ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その34(C))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 7/23)






エピローグ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん

ひのめが闇の中、もらした言葉。
しだいにひのめの意識が覚醒しと五感が今の状況を確認する。

まずは視覚・・・暗い・・・・黒く染まった視界・・・
それがしだいに瞳孔が拡大し光を集めると薄く何かが見えてきた。

(・・・・・・・・・・・天井・・・・・私の部屋・・・・・)

見慣れた天井に今自分がどこにいるかを確認する。
次に嗅覚・・・・

いつもの自分の部屋の匂い・・・・そして美智恵が作るおいしいシチューの香りが鼻腔をくすぐった。
次は触覚・・・

温かい羽毛布団が自分を包む・・・と感じた瞬間に全身から筋肉痛が襲ってきた。
体力・・・・そして霊力の消耗・・・・それがこの状態を引き起こしている。
この痛みがひのめが京華と戦ったのだと実感させるのだった。

その次は味覚。
味はない・・・・ただ口の中が切れている痛みと猛烈な喉の渇きが襲ってきた。

「喉乾いたぁ・・・・・み、水ぅ・・・」

よいしょと体を起こしてみるがその動きはまるで老人のように鈍い。
そして、やれやれとベッドから起き上がると・・・

「すぅ〜・・・・すぅ〜・・・・」

「!?」

最後の感覚、聴覚が誰かの寝息を捕らえた。
ひのめは暗い視界を目をこらして見つめる・・・そこには・・・ベッドの隣で掛け布団で寝ている・・・幸恵が小さな寝息を立てていた。

「さっちゃん・・・・?」

なぜ親友がここに寝ているかはすぐに理解出来ない。
ひのめは少し考えてみるがまずは喉の渇きを潤すことを優先させる。
と、その前に・・・

「ったく・・・」

ひのめは微笑を浮かべながら崩れた掛け布団を幸恵の肩までかけ直す。
今日ここまでやれたのはこの親友のおかげなのだからと・・・
そのとき。

「うぅん・・・・ひーちゃぁん」

「!?」

一瞬起こしたかな?と思ったがどうやら寝言のようだ。
そして、その寝言はさらに続く。

「ひーちゃぁん・・・・・スキ・・・・・」

「え!?え!?わ、私!さっちゃんのこと好きだけどそいうんじゃなくてぇ!!」

「スキ・・・・・隙ありぃ・・・・ひーちゃん討ち取ったりぃ・・・・むにゃむにゃ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・まて、コラ」

「・・・・・・うぅ〜ん・・・・・あんみつ10杯ぃ〜・・・・・」

「私を破産させる気かい・・・・ったくぅ」

ひのめは幸恵の寝言にはぁ〜とタメ息をつきながら退室する。
出る間際に見た壁時計はPM9:16と表示されていた。

「・・・ん」

部屋を出たひのめは廊下の電球の明るさに少し目を細めると、
ギシギシと身体中から聞こえる軋みに顔を歪めながら足を動かした。

(のど渇いたぁ〜・・・・・あとお腹も減ったなぁ〜)

三大欲求の一つに思考を支配されながら今晩の夕食を考える。
シチューは3杯は食べれるなぁ〜と思いながら台所のドアをスライドさせると・・・そこには・・・

「あら、ひのめ起きたの?」

「・・・・ママ」

台所にいたのはテーブルの上にノートパソコンを置いて作業する美智恵の姿だった。
美智恵はメガネを外し食事の用意をしようとするがひのめがそれを制した。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しコップに注いで一気に飲みほすひのめ。
やがてその一滴一滴が体に染み込んでのどを潤すと美智恵に声をかける。

「さっちゃん、どうしたの?」

「それがあなたをおぶって学校からここまで送ってきたらしいんだけど・・・玄関でそのまま崩れるように寝ちゃったのよ。
 一応幸恵ちゃんの家に連絡したんだけど9時までは両親が帰らないっていうし、
 私もどうしても家でやらなくちゃいけない仕事があったから」

