ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その34(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 7/23)






5月17日(月)・・・PM4:39

熱戦を終えた幸恵とかすみがお互いを支えあうようにして肩を組み、
両者の親友のもとへ駆けつけたとき見たもの・・・・・それは

「『あぢゃあああああああぁぁぁぁぁぁ───────────っっ!!!!!』」

右手を炎に包まれ叫ぶひのめと心眼の姿だった。



「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

あまりの光景に思わず目を点にして絶句する幸恵とかすみ。
やがて、幸恵はハっと気づくと、

「ひ、ひーちゃん!何やってんの!!?って水!水!はい!」

幸恵は急いで地面に落ちている自分のバッグからミネラルウォーターを取り出すとそれをひのめに投げ渡した。


ジャボジャボジャボ・・・・シュウウウゥゥゥ・・・・


小さな火が500mlの水で鎮火されていく。
ひのめは燃えたフィンガーグローブを途中で取り外したからまだマシだが、
問題は半分以上黒焦げになってしまったリストバンド(心眼)のほうだった・・・
自分の右手首を悲しみの瞳で見つめるひのめ・・・

「ああ・・・・・・このリストバンド、小学校からのお気に入りだったのにぃ・・・・」
『心配ごとはそっちかい!!!ハードウェア(リストバンド)よりソウフトウェア(心眼)を心配せんか!!』
「うっさいわね〜!あんたがちゃんと制御しないせいでしょうがぁぁ!!」
『誰のおかげでここまで使えたと思ってるわさぁぁ!!』

「はいはい、二人ともケンカしない・・・・」

やれやれと苦笑いを浮かべる幸恵に説得され矛を収める二人。
そこでやっと幸恵の存在に気づいた。

「あれ?さっちゃん、どうしてここにいるの?」

「・・・・・・・・・ひーちゃん、かすみちゃんの相手させといてそれはないでしょう」

うるうると涙を流す親友に思案顔のひのめ。
そして、ぽんっと手を叩いて笑った。

「あ〜!かすみちゃんって橘さんのことね!?いやぁ〜ほら、名前のほう聞きなれてなくて」

「言うべきはそっちのほうじゃないでしょう・・・・」

ひのめの明るい笑顔に幸恵の瞳から滝のように涙があふれ出すのだった。
そのときもう一方のコンビは・・・

「京華・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・負けたのかしら?」

「・・・ええ」

かすみは右腕を押さえながら京華の問いに短く答えた。
京華に動揺は無い、もとより幸恵とかすみの決着などに興味などないのだから。
ただ気になったのは・・・

「『かすみちゃん』・・・・・ふん、随分と仲良くなったものね」

「べ、別にそういうわけじゃ・・・・」

悪いことをしているわけじゃないのになぜか後ろめたい気持ちになるかすみ。
そっと目を逸らしてしまうのはそのせいだろうか・・・・
だけど、意を決して言ってみる・・・自分に今の京華を止めれるのか。

「・・・・・・・・・京華。もうやめにしようよ・・・・、こんなことしたって何も変わらない・・・
 例えここで美神を倒したとしてもそれで京華の気が晴れるの?
 フラウおばさんがこんなこと望んでると思うの?
 もう・・・・いいじゃない・・・・」

言い切った。
今まで言えなかった言葉・・・。京華のせいじゃない、自分自身が弱いせいで言えなかった・・・
止めれなかった・・・・下手な励ましより厳しい叱咤・・・これが今一番大事なことかもしれないと気づいた。
だから・・・・ありのままの気持ちでかすみは言ってみた。

「・・・・・・・・・」

その言葉に沈黙する京華。
さらに・・・

「そうだよ・・・・それにひーちゃんだってのうのう生きてきたわけじゃないのに!!
 三世院さんの心の傷と同じくらいひーちゃんだって悩んで、苦しんで、泣いて・・・ここまで来たんだから!!
 だから・・・・・・・認めてあげてよ・・・・」

「さっちゃん・・・・」

親友の言葉に思わず泣きどうになうひのめ。
目じりに浮かぶ涙を袖で拭き取ると・・・『あんみつ2杯おごってあげるからね』と心でつぶやいた。

(やれやれ・・・ひのめにはもったない友人だわさ・・・)

幸恵の思いやりに思わず心眼も感心する。
ひのめがここまでやれているのもきっとこの子が支えているからだろう・・・・と。
そして・・・京華は・・・

「京華・・・?」

かすみは顔を伏せて何も言わない友人にそっと手を差し伸べてみる・・・・・・が・・・

パァン!

