ザ・グレート・展開予測ショー

神よ、私はあなたを求める


投稿者名:華藍
投稿日時:(03/ 7/22)


夕日が一筋室内を照らすのみの、薄暗い教会の中。十字架の前で、二人の男が向かい合っていた。

「さあ、西条くん。その胸の内の悩みを打ち明けてみなさい。神は必ず君を救ってくださる」

「それが、その……。僕の悩みというのは、その神についてなのです。唐巣神父」

「何、神についての悩み、かね。それは一体どのようなものなのかい」

「神父。なぜ、神の恵みというものはこれほどまでに不平等なのでしょうか。神に対する愛のないもの、悪徳に満ちたものが、なんの疑問もなく神の愛を享受しているというのに、敬虔なもの、善行をつむものたちは、必ずしも恵まれた人生を送っているわけではない。かような理不尽をなぜ神はお許しになるのでしょうか。神を信じることにいかほどの意味があるというのでしょうか」

「不平等、か。若いね、西条くん」

「若い……、ですか。この思いは時を重ねれば解決されるとでも?」

「私も若い頃は君と同じ疑問を抱いたものだ。なぜ、神の恵みはかくも不平等なのか。なぜ私はこんなにも神を愛しているというのに、こんなにも恵まれないのだろうか、と。一時は信仰を捨てようとすら思ったよ」

「それで? 神父はどのようにして信仰を取り戻したのですか?」

「西条くん。確かに一見神の愛は平等ではないように見える。だがね。これは我々に対する試練であり、神の愛の一つの形でもあるのだよ」

「試練……ですか?」

「そう、試練だ。私は数十年欠かすことなく、信仰と愛を神にささげ続けきた。バチカンに破門されようと、貧困にあえごうと、だ。辛く厳しい日々だった。だが、神は私の信仰をお認めになってくださったのだ。ある日、私はあれほどまでに望んでいた神の恵みを授かっていることに気付いた。その時の喜びは、なんと言ったらいいのだろうか。とても口では言い表せない」

「はあ……」

「もし私が最初から恵まれた者であれば、このような喜びは決して得られなかっただろう。神は私の信仰を信じ、試練を与えてくださったのだ。そして、私は神の愛をうけ、私の心は満たされた。これに勝る喜びなどあろうか。君も同じだよ。西条くん。神は君の心を信じ、試練を与えてくださったのだ。大丈夫、君ならばきっと神の試練に応えることができるはずだ」

「神父、僕は、神の恵みを授かることができるのでしょうか」

「信じたまえ、愛したまえ、祈りたまえ。神は君を決してお見捨てにならない。君の真摯な祈りは必ず神に通じる。さあ、聖水を振り掛けてあげよう。頭を出したまえ」

「はい」

聖水の飛沫は、夕日の光を受けて、まるで至上の宝石のように輝いていた。












数日後。

「は、生えてきている! さすが、唐巣神父特製の聖水、すさまじい効き目だ。おお、髪よ……」

そこには、頭部に神の恵みを授かった、一人の神の僕がいた。



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こんばんは。華藍です。
西条救済SS、のつもりが、なんだか止めを刺してしまったような気がする今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。
私はキリスト教には疎いので、唐巣神父の説教がキリスト教的にいろいろおかしいと思いますが、唐巣神父の額よりも広い心で許してくださると幸いです。

最後に。
前作『あなたのあだな』に感想を下さった方々、ありがとうございました。皆様に、神のご加護のあらんことを。

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