ザ・グレート・展開予測ショー

やかま椎やつら(11話目)


投稿者名:ライス
投稿日時:(03/ 7/23)



 やかま椎やつら


  第11話 たのしひ甲子園!!(前編)




 暑い夏はまだまだ続く……。



 ココは甲子園。そして今、正に決勝戦が行われようとしている…… 。



「アッツゥ〜〜ッ!!なんでったって、こんなに暑いんだ!!」


 バックスタンドに何故か横島が。
 横島だけではない。横にはルシオラがいるし、ピートもタイガーも愛子も夏子もいる。そして、学校の同級生の面々も。

 何故か?

 答えは簡単である。

 彼らの高校が出場しているからである。

「そこ、ご都合主義だとか突っ込まないようにね!!」

「……誰に向かって言ってるんだ?愛子……。」



 ウゥ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!



「プレイボール!!」


 号砲のサイレンに、審判の声。
 決勝戦は始まった。
 横島の高校の相手は……、



 新潟代表、私立水島学園。



「ん?聞き慣れん高校だなぁ……?」

「最近出てきた、スポーツ中心の私立高校みたいですね。特に野球に力を入れてるようで、まだ創部して三年しか経ってない、新興の野球部らしいですよ?」

 ガイドブックを開きながら、横島の問いに答えるピート。
 それはともかく試合は進行する……。



 カキーン、カキーン、カキーン!!

 ズバン、ズバン、ズバン!!



 空を飛び交う白球。
 地を駆け抜ける白球。

 そして空を切るバッドの音。



 気が付くと、スコアは99−0の圧倒的大差。



 もちろん、どっちが負けているのは説明するまでもないだろう。



「…………妙に、大差がつきすぎてるんじゃないか?」

「えぇ。」

「というか、さっきから相手側のバットが振り回されるたびに、妖気を感じるのは気のせいか…?」

「えぇ。ピッチャーのグローブからも感じられますね。というか、横島さん、分かる様になったんです

か?」

「あぁ、まぁな……。」


「…………」

「…………」


「………さぁて、俺は帰るか。いくぞ、ルシ……「そうはさせないわよ!?」」

 横島の言葉をさえぎる者。
 蛇のように巻きつく縄。
 そして、横島は縛られる。

 縄の主は美神であった。

「………なんでいるんスか!?」

「なんでって、仕事に決まってるじゃないの?ほら、アレを見なさい?」

 そう言って、彼女は双眼鏡を差し出した。

「相手側のバットとグローブを見て。妖気を帯びているでしょう?」

「えぇ、アレは何なんです?」

「妖怪バットとグローブよ。甲子園に行けなかった球児達の無念が長年積もって、具現化されたのね。とにかく、並の人間が持っていると危険だわ。水島学園は今まで驚異的大差で勝ち進んできたわ、それを怪しいと踏んだ高野連が私に依頼してきたってわけ。」

「で、どうするんです?」

「……今対戦してるの、アンタの高校よね?」

「えぇ。……まさか!?」

 美神の方を見る横島。彼女はニッコリ微笑む。逃げようにも既に捕らわれの身であるから、抵抗は無駄だった。

「さ、行くわよ?皆も付いて来て!」


















 で………。











『……高校、選手の交代をお知らせします。ライト田山君に代わって、西条君。センター西川君に代わってピート君……』


 次と変わる選手。中にはこんなのも……。



『レフト山村君に代わって、あ、愛子さん?ショート本宮君に代わって、えぇ?か、河合さん(夏子)!?』



 どよめく球場。それもそのはずだろう。何せ女性が選手なのだから。


 しかし、そのどよめきは終わらなかった。



『ファースト寺原君に代わり、タイガー君。キャッチャー八島君にかわり、横島君。ピッチャー桑本君に代わりぃぃぃぃぃぃぃ!?え、ほ、ホントですか、コレ?』

『バッ、バッカヤロウ、さっさと言えばいいんだよ!?って、スイッチ入れたまま喋るな!!』

『ハ、ハイィィィィ!?』

『………ゴ、ゴホン!し、失礼いたしましたピッチャー桑本君に代わり……………』

















『………ルシオラさん!!』













 一瞬、球場全体が凍りつく。
 暫くの静寂、そして観客のどよめきが起こす地響き。












 ユニフォーム姿の彼女は、グローブを左手に、悠然とマウンドに立っている。






 そこへキャッチャーになった横島がやって来た。そして彼らはミット越しに会話をする。



「どーして、私がピッチャーなのよ?」

「知るかよ……、美神さんに聞いてくれ。」




 強い日差しで、ゆらゆらと陽炎が立ち昇るスタンドを逃れるかのように日陰のあるベンチの中では、野球帽を被った美神が、睨みつけている。


 つまり、こう言っているのだ。




「私の命令に逆らったら、タダじゃおかないわよ?」と。




「…………。と、とにかくヨコシマの構えるミットに投げればいいのよね?」

「あ、あぁ、あんまり思いっきり投げるなよ?」

「分かってるわ。でも、優勝がかかってるんだから、あんまり手を抜いてもいられないわね?」

「うん、まぁ、そりゃそうだが……。」

「…………勝つつもりないの?」

「いや、そんなこと……。」

「なら、勝ちましょう、ね♪」



 ポンッとグラブで横島の胸を叩いて微笑む彼女。



 それを見て、微笑み返す横島。



「そうだな……、イッチョやってみるか!!」



 彼はバスンッとミットを叩き、ホームへと戻る。


 そして、試合が再開される。















「…………女がピッチャァーだとぉ〜〜!?ナンめるのいいかげんにしや〜れ!!」

「そう、カリカリするな……。こっちは勝ってるんだ。このまま、逃げ切れば、こちらのものだ。」

「だが、気に食わんな、あっちはひぃ、ふぅ、みぃ……、7人も変えてきたんだぞ?」

「なぁに、こっちが勝つことには変わりないさ。九回の攻防だけで、試合をひっくり返せるものか。」

「そうだな……。」











 

 不穏に囁く相手側のベンチ。
 そして不敵に笑みを浮かべる野球部の面々。
 その湧き出でる自信は過信か、それとも……。












 そして……、壮絶な最終回の攻防戦が今、始まる。







 ………え、続くの?  

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