雨(その五)
投稿者名:NATO
投稿日時:(03/ 7/26)
守る、護る、保、衛。この言葉の意味に気がついた男は不幸である。
囲うことであり、支配することであるということに気付くからだ。
守られることで得るものは何も無い。
守るために失うものはあまりに多く、そして得るものも、また。
喧嘩を止められたことは無いだろうか
それ以上傷は負わなくてすむ。
しかしどこかが確実に壊れる。
それは、男にとって絶対になくしてはならないもの。そして、それ以外のどこか。
さらに命がけなどで守られたとき。
もうその男に借りを返す手段は無い。
壊れたものを持ち続け、死んだまま生き続けるのだ。
誰かに命を気付かせてもらうまで。
死ぬことも許されず。
表立って握手を求めるものばかりが仲間ではない。当たり前のことである。とはいえ演技でも敵に回るということの辛さは並大抵ではない。隊長は強い。改めてそれを認識する。
とはいえそう考えれば弁解の一つもできず、表向きは敵を装ったまま裏でばれないように工作に走り回らなければならない男は、一番苦しい。そしてこういう仕事は決して女性にやらせるべきではない。自分にかかる仕事の重さにうたれながら、男はため息を飲み込む。横で騒ぎ立てている出世欲の塊の部下がうらやましくなってくる。証拠を持ち帰れば点数が上がるとでも思っているのだろうか。事態はそんなに簡単ではないのに。
男はこれから周る場所を頭に浮かべ頭痛に耐えながら、これから自分と同じか、下手をすればそれ以上の危険を背負うはずである宿敵に思いを馳せた。
「さっきも言ったとおり、タマモちゃんは処分対象としてリストの最上位に載っている霊獣よ。」
「それはいつからなんですか?」
と問うおキヌ。
「いつ、というより最初からね。載ったというより、はずされていないというべきかしら。」
そう、タマモはGS管理下の霊獣などではない。抹消のリストの最上位に名を連ねる、
伝説の化け物なのだ。それがそんなに簡単にリストから外れるわけは無いのである。
「まあ、ばれなきゃ何の問題も無かったんだけど。そう甘くはいかなかったのね。」
ICPOの別働隊。国内の者の不備を見抜いていた政府は特別措置として大陸から人を募る。タマモに恨みや嫌悪を抱いているのは封じることに成功した日本国内よりもおめおめと逃がした中国などの大陸側のほうが高いという読みは正解で、さらに日本の厚遇から、かなりの人員が集まった。さきの西条の部下もそこと渡りのあるものである。
「なかには先祖を返り討ちにされた殺し屋の一族なんてのもいて、タマモちゃんを襲ったのはおそらく・・・」
「それじゃ、タマモちゃんは・・・。」
思わず涙ぐむおキヌ。横島が見たらなんというか。
「どうにもならないのでござるか!?」
声を荒げるシロ。
「なんとかうまく書類を滑り込ませて、GS美神管理下、と置くまではできたの。そこから先は、あの子達の腕次第かしら。」
そこで初めて、美知恵は笑顔を見せる。あの子達という言葉への追求を微笑でかわしながら術があることへの安堵を持った三人を勇気付けると彼女は一人つぶやいた
「あの子達なら大丈夫だろうけど、彼は哀れね。どう足掻いても報われないし、
まあ、どっちもどっちかしらね・・・。」
自分の部下や、目をつけたものに信用が置けるというのは、自分の力量に信頼が置けるということ以上に喜ばしいことであり、幸福である。彼女に不安は無かった。師である唐巣が、理不尽さを神に問いたくなるほどに。
「それにしても西条殿は見損なったでござる。まるで何の助太刀もしてくれないでござるとは。」
こっそりとうなずくおキヌ。美神は聞かない振りをしていたが、やっぱり気になる様子。
美知恵は成功しても確実に報われないことが今完全に確定した部下に対し哀れにも笑い出しそうになるのを顔に出さないように苦慮していた。
そのころ西条がくしゃみをしていたかは定かではない。何しろ命と経歴と職がかかった
大仕事の最中なのだから。
「怪我。大丈夫か。」
長い沈黙の後、横島は言った。
そしてひとつ、小さく、透明で、丸いビーダマのようなものを渡す。
「血は止まってるみたいだけど、一応、な。」
「・・・」
タマモは黙ってそれを受け取ると、ポケットに放り込む。
「・・・辛かったろ。ごめんな。」
横島は悲しそうな眼をしながらそう言葉を紡ぐ。
闇が辺りを包み込むような夜。
なんとなく虚ろな眼をして、火を眺める二人。
限界だった。
「馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿・・・」
必死で抑えようとする。
できなかった。
耐え切れなかった。
タマモは我を忘れ横島に飛び込む。
横島は悲しそうな眼をたたえたまま慈しむような光を宿しタマモの頭をなでる。
その手の暖かさが起爆剤となって、タマモは堰を切ったように泣き出した。
静かな、森。たった一つの灯りのやさしさと強さをかみ締めて、タマモの静かな泣き声だけが、響いていた。
今までの
コメント:
- タマモと横島の絡みもうちょっと書きたかったのですが・・・。
まあ、これからということで。 (NATO)
- タマモ・・・。色々あったんだね(泣)今は思いっきり泣くといいよ。続きに期待です♪ (えび団子)
- このシリーズには初めてコメントいたします。
かぜあめです〜よろしくお願いしますね。
おお・・・。このお話・・最高です!
横島×タマモ派の自分としては感無量です〜
最後に泣き崩れるタマモの描写がすごく繊細ですね。
次回もすごく楽しみです〜投稿お疲れ様でした〜 (かぜあめ)
- はじめまして、NATOさん。 タマモが主人公ですね!
そうですよね〜九尾の狐の子供1匹捕えるだけで、日本政府が動いていましたからね。 過去の記録・伝説というものが、現代まで引きずっているみたいですね。 今の九尾の狐=タマモを知らない人たちにとっては、過去の記録・伝説というものからしか情報が引き出せなくて、それらの伝説的行為から、抹消のリスト最上位に位置づけられるのもわからなくはありません。 でも・・・・・・横島とタマモ、この難局をどうか無事に乗り越えられるよう見守っていきたいと思います。 (ヴァージニア)
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