雨(その八)
投稿者名:NATO
投稿日時:(03/ 8/ 1)
意思を持って目の前に立ちふさがるものを敵という。
ならば、意思を持たずにただ命ぜられるままに戦うものは?
駒。人の命を駒にするということに、否定的なものは多い。
だが、ならばその者は戦いの場に赴くとき、己の意思を持っていられるのか?
敵と敵が戦うことなど、戦場ではほとんど無い。
「早速来たみたいだな。」
殺気。ドアに手をかけた瞬間、それは発せられる。
向かってくるほうを見極め、横島は静かに構える。
その横顔は、明らかにいままで馬鹿な話で明るく振舞っていた者のそれとは違う。
タマモはしばしそれに見とれる。
近づいてくる殺気。
狐火を指にともし、迎えようとするタマモ。
「止めろ。」
横島が言う。
何故?と横島のほうを見るタマモ。
迫る殺気。閃く映像。
血、死、恐怖、孤独。
震えだすタマモの肩を軽く叩く。
「・・・タマモ、俺から離れるなよ。」
別の震えが襲うほどに絵になる姿、声。
操られるようにタマモは横島の後ろに回る。
一人、二人・・・三人。
風が奔る。横島はとっさにかわすと、通り過ぎた三つの風に振り向く。
殺気。一人が崩れ落ちる。
通り抜けざま攻撃を仕掛けた相手に、すさまじい速さで手刀を叩き込んだ横島。
まず、一人。
残りの二人は一瞬の動揺を見せるが、すぐに持ち直し、ナイフを構える。
「タマモを、殺すつもりか?」
横島の問いかけに答えず、左右から横島に襲い掛かる。
行く筋にも分かれて、風が奔る。
タマモを庇いながら、自分も傷ひとつ受けることなく、素手でナイフを持った二人を相手にする横島。
もはやGSの領域でさえない。
握りを受ける、刃をかわす、刃の腹をはじく。
一対一ならともかく、複数対一人という臨機応変な戦いを要求される場では、実力があるなら刃物を握りこまないほうがいい。
もちろん、そうそう出来るものではないが。
二人の攻撃を捌きながら、横島は隙をうかがう。
一瞬。閃光が横島の腕を貫く。
隠れていた一人が現れると、横島に狙いを定める。
横島は硬直する。
刃物を持った男達が緩む。
風。
二人の男は地に倒れこみ横島はタマモを抱えて跳ぶ。
狙いを定める銃の男。
光。
突然起こった音を伴わない爆発に男はたじろぐ。
男たちが倒れているところから発する強烈な光。
その元が小さな玉であることに気付いたときは遅かった。
がくりと男が倒れる。
時間にして五分も無かったろう。
四人のプロの男が、人一人かばいながら戦う一介のGSに地を舐めさせられることになるまで。
「俺を狙うってことは、こいつらは政治家の手先か。」
腕から流す血をとめながら、横島はつぶやく。
「大丈夫?」
「ああ、お前こそ大丈夫だったか?」
タマモは無言でうなずく。
「よかった。さて、さっさと荷物もってずらかろう。」
横島は表情を戻すと、タマモの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「おまたせしました。」
どこにでもある喫茶店の、奥まったテーブル。
西条は静かに目の前の男を見据えると、ゆっくりと口を開く。
「本当に一億だな。」
目の前のどう見ても堅気ではない、しかし大物では無さそうな男が言う。
焦ったように、おびえたように時折辺りを見回しては、西条を見る。
「ええ、間違いなく。それで、お持ちくださいましたか?」
「・・・ここにある。」
と、大きな茶封筒を突き出す。
「確かめさせてもらっても?」
それを受け取って西条は言う。
「ここでか?」
「大丈夫。心配なさらなくてもあなたに注意を向けている人はいません。」
男は安心したのかほっと息をつき、軽くうなずく。
西条は無言で中身を改め、本物であることを確認すると男に向かって傍らの鞄をそのまま押し出す。
「あなたが言われたとおり、前金として三千万入っています。」
男はその鞄をひったくるようにして受け取ると中身を確認し、震えだす。
「それでは、私はこれで。次のお支払いができることを祈っています。」
西条はそれを見届けると席を立ち、茶封筒を抱えて歩き出す。
多分あの男は消されるだろう。
