ザ・グレート・展開予測ショー

風鈴


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 7/27)


 しゃわしゃわしゃわみんみんみん・・・

 せわしなく響く蝉時雨の中。ぐわんぐわんと嫌な音を立てながら回る扇風機。開けっ放しにした窓から吹き込んでくるぬるい風。
 ちゃぶ台の上に置いた麦茶はコップに水滴を幾つも作る。きんきんに冷えている、とは言いがたい、まだ、冷蔵庫に入れたばかりの冷めただけの麦茶。
 猛暑。汗ばむ身体にシャツが濡れる。冷めた身体が無性に痒い。蚊取り線香は効かなかったんだろうか?煩わしい痒みの原因を作っていた蚊は、しかし、ぱっと見、飛んでいないようではあった。

 ほうけた面をして、窓の外の景色を見ている。青々と茂る木に止まっているであろう蝉。ここからでは見えないけれど、彼らは短い生涯の春を精一杯に謳歌しているに相違ない。
 蝉の音は、命の音。そう、誰かは言っていたのを思い出す。それは、誰だろうか?―――意外な顔が浮かんできた。それは、雇用主の顔だった。

 「今を生きなさい」

 短い生涯を鳴くだけでも。精一杯に生きている。命を繋いでいる。蝉。
 あんたも、生きなさい。繋ぎなさい。あんたの為に。

 ―――彼女の為に、とは言わなかった。






 りんりんりん・・・
、りんりんりん・・・
 りんりんりん・・・

 涼やかな音が聞こえた。

 りんりんりん・・・

 「りんりんりん・・・」

 それは、腕の中。

 「りんりんりん・・・」

 聞こえた。

 「・・・先生、涼しいでござるか?」

 「・・・いや、死ぬほど暑いぞ?」

 あいつはくすりと笑って、そして、また、口を開いた。

 「りんりんりん・・・拙者、風鈴の音の真似をするのが得意なんでござるよ」

 りんりんりん・・・

 確かに似ていた。でも―――クソ暑い。

 「・・・あぁ、似てるな」

 りんりんりん・・・彼女の体を抱いているから、と言うこともあるのかもしれない。
 りんりんりん・・・でも、離す気にはなれなかった。

 膝にかかる心地良い痺れ。
 そして、感じる鼓動と息遣い。
 彼女の、優しさ。

 「りんりんりん・・・先生?」

 「ん?」

 「・・・涼しいでござるか?」
















 「・・・クソ暑い」


 りんりんりん・・・―――














 ・・・ぐしゃん
 ・・・ぽふっ
 ・・・ぽんっ











 先生、扇風機が壊れたでござるな。

 ・・・ああ。

 ・・・りんりんりん・・・涼しいでござるか?


 ・・・。


 ・・・りんりんりん・・・りんりんりん・・・


 ・・・あぁ。・・・寄りかかるなぁっ・・・


 ・・・先生・・・ふふっ・・・りんりんりん・・・


 ・・・暑苦しいわ・・・馬鹿犬ぅ・・・


 犬じゃないもん♪・・・りんりんりん・・・


 のぐあぁぁぁぁぁ・・・








 りんりんと 風に流れる 鈴の音と 腕に抱いた 優しい微熱




 終わり

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