「そっか・・・・で、心眼は?」

いつも当たり前のようにつけているリストバンドの行方を尋ねる。

「心眼なら今精霊石と一緒にくるんでリビングの机の上よ?
 よっぽど竜気を消費したのか一言もしゃべらなかったわ・・・・」

「そ、そう・・・・」

心眼もそこまで疲れていたなんて・・・・・
ひのめは改めて自分一人でやれたわけじゃないと実感する。
そう・・・みんながいたからと・・・・。

「ひのめ・・・・今日は学校で何があったの?」

「へ?」

「『へ?』じゃないわよ・・・幸恵ちゃんも心眼も疲れ果てて、
 あなたもこんなにケガして・・・・ 何もないわけないでしょ?」

「そ、それは・・・」

「それは?」

「それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・また話すよ♪」

「またって・・・」

「いいからいいから、ほら!肩でも揉んであげる!」

ひのめは困惑する母を強引に座らせると両手を美智恵の肩に添えた。
そして、ニギニギと丁度いい力加減で肩をほぐす。

「どう?気持ちいい・・・?」

「え、ええ・・・・・そうね」

美智恵はひのめに強引にはぐらかせれてる気もするが今は娘の好意に甘えることにした。

「ふぅ・・・・・ひのめ上手いわねぇ・・・・」

「そう?」

「最近体中が凝っててね・・・・・ふふ、もう年かしら」

ひのめはクスクスと笑う母に合わせて笑みを漏らすがふとその視線が美智恵のうなじを捉えた。
そこには・・・染めきれていない白髪、年齢相応のシミや、シワもある・・・・。
美神美智恵55歳・・・外見は40代前半、いやそれ以上に若く見えるがそれでも年月と言うもの感じさせられる。

(ママ・・・・・・・・)

こんなとき・・・走馬灯ではないが母との思い出というものが浮かんでくるものだ。
幼稚園の学芸会、小学校の運動会、中学校の卒業式、高校の入学式・・・
今までいろいろな行事には必ず駆けつけてくれた・・・滅多に会えない公彦の分も補うように愛情をくれた美智恵・・・・

もし・・・・もし・・・その母が死んでしまったら・・・・
自分を守るために・・・・自分をかばって死んだら・・・・・
そんなことになったら自分は果たして正気でいられるだろうか・・・・


ギュッ

「────?・・・・ひのめどうしたの?」

いきなり後ろから抱き付いてた娘に少しだけ驚いて声をかける。
しかし、ひのめは顔を伏せ黙ったまま美智恵をギュっと抱きしめ続ける。
そして・・・・ゆっくりと口を開いた。

「ねぇ・・・・・・・・・お母さん・・・・」

「────ん?どうしたの?いつも『ママ』って呼ぶのに・・・」

「たまにはいいじゃない・・・・・・ねぇお母さん」

「なぁに・・・・?」

相変わらず顔を伏せたままのひのめに美智恵は微笑いながら尋ねる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死なないよね?お母さんは私を残して死んだりしないよね?
 ずっと・・・・ずぅっと一緒にいてくれるよね?」

「ひのめ・・・?」

「お願いだから・・・・・・『うん』って言って!お願いだからぁっ・・・・」

叫びながらさらに抱きしめる力を強めるひのめ。
美智恵は困惑しながらしながら少しだけ首を動かして言った。

「ひのめ・・・・・・・・・あなた、────泣いてるの?」

「ぐっ・・・ひぐ・・・うぐ・・・・・」

ひのめは声を押し殺して嗚咽を漏らす。
何で自分がこんなに悲しいのかもハッキリとは分からない・・・
ただ、幼い子供ように母がいなくなるというだけで涙が溢れて止まらなかった。
そんな娘に・・・・・・ちょっとだけ困った表情を浮かべながら・・・・・
優しく頭を撫でてあげた・・・・・・・・・・。


「そうね・・・・・・・ひのめが結婚して・・・・孫を見せてくれるまでは・・・・・・・
 お母さんは絶対に死なないわ。 ・・・・────こんな・・・・答えじゃだめ?」

優しい笑みと温かい手の感触・・・そして落ち着ける声。

その声にひのめはうんうんと頷きながら涙を床に落とした・・・・。
失いたくない大事な家族・・・・・大切な母親・・・・・。
だけど・・・・・あの子は・・・・・・・・

母を失って・・・・・・・

  誰かを憎んで・・・・・

    一人で泣いて・・・・・

      それでも何も得られない・・・・・


 それを思い浮かべると大粒の涙がポロポロとこぼれて仕方がなかった。






だって・・・・・

















────────ひのめは優しい子なのだから・・・・・・・・・・・・・・


       



                        

                                    ひのめ奮闘記・第二部完

                                その35に続く


────────────────────────────────────────

あ・と・が・き

Q「最近一番焦ったことはなんですか?」
A「吉野家で注文を頼んだ後に財布を忘れたことに気づいたときです」(挨拶&実話)

いやぁ、さすが吉野家さん!!キャンセルする前にもう来ちゃうんだもんNE♪

さて、あとがきらしいことを書きます(笑)


いやぁ第二部は苦労しました。
ひのめより京華のほうがテーマが重くなりすぎやしないかとハラハラ (ノД`)
次は幸恵の過去編でもやって均等にしますか?HAHAHAHAHA!!

そうやって自分を追い込んでいく俺最高!
すいません、これ書いてるの徹夜しての午前6時なんでキャラ壊れてます(爆)




何か他にも書きたいことがいっぱいあったのに思い浮かびません。
ただ実感しているのは・・・・・・・・

ここまでやれたのも皆さんのおかげということです・・・・
やっとこ全体の3分の2くらいまで終わりました・・・・
これからも気を抜かず頑張っていくので応援よろしくお願いしますm(__)m



でも・・・・・・・・・少し休憩させて下さい_| ̄|○ ←疲れるほど書くなw

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