ザ・グレート・展開予測ショー

雨(その七)


投稿者名:NATO
投稿日時:(03/ 7/29)

「どうも、なんだお前もいたのか。」
扉を開き手をつないだまま入ってくる横島とタマモ。
顔を赤く染め、うつむき加減のタマモがなんとも可愛らしい。
「待っていたよ、横島君。」
唐巣は立ち上がると、席のひとつに促す。
横島は軽く会釈を交わすと、指された席に腰を下ろす。
ふとタマモに視線が集まる。
タマモは黙って狐に戻ると横島のひざの上に収まる。
冷やかすような笑い。
横島は意に介する風も無くタマモを撫でる。
「西条。話してもらえるか?」
しばらくして、横島が言う。
「む、ああ、唐巣神父には一度話したが、もう一度確認しておくべきかもしれないな。」
出された飲み物に口をつけ、西条はゆっくりと口を開く。
「最初に言っておく。君、いや僕たちの敵は、この国だ。」
まあ、そこまで大げさではないが、とひとつ置いて西条が語り始める。
「もっと具体的に言うなら、鳩川と言う男と、その男が使える政治組織だ。」
「鳩川?あの新聞とかテレビでよく出てくるやつか?」
「ああ、そいつだ。君もそれくらいは知っていたか。なら話が早い。今回の敵はそいつだよ。」
「なぜそんなのが?てっきり政府が丸ごと敵だと・・・。」
「それならまだ話が楽だったんだ。だが、あいまいな意識の集合体じゃない。それを使う意志と欲望を持ったやつが中心にいる以上、さらに厄介なことに成っているといえるな。」
国そのものを相手にするつもりだったのかい?と呆れたように言う西条。
横島なら本当に一人で日本国相手に喧嘩しかねない。
「欲望?まさかこいつに一目ぼれでもしたのか?そいつ。」
ひざの上で眠っている狐をなでつつ、あくまで冗談のつもりで口にする横島。しかし
「そのまさかさ。おそらく今政府にいる連中で、最も彼女の話について正しい知識を持っている人間の一人だろうな。まあ、その男に特殊な趣味があるというのも有名な話だが。」
「どういうことだ?政府はタマモの命を狙ってないのか?」
正しい知識を持った男?その男がタマモを欲しいから政府が動いたとでも言うのか。
「この国はそういう国なのだよ。おそらく君の考えているとおりだ。その屑男一人のために、国が税金を使って必死にタマモ君を追いかけているわけだ。」
「だけど、タマモは命を狙われたって。」
「それはそれさ。まさかいきなり鳩川が自分の指揮下でICPOを動かせるわけは無いだろう。そんなことをしたらいくらなんでもばれてしまう。まあ、イレギュラーみたいなものかな。」
「つまり、タマモの命を狙ってるやつらの中で、それとは別に、そのロリコン男のためにタマモを捕らえようとしてるやつがいるって事か?」
「君にしては珍しく察しがいいね。そういうことだ。まあ、厳密に言えば鳩川もただのロリコンってわけじゃない。タマモ君の力が目当てでもあるのさ。」
「タマモの力?」
「目をつけた男に、出世の強運を与える力。有名な話だろう。玉藻の前を妻にしたとたん、政敵が変死したり、席に空位ができたり。」
それもタマモ君が嫌われる原因なのだが。と西条。
「・・・ふざけた話だな。」
「まったくだ。同じ公僕として、目に余るものがあるよ。」
「それで、どうするんだ?そいつ暗殺して、ハイ終わりってわけには行かないだろう?」
よっぽど腹に据えかねたか、物騒なことを言い出す横島。
「ああ、そんなことをすれば単純に政府はタマモ君の命を狙ってくるだろうし、似たようなことを考える連中が出てこないとも限らない。」
「んで?」
「ん?」
「お前のことだ。何か考えでもあるんだろう?もったいぶらずにさっさと言っちまえよ。」
にやりと口元に笑みを浮かべる西条。同じように笑う横島。なんだかんだいっても意外と通じるものがあるようだ。
「さて、そろそろ混ぜてもらってもいいかな?」
見計らって唐巣が口を挟む。
「ええ、神父はどう思われます?」
西条が話の矛を向ける。

