ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記外伝U(その1)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 7/30)




初夏を思わせる日差し降り注ぐ5月下旬。
ひのめと京華の激闘の翌日、東京は30度をマークした。
その炎天下の土手道を歩いてるのは・・・

「ふぅ〜、暑いわねぇ・・・早く家に帰ってクッキーをつまみに一杯ひっかけたいわ」

強い日差しにへきへきとした表情のおかっぱ黒髪少女。
スタイルはスレンダー、スリムという形容がふさわしく、大きくクリクリとした瞳が際立つ。
市立中学のセーラー服の胸元をパタパタを仰ぎながら・・・・・・・・『横島蛍』はボヤくのだった。
そのとき・・・

「こぉら!何中学一年生がオヤジくさいこと言ってんのよ!」
「うっさいわねぇ・・・真鈴(ますず)」

蛍の背後から現れた真鈴と呼ばれる少女。
その姿は蛍と同じセーラー服、髪型は腰まである髪を後頭部のあたりで三つ編にしてある。
凛とした眉にキラリと輝くメガネ。
スタイルは中学生平均より・・・少なくとも蛍より大きい胸が特徴だった。

「は〜あ、中学のテストって難しいわー、蛍はどうたった?」

「う〜ん・・・理科は結構出来たけど・・・英語はやばいかなぁ、で真鈴さんはどうなのかしらぁ〜」

「聞かないで・・・新薬の実験に付きっきりで勉強する暇なかったのよ」

「新薬って・・・はぁ〜あんたまた変なもん作ったのね?」

友人の変な趣味を思い出し呆れ顔になる蛍。
そんな言い草にムっときた真鈴がぶすぅと頬を膨らませる。

「変なモンとは何よ、変なモンとは?」

「そのうちオカルト法違反で自分の父親に捕まっても知らないわよ?
 『『西条』真鈴!キミをオカルト法違反で逮捕する』って」

「へへ〜ん!お父さんは私に甘いもんね♪」

「じゃああなたのお母さんに言っておくわよ」

「げっ!それはやめてよ!
 こないだなんて輝樹(てるき)をちょっと実験台しただけで私を魔法でカエルに変えたのよ!!?」

「真鈴のお母さんは超一流の魔女だからね」

蛍はげんなりとした友人にケラケラと笑う。
西条真鈴(さいじょう ますず)、市立中学一年生で蛍とは小学校からの付き合い。
父はオカルトGメンの隊員でエリート公務員、母は主婦ながら超一流の魔女、
さらに弟の輝樹を加えた4人家族。
そして夢は・・・・

「世界征服!!」

声高らかに青空に拳を突き出す真鈴。
その隣では「また始まったぁ」と蛍が頭を抱えていた。

「真鈴ぅ・・・あんたねぇ、その病的、妄想的、誇大的、非現実的な夢を起きてるときに見ないでって言ってるでしょ?」

「なぁに言ってるのよ!今までこの地球全てを支配した人はいる!?
 今どきの女は大きな夢(野望)を持って生きなきゃ!思い浮かべて見てよ!
 万民が自分の足元に跪くなんて・・・ ・・・ああ、なんて素晴らしく甘美な光景じゃない♪」

「ったく・・・・親の顔が見てみたいわ・・」

「いつも見てるじゃない」

「皮肉に決まってるでしょ・・・ハァ〜そういえば最近カオスさんのとこに入り浸ってるんだって?」

「ええ、さすがカオス師匠ね!ヨーロッパの魔王と言われただけあるわぁ、私の『魔』薬の開発が進む進む♪」

「師匠って・・・・・・・・もういい、頭痛くなってきた」

本気で野望を語る友人に小学校からの付き合いだがそろそろ本気で告発してやろうかと思う蛍だった。
そのとき、蛍と真鈴の前の河川敷から声が聞こえてくる。
聞き覚えのある声に視線を動かすとそこには赤いランドセルを背負った少女が二人、
黒いランドセルを背負った男の子が一人いる。
その会話の内容は・・・

「せやからいつまでも泣くな!」

「そ、そんなこと言ったてぇ・・・」

「まあまあ、冥菜(めいな)ちゃん、そんなに怒ったら政宗君かわいそうだよ」

「あほ!令花、そうやって甘やかしてたからこんなことになるんや!ったくホントにウチの兄貴か!政!」

「兄妹やん・・・双子の・・・」

「アホ────!!嫌味にきまっとるやろぉっ!!!」

「うああぁぁぁっ!!!」

「泣くな────っ!!」

「冥菜ちゃぁん」

「こおら、あんた達何やってんのよ」

「あ、お姉ちゃん!!」

その光景に見かね声をかけた蛍にいち早く反応した少女。
それは蛍の妹で小学三年生の横島令花(よこしま れいか)、
一張羅のオーバーオールに母親と同じ亜麻色の髪をポニーテールにしている。
そしてさっきから泣いているチョビっと後ろ髪を結んだ男の子が六道政宗(ろくどうまさむね)、
政宗を怒鳴りつけているおかっぱの少女が六道冥菜(ろくどうめいな)、
苗字から分かるように二人は六道冥子と鬼道政樹の子供で双子。
一応政宗のほうが兄なのだが今の状況を見る限りその威厳はなさそうだ。

「チラっと見てただけだけど、政宗君何かしたの?」

「・・・・ぐすっ・・・何もしてへん・・・」

「って言ってるけど?」

蛍は政宗に尋ねてからチラっと冥菜に視線をやった。
以前からこの二人とは面識があったが今みたいな光景にでくわすのは珍しいことではない、
おそらく・・・

「マサがまたいじめられたんや!ウチがいつも追い返しとるけど・・・結局はマサが変わらなあかんやん!」

はは、やっぱりと苦笑いを浮かべると、今度は優しい目で冥菜の頭にポンと手を添えた。

「冥菜ちゃん・・・・・政宗君を心配する気持ちは分かるよ?
 でもね、そんなにすぐ人は変われるものじゃないわ?まして怒鳴りつけたりしてもかえって萎縮しちゃうものよ?」

