ザ・グレート・展開予測ショー

『キツネと仕事とウェディングと その3 後編』


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 7/20)



〜キツネと仕事とウェディングと その3 後編 〜



衝撃。

直撃は避けたものの、タマモの体は、高速で壁際へと跳ね飛ばされていた。

(・・・・・強い・・!・・)

激突のすんででなんとかブレーキをかける。

「敵」は、服の埃を払いながら、悠然と立ちふさがり・・・。

タマモは・・徐々に自分が、追い詰められていくのを感じていた。
幻術で目を眩まそうと、炎で急所を狙おうと・・・
敵の勢いは止まらない。

まるで・・攻撃など気にも留めないかのように、一直線に加速して・・、


「・・・・っ!!」

間髪で蹴りをかわす。

「・・・フン。さっきまでの威勢はどうした?」
男は・・侮蔑を表すかのような視線をタマモに向けた。




――・・状況は最悪だ。
まず、速さの桁が全く違う。
背後を取る方法など思いもよらないし、・・また不可能だろう。


(・・何より・・)

タマモは、チラと目を移した。

確かに蹴りはかわしたはず・・・、だというのに深々とえぐられた右肩がそこにある。

(・・風圧で斬った・・?・・正真正銘の化け物じゃない・・)


早く血止めをしなければ、本当に命を落としかねない。
タイムリミットは・・・・少ない。


・・・・。


「・・少々がっかりだよ。
 もう少し楽しめると思ったんだが・・、所詮、土着の妖魔などこの程度か・・。」

言葉とは裏腹に心底嬉しそうな顔をする男。
自慢気な瞳とともに、

「私はこれでも元、天使でね。だからこそ表向きはこんな仕事をしているのだが・・。
 ・・やはり地を這う貴様らとは格が違うか・・」

舌なめずりする。


・・・・・・・。


「何か勘違いしてるみたいね。」

「・・・何?」

不意にタマモが口を開いた。

「私は妖魔である以前にゴーストスイーパーなの。
 格がどうとかなんて興味ないし・・、私一人が特別強い必要もない。・・仲間がいるから。」


「・・・・。」

彼女は男を睨めつけて・・・、彼は少しだけ・・、ほんの少しだけ狼狽する。



それは・・まだ失うことを知らない者の台詞だった。
仲間を信じて疑わない・・、なにかを守りきれなかったものには決して吐けない台詞。
単純だが・・・・しかし、強い・・。



「・・ゴーストスイーパー・・?九尾の狐の転生である貴様がか?
 人間が仲間とはなかなか笑わせてくれる・・。」

内面の同様を隠すかのように、男は唇を吊り上げて・・・。


「ごたくはいいから、花嫁がどこにいるか教えて。早く助けてあげたいの。」


「・・・・この・・・!!」

震えなど微塵も感じ取れない少女の声。




・・侮られている?たかが妖狐に・・堕天使である自分が?
この私が取るに足らない存在だと・・?


・・そんな考えが頭をよぎり、それは・・・悪魔の激情に火をつけた。

「・・・・もういい・・。今、その口を黙らせてやる・・。」

憎々しげに顔を歪め・・。
彼の腕には強大な霊波が渦巻いている。

「・・・・!」

「私のコレクションに加えたかったが・・残念だよ・・。」


そう締めくくられた言葉とともに、霊弾が解放された。

轟音。突風。閃光。
『死』という旋律を奏でる様々な要素が部屋を支配する。



・・逆巻く波動を目にしながら・・、何故かタマモの心からは沸き立つものが消えていた。

多分、自分は助からないんだろうなぁと・・、ぼんやりそんなことだけを考えていた。


(・・・こんなことなら・・戸棚の油揚げ・・残さないで全部食べておけばよかった。
 美神さんとも、もっと話をしたかったし・・、おキヌちゃんの料理も、もっと食べてみたかった・・。
 ・・・あのバカ犬は・・今ごろ何をしてるのかな・・。)


・・死ぬというのはこういうことなのだろうか・・?
次々に大切な人たちの顔が目の前に浮かんできて・・そして結局は消えてしまう。

・・何も見えなくなってしまう。




(・・・横島・・・。)


最後にたった一つだけ残ったのは・・、
どうしようもないほどバカで、スケベで、鈍感な・・・しかしとても優しい青年の笑顔で・・。

(いやだよ・・・。もっと・・もっと一緒に居たいよ・・・。)

タマモは・・、
彼の姿が見えなくなることに・・、彼の声が聞こえなくなることに・・、どうしようもない恐怖を覚えた。


自分は・・まだ何も言えていない。
何も伝えられていない。
何も・・




・・・・。

無機質の床に・・、

そこに・・たった一滴、雫が落ちて・・。

タマモは意識はそこで途絶えた。








          
                ◇











・・・・。



・・・・・・・・・。


・・・・・?・・・・・・。


確定したはずの死。
避けることが出来ないはずの死。

それが・・どれほど経とうと訪れないことに・・、タマモは大きく目を見開いた。


――・・・・。


「うお・・何、観念してんだよお前は・・。らしくねぇぞ。」

素っとん狂な声があがって・・・、
そこに見えたのは・・幻ではなく現実に手を差しのべる『彼』の姿であり・・・。


「・・・横島!!」

叫んだ名には涙声が混じっていた。

「悪りぃ・・。少し遅れちまったな・・。すぐに片付けるから待ってろよ・・。」

・・いつもの顔で少女の頭を撫でた後・・、ジャケット脱いでかけてやる。


「・・・あ・・・。」

「・・今はそれで我慢してくれ。
 オレとしては感動の再会から熱い抱擁へ・・・って展開も捨てがたいんだが・・。」

・・・。

「そっちの依頼主に・・借りを返しておかないとな・・・・。」

そう言って・・、横島は静かに後ろを向いた。

                     ・
                     ・
                     ・

「良かったじゃないか・・。『今回は』間に合って・・・・横島忠夫君?」

「・・・黙れ・・・・。」

お互いの視線が怒りとなって交差する。

・・うっすらとだが、朝日が差し込み始めていた。

「もう誰も・・オレの仲間は殺させない。」

「人間が・・。」



――・・知らせる合図も鐘もなく・・・闘いの幕が静かに上がる。




〜その4へ続きます〜




『あとがき』

余談ですがタマモはドレスを着ながら闘ってます。動きにくいでしょうね〜
ラブもコメディもなく・・、ひたすらバトル・・・。あれ?こんな話にするつもりは・・(爆)

残すところこのお話もあと2回となりました。
来回は横島くんのバトルですが・・・うちの横島『文殊を使って超加速ができます(核爆)』

それにしても・・さわてぃさん大正解です〜(笑)

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