雨の音が聞こえてくる。どうやらいま降り始めたのだろう。
西条の声が聞こえなかったかのように笑みを浮かべたまま、しばしその音に聞き入る唐巣。
「横島君ではないが君の事だ。このまま国外逃亡なんて道を選ぶよりも、その政治家に何かしでかすんだろう?」
しばらくのあと、楽しそうに唐巣が言う。
「ええ、流石ですね。そのとおりです。こんな男相手に逃げるなんて、僕のプライドにかかわりますから。」
「そうか。逃げるならいい場所があったんだが。」
笑いながら口調だけは残念そうに言う唐巣。その言葉に不穏なものを感じ取った横島が言う。
「あの〜、一応聞いておきますがそれってどこのことです?」
「ん?バチカンの地下牢さ。なんなら君も一緒にどうだい?優遇するように言っておくよ。」
さも当然。と言わんばかりの唐巣。この男、破門されたのではなかったか?
「良かったじゃないか横島君!最悪でも一緒にいられる場所ができた。それも君にふさわしい所で・・・。」
皮肉な笑みを浮かべ、横島の肩をたたく西条。
「じゃかしい!!何がふさわしい所だ!」
激昂する横島。その声を聞いて目を覚ますタマモ。
「あ、ごめんな。もうちょっと寝ててくれるか?」
とたんに優しい顔に戻り、膝の上で丸まって見つめてくるタマモ(狐Ver)をなでる。
それを見て安心したのか、タマモはまた寝入ってしまった。
当事者がそんなにのんきでいいのか?タマモ。
横島もそう思ったのか苦笑しながら、それでもなでる手は止まらない。
呆れたように見つめるふたり。
そして笑いだす。ばつが悪くなった横島はふてくされたように言う。
「それで、どーすんだよ。」
「いや、いろいろ考えていたのだが、君たちはバチカンの地下のほうが良いんじゃないか?」
口元にニヤニヤと笑みを浮かべて西条が言う。
「私も同感だね。」
同じく唐巣。
「神父までそーいう事言いますか。」
完全に不貞腐れる横島。
「まあ、最悪君たちにはそこに入ってもらうとして、いまはこの僕が経歴と職をかけてやってきたプランを聞いてもらえるかな?せっかく徹夜で今までやってきたわけだしね。」
一段落して、西条が皮肉たっぷりに言い放つ。
「そうだね、聞かせてもらえるかい?」
軽く受け流す唐巣。
雨脚が強くなっていく。そんな中、一癖も二癖もある三人の男たちの話し合いは続いていった。

外に出る。昨日の雨はもう上がり、濡れた地面と晴れた空が、妙にすがすがしい。
「今日はもう遅い、ここで休んでいきたまえ。西条君もここの所休んでいないんだろう?」
という唐巣の慈悲深い言葉のおかげで、彼らはそこで一晩を明かすこととなった。
教会で布団で寝ることになるとは思わなかったのだが。まあ、ピートも帰省していた上に貧乏な教会になぜかある客用布団のおかげで、何とか人数分寝床は確保できた。
タマモは、まあ言うまでも無いだろう。ちなみに狐形態だ。
当然の成り行きとはいえ、ここのところタマモは妙に横島にくっついている。
横島の安全のためには、事務所のメンバーには見せられない光景である。
「さて、君はしばらくタマモ君と一緒に時間を稼いでいてくれたまえ。ただし、絶対に僕の言ったことは守ってくれよ。」
西条が口を開く。
「わかってる、そっちのほうもよろしく頼む。唐巣神父も。」
「ああ、任せてくれたまえ。」
「君に頼まれるとは何か気味が悪いな。」
三人でしばし笑いあう。絶対的な信頼。そんなものが口をつくような場面。
「じゃあな。」
「また来たまえ。」
「それでは。」
三者三様の口ぶりでありながら何か通じ合うものを持つ者達。
コイツになら任せられる。それを口に出すことなく三人はそれぞれ動き出した。

「ところでタマモ。」
ふと傍らに声をかける。首をかしげるタマモに横島は続ける。
「おまえ、話聞いてなくてよかったのか?」
タマモが見る間に赤く染まっていく。
まさか、「撫でられてたら気持ちよくて寝ちゃいました。」とは言えない。
「・・・お前のせい。」
「は?なにいってんだ?」
「うるさい!いいからお前のせいなの!!」
体中真っ赤に染めるタマモを、怪訝な目で見つめながら、横島はとりあえず
自分のアパートへ向かっていた。

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