「いしゅくって?」

「あ、ああ・・・え〜とびっくりしちゃうってこと。
 だから、もう少し見守っててあげて?きっといつか政宗君から変わりたいっていう日がくるから」

「・・・・・・・・・・うん」

蛍の優しい目に見詰められながら冥菜は少しだけ眉をひそめて頷いた。
完全に納得したわけじゃない、でも相手の言ってることもわかる、このくらいの年頃の子供はそんなものだろう。

「ありがとー、お姉ちゃん♪」

「ふふ、いいのよ令花」

「せやけどケンカ必勝法だけ教えとくわ。
 ええか?ケンカなんて相手のキン○マ握って鼻頭に頭突き一発!ウチはこれで11連勝や!」

「・・・・・けど・・・あの・・・その・・・・」

「あ?聞こえん」

冥菜はずいと耳を寄せるとボソボソと話す政宗の声を拾う。
そして、それを聞き取った瞬間また顔が険しくなった。

「は?女の子相手に負けた!?アホ────っ!!!」
「うえああああん!!!」

冥菜にこづかれ再び泣き出す政宗をやれやれと慰める蛍だった。

「おーい!何やってんの?」

「ん?」

蛍は5mほど離れたところから聞こえる声に振り返る。
そこにはバンダナをした少年とその隣には太い眉が特徴的な少年が一人。
バンダナをしたほうが蛍の弟で小学六年生の横島忠志、もう一人の少年が真鈴の弟で西条輝樹だった。

「忠志じゃない?・・・・そういえばあんた達平日(火)の昼ごろに何でこんなとこいるの?」

「今日は小学校が半日授業だったから土手広場で遊んでただけ。で、ほた姉ちゃん達は何してんだ?」

「別にちょっとね・・・・・あら、輝樹君も一緒だったのね、こんにちは♪」

「こここんにちは!蛍さん!」

蛍に声をかけられた輝樹が真っ赤な顔で応える。

「輝樹・・・・お前何でほた姉ちゃんの前だと緊張してんだ?」

「し、失礼な!!べ、別に緊張なんて・・・・・・・・・」

どうみても緊張気味な友人を忠志がからかっていたとき・・・

「おーい!蛍ぅ話し終わったぁ?・・・・・・・・・って何よ輝樹をはじめガキんちょ勢ぞろいしてるじゃない?」

蛍に「ちょっと待ってて」と言われて待っていたがいいかげん友人の帰還が遅いと思い迎えに来た真鈴。
しかし、彼女の登場にその場にいた忠志、輝樹、令花、冥菜、政宗の表情が凍りついた。

「「「「「で・・・でで・・・ででで・・・ででででで・・」」」」」

「ど、どうしたのよあんた達!?」

顔面蒼白で体をガクガク振るわせる5人に心配になってくる蛍。
そして次の瞬間5人の指を差す方向と声が重なった。

「「「「「でた────────────────っ!!!!!!!!!」」」」」

「は?」

5人が指差す者それは「え?私?」と言った表情の真鈴だった。
親が知り合いということで年に何度かは一緒に西条家、横島家、六道家でホームパーティーをするので、
今いるメンバーは全員面識がある。
しかし、5人が真鈴にこのような反応することは初めてで蛍はただ戸惑うばかり。

「ちょ、ちょっとみんなどうしたのよ?」

「そ、そっかほた姉ちゃんはこないだの食事会いなかったから知らないのか・・・」

「え、う、うん。そういえば学校の用事で出れなかったけど・・・」

「そのときに真鈴姉さんが・・・」
「わ、私達のご飯にね・・・」
「え・・・えぐ・・・ぐす・・・」
「薬を盛ったんや────っ!!?」

「いい!?」

「やーね〜、ちょおっと『恍惚状態になってハァハァ』するだけの薬なんだから気にしないでよ〜♪」

「あんた人様の子供に何やっての────────!!!!!?」

「蛍・・・・これもあなたの魔科学と私の魔薬で愚民を平定するためなのよ?」

「勝手に決めるな────────!!!!だぁ〜もうあんたはぁ・・・・」

「そんなに怒鳴ってばかりで疲れない?」

「誰のせいだと思ってるのよ、誰の」

「まま、ほらこれ飲んで落ち着いて」

「ん?ああ・・・」

この暑さの中怒鳴ってるだけ水分が飛んでいく。
既にカラカラ状態だった喉を潤すために蛍は真鈴から渡せれたミネラルウォーターを一気に飲み干した。

「どう?おいしい?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真鈴特製『潜在能力開放水』は?」

「ブホ────────────────────っ!!!!!!!!」

その安直な名前を聞いた瞬間に蛍は噴き出した。

「これはその人の中に眠る・・・・」

「説明はいら────ん!もう許さないわ!!ほら、みんなも積年の恨みを晴らすのよ!!!」

蛍の言葉に『キラン』と瞳を輝かせる子供達。

「あ、ちょっと待って!みんな!ほら私が世界を制した暁にはそれなりのポストを用意するから────っ!!」
「うるさ────────いっ!!!!」×6
「キャ────────────っ!!!!!!!」

五月の青空に真鈴の断末魔が響いた・・・・。少しだけ溜飲の下がった6人・・・・でも・・・
このとき飲んだ薬がのちに蛍を苦しめることなるのを・・・まだ誰も知らなかった・・・






                                   その2に続く

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