ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その34(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 7/23)







「そうね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・────あと4手で私の勝ちね」

「!!?」

ひのめ自信に京華、いやその場にいる全員が困惑の表情を浮かべるのだった。
相棒の心眼すらひのめのその自信に戸惑ってしまう。

(こら!ひのめ!!何、適当言ってるわさ!!)

「うっさいわねぇ〜・・・・・・本当よ。決まれば絶対に勝つ!!
 ・・・・・・・・・・・・・・・信じてよ・・・・・・あんたの力がなきゃ出来ないんだから」

息を切らしながら訴えるひのめ。
心眼は少しだけ沈黙を保つが・・・・やがてゆっくりと話しかけた。

『・・・・・・・・・・・わかったわさ。で・・・・作戦は?』

「それは・・・・・・・・・ゴニョゴニョ・・・・・で、・・・・・・・・そしたら・・・・こう・・・・・・で、どう?」

『!!!?・・・・発火能力使ってそんなこと出来るわけないわさ!!』

「成功率は一割くらいかなぁ〜・・・・・でも蛍ちゃんにも付き合ってもらったあの特訓無駄にしたくないから」

驚きで目が見開く心眼をよそにひのめはあっけらかんと応える。
絶対の自信があるわけじゃない・・・・ただ、それをやらなければ・・・そのくらいしなければ勝てない・・・
そんな気がしたから・・・・。

『はぁ〜・・・・・ま、もうあんたの勝手にしな。・・・・・・・・・・・あたしが最大サポートしてやるから』

「サンキュ♪」


タメ息交じりの心眼にウインクで応えるひのめ。
そして、京華のほうへ振り返る・・・・強い覚悟の瞳で。

「作戦は決まりましたの・・・・?」

「おかげさまで・・・・」

「そう・・・」

京華が呟くように声を漏らすとその両手が淡いを放つ。
霊力の膜・・・というのが適切だろうか、その光る両手を京華はサっと構える。

「三世院流術式・双天貫殺(そうてんかさつ)・・・・・・・・・
 この掌打を的確に叩き込むことによって相手の霊的中枢を貫く・・・・まず霊能力者としては再起不能でしょうね」

「解説どうも・・・・・いいの?そんなことペラペラ言って」

「ふふふ・・・・余裕と言って欲しいですわ・・・・」

「・・・・あっそ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・



二人の周囲に静かで・・・それでいて激しい霊圧が交差する。
観戦者の幸恵とかすみも文字通り息が出来ない・・・ほんの数秒なのだが・・・・
まるで永遠だと思える瞬間・・・緊張感がギリギリまで達した


・・・・


・・・


・・




瞬間!

ひのめが地を蹴り駆けた!

低い踏み込み・・・しかし、そのスピードは開戦当初に比べれば格段に遅い。
やはり体力は底を尽きかけてるのは間違いなかった。

「そんな踏み込みでぇぇぇ!!」

今の間合い距離は3m弱。
京華が右の掌底を叩きつけようと体をひねった瞬間。

バサァ!!

「!!?」

京華の視界を何かが塞いだ・・・・・・それはひのめの制服の上着。
さらに、

ゴォ!!

その上着が炎上し京華の動きをワンテンポ止める。
もしかしたらこれを卑怯だと言う人はいるかもしれない・・・・
しかし、京華は別に気にした様子はない・・・「戦いにおいて周囲の状況、道具を使うのは正当」だと思っているから、
そして、自分を倒すための悪あがきくらいの認識しかない。

「こんなもの!!」

京華がソレを払おうとした瞬間!

ドヒュウウウ!!

炎上した上着を貫いて現れたのは・・・

「火球!!?」

そう、いきなり眼前に現れたのはひのめ火球。
並みの反射神経と運動神経では避けれないタイミング・・・・、しかし京華は並ではなかった。

「こしゃくなぁっ!!」

バシィ!!!

先程と同じように左手でひのめ火球を弾く・・・・そして考えた。
ここまで・・・

1、上着で1手
2、上着を炎上させて2手目
3、ひのめ火球で3手目

そして、残り一手を・・・・・・視界を防ぎ全てが上体への攻撃・・・・ならば!

この間わずか0.2秒。
その結論!それは・・・

「上体へ注意を逸らして、下方からの蹴り上げ!!」

ズザァァっ!!

ドンピシャ!!
京華の読み通りひのめが炎上した上着の下、京華の足元から現れた。
その目は読まれた!失敗した!!という困惑の表情。
京華の目線とひのめの視線が交わる・・・一人は勝利を、もう一人は悔しさを浮かべながら。

「喰らいなさいっ!!」

バシュッ!!!

京華の右手の掌底がひのめの霊的中枢を確実に貫いた。
タイミングも力も完璧、京華の言うことが正しいならひのめの霊能力者としての人生はここで終わりだろう。
そう・・・・














そのひのめが本物なら。


ビュビュ!!

「なっ!!?」


京華が確実にやったと思った瞬間ひのめの体がまるで壊れたテレビのようにブレていく。
霊的中枢を貫いたと思ったその右手に感触はなく思わずバランスを崩してしまった・・・・


瞬間。



ゴンッ!!!!