散々ろくでもないことをしてきたのだろうし自業自得だ。
出て行く自分に移った視線を感じながら、
西条は微笑を浮かべていた。
「先生、お電話です。」
帰省から戻ってきたピートが、珍しく鳴った教会の電話を取り次ぐ。
「ん。ありがとう。」
唐巣は受話器を受け取ると、いきなり言った。
「やあ、前回のこと決めておいてくれたかい?」
相手がぼそぼそと答える。
「うん。君の立場もわかるけど、こっちも急いでいるんだ。君の心配するようなことにはならないって言っているだろう。何とか頼むよ。」
普段の師とは似ても似つかない高圧的な口調に、ピートは目をむく。
「たいしたことじゃないだろう。え?動くのもまずいって、じゃあ毎日君はそのいすに座るためにそこにいるのかい?そんなことだからいつまでたってもあっちの下に居ざるを得ないんじゃないか。なにより義理を立てるなら僕のほうにだろう?」
それは、口調こそ師のものだが、明らかに違う人物だった。ピートは何度か唐巣を霊視してみる。やはり彼自身であるはずなのだが。
「僕が君に頼み事をするなんていままでにあったかい?だろう。これから先もそうそうするつもりは無いよ。だから今回は頼むよ。」
笑っている。少なくとも、顔は、声は、目さえも。だが、絶対にこの人は笑ってはいない。
ピートは始めて見る自分の師の姿に、美神親子以上の凄みを感じていた。
「うん、わかった。君の後ろに控えている彼に変わってくれるかい?あ、そうそう君の席が空くってことも伝えてくれたまえ。え、わかった?ありがとう!恩に着るよ。そのうちお礼に伺うかもしれないな。うん。すぐにとりに行かせてもらうよ。そうだな。僕の弟子がそっちに行くから。待っていてくれたまえ。」
いきなり自分のことが出てきて驚くピート。受話器をおいた唐巣に問う。
「えーっと、いまの電話どこからだったんです?」
「ああ、今の日本GS連盟の会長だよ。」
平然と言い放つ唐巣に、血の気が引いていくピート。
「だ、大丈夫なんですか!?」
「うん。昔からの知り合いでね。そうだ、悪いんだけど彼のところに書類を取りに言ってもらえるかな?そういう人たちと面識を持っておくのも君のために悪くは無いと思うよ。」
と、最寄り駅と簡単な地図を渡す唐巣。
青ざめながらもそれを受け取り、地図の場所に言ってみると。
「日本GS連盟」と書かれた大きなビル。
そしてその入り口には、
「歓迎!!GSピエトロ様!!」
と書かれたカードを掲げた受付嬢。
「え、えーっと・・・。」
しどろもどろになりながらも何とか自己紹介をすると。
「お待ちしておりました。どうぞおいでください。」
お足元にご注意くださいとまでいわれ、連れて行かれたのは実家の屋敷でさえかくやと言うほどの応接室。
当然のように相手は先に来て待っていた。
引きつった笑顔を浮かべる会長と、震えながらも握手を交わす。
最後の最後まで徹底的にもてなされ、帰りの車まで用意されて従業員総出で見送られた道すがら、渡されたお土産の山にうずもれた茶封筒を眺め、自分が師についてほとんど何も知らないことに気付かされたのだった。
今までの
コメント:
- 唐巣が好きです。でも、あんまり書くと収拾つかなくなるのでこの位にしておこうと思います。いつか彼が主人公の話も書きたいのですが・・・。いつになることやら。 (NATO)
- 唐巣神父・・そんな裏の権力が・・(笑
自分も唐巣神父は大好きです〜まだまだ活躍してくれそうですね〜
そして・・、今回の横島はかっこよかった!!(爆)
戦闘シーンも迫力ありますし・・。
ぜひぜひ、タマモを守りきってほしいです。
投稿お疲れ様でした〜次回もがんばってくださいね。 (かぜあめ)
- おおっ、続きだあ♪横島くんの実力がこれほどとは!!
臨場感のある戦闘、心理描写やら読んでてピリピリと伝わって来ました。
唐巣神父の権威も分かったことだし、ピートくんも見る目が変わりますね?
今まで以上に尊敬するでしょう!次回に期待です。 (えび団子)
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