「!!?」

その手は無情にも京華の手で弾かれる。
京華はその手を差し出した友人に振り返りもせずキっとひのめを睨んだ。
冷たさと・・・怒りと・・・そして、悲しみを込めた瞳で。

「あなた方が何と思うと言おうと・・・・わたくしの意志は変わりませんわ」

「京華・・・・」

「この分からず・・・!!」

幸恵が言葉を言い切る前にその口をひのめの手が塞いだ。
そして、心眼の言葉が耳に入る。

『幸恵・・・・あんたのひのめや他人を思いやる心、傷つけたくないという気持ちは立派だわさ・・・、でも・・・
 言葉だけで話しが通じるなら誰もテロリストになったりはしないわさ』

幸恵はその言葉に少しだけ悲しいそうな目で押し黙った。
厳しい現実・・・気持ちや言葉だけでは通じない人の心・・・・それでも・・・
幸恵のやさしい心は人を傷つけたりはしたくない・・・・だからこそ

「だから、私はさっちゃんと真友(しんゆう)でよかったと思う」

「ひーちゃん・・・・」

「でも、今だけは・・・・やっぱり戦わなきゃいけないと思うの・・・・
 そうしなきゃ・・・・きっと進めない・・・私もあの子も」

「・・・・・・・・」

ひのめの覚悟の言葉・・・・だから・・・幸恵は静かに頷くしかなかった。
その覚悟を見届ける覚悟を決めながら・・・

「負けちゃダメだよ」
「もち♪」

親友の応援に背を押されひのめはゆっくりと前に出た。

そして・・・

「京華・・・」

「そこで見てなさい・・・わたくしが正しいことを証明してきますから!」

かすみにピシャリと言い放つと京華も前に出る。
そのとき・・・・風に流れて小さな囁きがかすみの耳に入った・・・


────あなただけは私の味方だと思ってたのに・・・・────

と。
その声に・・・・・・・・・・・・・・・・ツーとかすみの目から涙が溢れた。




「ここまで来たら言葉は無意味!決着つけてやるわ!!」

「ふん!結果は見えてますけど・・・・・
 もしその火遊びでわたくしを倒そうなんて思っているのなら・・・後悔しますわよ?」

「火遊び?そっちこそ私をナメるんじゃないわよ!!心眼!!」

『了解だわさ!』

再びひのめの体に重圧がかかる、霊力上昇、思念波放出・・・・そして・・・

「発火能力開放!!」

ゴオオオオオオオオオオォォ────────っ!!!

炎が再度ひのめの右手を覆う・・・そこまではさっきと同じ・・・違うのはここからだった。

(全体に均一に霊力を流すのは難しい・・・・だったら・・・その反対の応用!!)

ひのめが心で叫ぶと右手を覆っていた炎がしだいに右手へと集束する、
いや、右手ではなく右手の手のひらへ。その炎はしだいに円状・・・球状へと変化する。
その大きさはソフトボールくらいだろうか。
火球の完成と共にひのめはニっと笑うと・・・

「いっっくぞぉ!!!」

今からひのめの取る動作を分かりやすく説明すると・・・

「ひ!」

ピッチャーひのめ・・・

「の!」

セットポジションから・・・

「め!」

振りかぶって・・・

「火球────っ!!!!」

投げたぁぁぁぁっ!!


ドシュウウウウゥゥゥッ!!!


「!!!?」


予想外の京華の目が丸くなる。
発火能力の使い方、いやたった一度の開放でここまで自在に操るその才と発想に。
その成果・・・・『ひのめ火球』が真っ直ぐ京華に向かってくる。

(速い・・・!?避けれな・・・・)

ひのめを発火能力を侮っていたため京華の回避運動が遅れる。
このままいけばモロ顔面コース・・・その光景にひのめは・・・

(やば・・・・威嚇のつもりだったのに)

と、少し焦っていた。女の子の顔に焼けどの跡はヤバいだろうと・・・
しかし・・・

「ナメるんじゃないですわっ!!!」

バシィっ!!

「なっ!?」

ひのめの不安などと一緒に火球は京華の左手に弾かれるとその火球は京華の後方を放物線を描きながらに落下した。
その衝撃に周囲の雑草と地面がチリチリと焦げちょっとしたクレーターが出来ている。
威力は・・・ある程度の霊能力者なら受けれないことはないが・・・

(つっ・・・・わたくしの手を痺れさせるなんて・・・・)

余裕の表情で取り繕ってみるが、腕を組んでごまかしている左手の痺れはまだ少しの間とれそうにもなかった。
でも・・・その時間を稼ぐ必要もない・・・なぜなら・・・


「はぁはぁ・・・・ぜっぜっ・・・はあはあ」

京華の対戦者は片膝を地につきながら大きく肩で息をしている。
もう体力も霊力も限界を超えている、いや京華とここまで戦えただけでも今のひのめには奇跡に近いだろう。
でも・・・・まだ決着はついてない・・・・ひのめは残った気力で何とか起き上がった。
そのとき・・・・

ヒュウウウウウゥゥゥ・・・

と、一陣の強風が二人の間に吹き通った。
そして・・・

パサァ・・・

その風に流されバッグにかぶせてあった制服の上着がひのめの目の前に着地する。
疲れで重くなるまぶたを必死に開けそれを目で追うひのめ。
そして、その瞳がカっと見開いた。

「そろそろ終わりですわね・・・・・」

「そうね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・────あと4手で私の勝ちね」

「!!?」


ひのめ自信に京華、いやその場にいる全員が困惑の表情を浮かべるのだった。





                                その34(B)に続く













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