鈍い音が京華の頭に響いた。
音だけじゃない・・・激痛が脳天から首まで伝わる・・・。
いきなりの状況に思考がまとまらない・・・その痛みの原因・・・それは
  
  ・・・・・ひのめの前宙かかと落としだった。

「あ・・・っ!」

・・・京華の読みは途中まで正解。
ひのめの作戦・・・それは

1、上着を投げつけ炎上させて1手目
2、ひのめ火球で2手目
3、分身を下方から本体を分身の背を踏み台にしてジャンプするで3手目
4、分身がやられたところで前宙かかと落とし

というものだった。
もちろん成功率は低い・・・まさに僥倖(ぎょうこう)というべきものだろう。
その効果は上々・・・勝ったとひのめが確信したそのとき。


ダンっ!!

京華の膝が地につくことを拒否する。
右足を力強く踏み込み左手に力を入れる、目標は着地していないひのめのガラ空きな背中。
目標を定めた京華の瞳がギラリと光った。

(まだ目が活きてる!!!)

右足を振り切ったひのめがその視線を捉えた。
ここでひのめの作戦は終わっている・・・これで通じなきゃ敗け・・・・そんな覚悟だった。
でも・・・・

(・・・・・・・・・・私だって・・・・私だって・・・・)

ひのめの目もまた死んでいない。
諦めない・・・負けたくない・・・強い気持ち、それがひのめの力だから。

「うああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」

最後の咆哮。
ひのめは着地、受身を考えない最後の攻撃、左足のかかと落としを振りかぶった。
それとほぼ同時、体をひねって溜めたバネで京華の左の掌底がアッパー気味にひのめの背へ向かう。

「おおおおおぉぉぉぉっ!!!」
「ああああああぁぁぁぁっ!!!!」


ドゴンっ!!
ドガンっ!!!


左のかかと落としと左手の掌打がお互いに入ったのはほぼ同時だった。

「か・・・・・・・・はっ!!」

特にひのめは地面に落ちる途中で喰らったせいでカウンター気味に入った。
その上に地面に受身も取れず落ちたせいで背中を強打し呼吸が出来ない。
ただ、掌打はひのめ火球を弾いたせいと左かかと落としと同時に入ったせいでチャクラを貫くとまではいかなかった。


「・・・・・・・・・っ・・・・・・・・か・・・・・・・っは・・・・は・・・・・」

ひのめが意識をつなぎとめているのでも奇跡に近い状態、
しかし視界はぼやけ、体中が軋み、指一本動かせない・・・・何とか酸素を吸おうとするがそれもままならなかった。

(・・・・・・勝った・・・・・のかな・・・・・・・・はは、もう指一本動かないや・・・・・・・・・・・・・・・────にしても)

仰向けの状態のまま視界に入るのは・・・・・・・・空。
茜色の空が・・・・・・ひのめの視界いっぱいに広がっている・・・・・。

(はあ・・・・・・・今日の夕焼け・・・・・凄いきれいだなぁ・・・・・)

吸い込まれるような紅い空に魅入ったとき・・・

ザッザッ・・・

(!?)

ボヤける視界に黒い人影が映った。
走る緊張、まさかあれで倒せないなんて・・・・絶望感と脱力感で目を閉じるひのめ。
その耳に入った声は・・・

「ひーちゃん・・・・終わったよ・・・・」

「!!?」

聞きなれた優しい声にひのめは目を開けた。
自分の背を持ってゆっくり起こしてくれる人・・・・それは。

「さっ・・・・・・・ちゃん・・・・」

まだ息苦しさが残る声で親友の名を呼ぶ。
その親友はただただ笑顔で背をさすり痛みを和らげてくれた。
ひのめはその温かさに安堵しつつも一番気になっていること口にする。

「きょ、京華は!?三世院は!!?」

『そこだわさ』

心眼の声と視線につられて目を動かす・・・そこにはひのめ同様友人に背を支えられて上体を起こす京華がいた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

声が出ない。
いや、正確には何て言ったらいいのか分からなかった。
勝った、敗けた・・・・それは分からない・・・・ただ・・・
なぜか『終わった』という気持ちだけが心に広がっていた。

「まだ・・・・・終わって・・・・ない」

「!!?」

その声にひのめ、幸恵、心眼の視線が集中する。
声の主、京華は震えた体で立ち上がろうとする・・・・だが、
脳天に二発もかかと落としを喰らえば脳が揺れまともに行動など出来ない。
現に京華も声を発するだけで一人で起き上がることは出来なかった。

「京華!!もういいよ!!これ以上傷つくのはやめてよ!!」

かすみが泣きながら京華を抱きしめる。
もうこれ以上幼馴染が傷つくところなんて見たくなかった。

「まだ・・・やろうって言うの・・・・まだ気が晴れないの?そんなに美神家が憎いの!?」

「認めない!!わたくしはあなたを認めない!!あなたを認めたら・・・私は!私はぁ!!」

ひのめの真っ直ぐな眼差し。その瞳が京華の視線と交わる・・・・
悲痛な叫び、想い・・・・・二人はまだ戦う運命にあるのか・・・と思われたそのとき。

『京華・・・・・・・・・・・・・・あんたが本当に憎いのは・・・・認めたくないのは・・・・・』

言葉を発したの心眼だった。
心の眼・・・・・・・・・それだけが京華の本心を捉えたのかもしれない・・・・・・・・・
その言葉の先に答えがあると耳を澄ますが・・・・

(・・・・・・・・あれ・・・・・目が・・・・・・重いや・・・・・・)

心眼の言葉を待たずしてひのめの視界がゆっくりと闇に染まる。
ただ・・・・・最後に聞こえたのは・・・・

・・・・自分を呼ぶ親友の声だった・・・・





                                 その34(C)へ続く

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