ザ・グレート・展開予測ショー

雨(その六)


投稿者名:NATO
投稿日時:(03/ 7/28)

友という言葉がある。宿敵と書いて友と呼ぶこともある。どちらも意味は同じだから。
自分にとって、有益なものを共有し、与え合うことができる。
その場所が白刃舞う戦火の下だとしても、初めて会った場所で、お互いの名前も知らずに一杯の酒を酌み交わしただけでも。
たとえ、一言も話すことなく、瞬きの間、視線を合わせただけだとしても。


「首尾はどう?」
ICPOのオフィス。監視役としてつけられた部下も報告のためいまは居らず、美知恵と西条の二人だけがそこにいる。
「どう、といわれましても。横島君次第ですね。」
西条は連日の徹夜と胃を切り刻むような綱渡りの中、疲労を微塵も見せずに言う。
彼にとって、投げ出しても何の問題も無い事件。
だからこそ彼は、自分のために妥協を許さない。
「彼のことは問題ないと思うわ。きっとうまくやるでしょう。当面の問題として、あなたの根回しのほうにかかっているのだけれど。大丈夫なの?ここの所寝てないみたいだけど・・・」
なんなら私が、という言葉を西条は丁重に辞退する。
多分彼女は知らない。この国とそこに所属するものたちが、どれほど腐っているのかを。
見せたくない。作戦指揮が仕事である彼女に、自分たちが働いているところがどんなところなのか教えれば、彼女は間違いなく動くだろう。おそらく最短の方法で目的を達する。
そしてそれは、事態を最悪にする。
激しやすい親子を思い、心の底で苦笑する。
「あ、そうでした。当初とは状況が違ってきているので、しばらく僕の独断で動くことになると思いますが、よろしいですね?」
「ええ、それはかまわないわ。なんだかんだといっても、私は何も知らないのも同然だし・・・。」
そう、彼女は何も知らない。知らないでいるべきなのだ。知らないうちに片付けられねばならない。だが、人が足りない。だれか、打ち明けるにふさわしく、動くのに愚鈍でない人物。
一人だけ思いつき、男は安堵する。
そして自分の上司を見、微苦笑する。
彼女がその師のような人物でなくてよかった。
おかげでこの親子に何も見せないで済む。
「少し出かけてきます。」
「ええ、よろしくね。」
すべてが終わったら、宿敵も含めて三人で飲み明かすのもいいかもしれない。
教会への道すがら、西条はそんなことを考えていた。

「さて、とりあえずはどうしようか。」
日が白み始めている。泣き疲れたタマモが寝付き、寄り添うように横島も睡眠をとった。日差しを浴びながら横島はつぶやく。
タマモが狙われているとわかった以上、事務所に戻るわけにはいかない。
「私は、ずっとここにいてもいいんだけど。」
すっかり落ち着きを取り戻したタマモが、いたずらっぽい微笑を浮かべて言う。
ちなみにタマモの頭は横島のひざの上。上目遣いに見つめるタマモの眼は、年少趣味でなくとも引き付けられるだろう。
だが、それが通じないのが横島という男で、
「う〜ん。それも悪くないかもしれないけど、やっぱり何とかしないと。」
涙と笑顔には敏感なのだが。女性にほかに表情がないとでも思っているのだろうか。
タマモが見る間に赤く染まる。
自滅するくらいなら、最初から言わなきゃいいものだが。
「と、とにかく!なにかあてはあるの?」
タマモが跳ね起き、まくし立てる。
横島は名残惜しそうにひざを払い立ち上がると、
「とりあえず、不本意ながら西条に連絡を取る。」
見るからに不服そうに、しかし少し笑みを含んで言う。
「西条?何でアイツに。」
怪訝な顔を浮かべるタマモ。
「ん?いや、お前探してるときにたまたまアイツにあってさ、後で俺に連絡くれって。」
アイツなら大丈夫。と不満げな顔に自信と笑みを隠し、横島。
「多分何か知ってるんだろ。俺の勘だとそれだけじゃ無さそうだが。」
よほどのことが無い限りあいつが俺に連絡をよこせとは言わない。と続ける。
「アイツがらみってことは、結構面倒なことになってそうだな。だとすると、あと話ができるのは唐巣神父ぐらいか。となると、先に教会に行って西条のヤツ呼び出したほうがいいかもしれないな。」
当のアイツが同じことを考えていることなど、今の横島に知るよしは無い。
それじゃ、いくか。と横島はタマモに振り返り手を差し伸べる。
その仕草があまりにも自然で、思わず手をとってしまったタマモ。
離すに離せず、赤面したまま歩き続けることになるのだが。

「・・・というわけです。」
教会。一足先に着いた西条は状況を唐巣に説明する。
話の後、唐巣は軽く十字をきり、天を仰ぐ。
「なるほど。しかし、吐き気がしてくるような話だな。それは。で、今タマモ君はどこに?」
「横島君が保護しているはずです。探しに飛び出していったのなら、世界中駆けずり回ってでも見つけ出すでしょうからね。」
「なるほど。しかし、どうするつもりかね。私に協力できることはさせてもらうが。」
「そうですね・・・作戦会議は横島君を待って、ということで。もうそろそろでしょう。」
「彼にここがわかるのかい?」
西条は微かに笑う。
「彼は馬鹿ですがね、こういう状況で道を間違えるほど愚かではないですよ。」
そこには、宿敵であると同時に不本意ながら今回ともに戦う者への、確かな信頼があった。
その顔を見て微笑する唐巣。
この者達なら勝てるだろう。たとえ相手が、どれほど大きなものであったとしても。
久しぶりに若いころを思い出し、楽しそうに笑う唐巣。
教会に反し破門され、当時まだそれほどの強みを持たなかったGS免許のみで教会や他の宗教団体と渡り合ってきた日々。
西条でさえ知らないことだが、唐巣という男の底は、知った者は彼がいつも浮かべている笑顔にさえ凍りつくほどに、深い。
文殊によって、五分もせずにたどり着く横島を席に加え、
男たちは、動き出す。

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