・、彼は少しだけ目を丸くして・・・、
・・・・。
・・・・・・。
・・そして・・、まっすぐ彼女へと微笑んだのだ。
「・・ああ。いつか話す・・必ず。」
・・・夜が明ける。
まるで、この世の全ての人々を祝福するかのように・・、世界はその色を白に変えた。
◇
「さ〜て・・帰るか・・。とにかく今は早く寝たいしな・・。」
式が終わり、いよいよ見るものも無くなった・・・そんな頃。
横島は、おもむろにそう切り出した。
「あ・・ちょっと待って。西条さんにお礼を言い忘れてた。」
「ああ〜!?よせよせ!ほっとけあんなの。(ついでに言うなら、さん付けをする必要もない)」
不満そうな顔で渋る横島。
彼は西条が絡むと、突然、子供のような反応をする。
「・・・。・・・そういうわけにもいかないでしょ?」
可笑しそうに笑うタマモに横島は・・、
「・・冗談だって・・。早く行ってこい。」
そう言いながら、肩をすくめた。
・
・
・
「・・・おや?」
事後処理に追われる西条は、遠くから近づく少女の姿を確認した。
「どうしたんだい?横島君といっしょに帰ったと思ってたが・・・。」
「・・お礼を言いにきたの。おかげで、犠牲者が出なかったから。」
珍しく屈託のない少女の笑顔。
ふむ、とあごに手をやりながら、西条は冷やかすような視線を送る。
「その様子なら、少しは進展があったようだね?」
「・・進展と言っていいのかどうか・・。」
言いながらタマモは視線を落とす。
彼と同じステージに立てたのか?・・と問われれば、残念ながら答えは否だ。
未だ、自分はなにも知らない。
・・。
「彼はアレでなかなかナイーブだからね。今回の件も、実はこたえているはずだ。」
タマモの様子を知ってか知らずか、西条はぼやくように半眼になって・・・、
「・・・まあ、その・・なんだ・・。力になってやってくれ。」
早口でそう言うと、そのまま背を向けてしまう。
キョトンとするタマモに構うことなく、逃げるように歩を進めて・・・。
・・彼といい、横島といい・・、本当に素直じゃない・・。
あきれ顔の少女は、そんなことを考えた。
「あなたもしっかり横島の力になってると思うけど?」
風が吹く。
軽く手を上げながら、西条が視界の外へと消えていく。
・・声は・・届いただろうか?
「・・やっぱり素直じゃない・・・。」
・・・。
「お〜い!!タマモ〜?まだなのか〜?」
遠くから青年の声が聞こえてきた。
素っとんきょうな声に、ひどく安堵を覚える。
・・自分が力になれるのか・・、否か。
そんなことを悩むのは後回しでいいのかもしれない。
今は、彼を支えたいというその気持ちさえあれば・・・・・。
・・。
「わかった。今、行く。」
朝の光を受けながら・・、タマモは横島のもとへと駆け出すのだった。
〜エピローグその3 へ続きます〜
『あとがき』
ごめんなさい・・その1を2度送ってしまいました。
・・・え!?続くの!?(爆滅)
・・す・・すいません!予定では今回完結だったんですが・・・。
・・というわけで・・エピローグその3へ続きます。なるべく早く投稿しますのでお許しを・・(汗)
次回はおまけ『魔女と仕事と・・ウェディング・・と?』というお話も送る予定です。
魔鈴さんが大活躍(笑)小竜姫さまも出てきます。
それでは〜
今までの
コメント:
- ・・うう・・下のタイトルは削除できないんですよね(泣
みなさんご迷惑をおかけします。 (かぜあめ)
- ふう〜、事件も一段落して安心です!
タマモも何だか大人っぽくなっていい感じです♪
西条さんも横島くんも素直じゃないなあ〜、そうですよね。
次回に期待っす!おまけも楽しみです♪ (えび団子)
- 横島とタマモのお姫様だっこ・・・ナイスです!(゚ー^)b☆
どうやら事件もひと段落着いたようでホッとしました。 かなり憎ったらしかった堕天使にも、それなりの過去はあったようですし、横島と何か共通する部分があったようですね。 横島もそれに気づいて、堕天使に同情するような部分がありましたし。 そして“蒼き影”という、なにやら伏線っぽい存在が。 更にエピローグ3は魔鈴?小竜姫? 先が読めないですね〜。 次回に期待です。 (ヴァージニア)
- さて・・・お話もいよいよクライマックスでしょうか?
横島の心の奥深いところに少しだけ触れたタマモ、
この二人の今後の展開に期待大です♪
次回完結!(?)頑張って下さい!! (ユタ)
- 「話してくれるまで待つ」タマモと、「いつか必ず」と言う横島くん。タマモの心情の変化が、今回の『ウェディング』に掛けてあるのでしょうか? タマモにとっては、横島くんの一面を知る機会でした。そして、それは横島くんにとっても・・・ 意識する,しないは別にして、互いに相手の新しい一面を知ることで進展して行くのでしょう。 ( と、個人的には思うのであります(^^; )
しかし・・・ 倒壊してしまいましたねぇ。これだけの後始末を個人でするのは大変ですので、Gメンを巻き込んで事後処理を押しつけた(?)横島くんは、本当は遣り手なんでしょうね。美神さんには怒られるのでしょうが・・・
では、エピローグ3と魔鈴さん,小竜姫さまのおまけのエピソードを楽しみにしています♪ (さわてぃ)
- みなさん読んでくださってありがとうございます〜
いやはや・・送り間違えた時はどうなることかと思いました(^^;
以下返信です〜
>えび団子さん
あろがとうございます〜
西条と横島くんってあの仲がいいのか悪いのか分からないところが面白いんですよね〜
あ・・次回、西条は逆襲を試みます(笑
>ヴァージニアさん
お姫様だっこだけは絶対やる!・・と意気込んで構想を練り始めました(笑
伏線・・。うわ・・出すだけ出しておいて次回作のことはさっぱり考えて無かったりします(汗)この影の正体は作者も知らない謎の存在です(激爆)
ありがとうございます〜次回もがんばります。 (かぜあめ)
- >ユタさん
作者の思いを飛び越えて・・どんどん膨張していくストーリー(笑
次回こそは完結します・・・多分・・
あ・・いえ!絶対完結します(汗
ユタさんの新しい連載もはじまったことですし・・GS熱上昇中の今日この頃です。
>さわてぃさん
読んでくださってありがとうございます〜
しかも、ウェディングのことにもタイトルのことにも触れてもらえるとは・・
このかぜあめ、言葉もございません(笑
おまけSS・・多分すごいことになります(笑
がんばりますね。 (かぜあめ)
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