ザ・グレート・展開予測ショー

Be Be Strong!!


投稿者名:gooday
投稿日時:(03/ 7/19)


 「ち、ちょっと自分で焼いてくださいよ。」
 鷲塚は山瀬が狙っていた肉を箸で摘むと、ひょいと口に運んだ。山瀬は文句を言いながら、皿からいくつか肉をとり網に置いた。ジュージューと香ばしい匂いが漂う。こんなところで話すのかしらと美智恵はあきれた顔を見せていた。この小さい店の中は家族連れや仕事帰りの会社員達で溢れかえっている。ここの肉は某有名牛を取り扱っている店で値段もそこそこ高い、しかしその値段に以上の味があった。
 「ほら、それ焼けてますよ。」
 美智恵の前に置いてあった骨付きカルビは、すでにこんがりと食べごろになっている。
 慌てて自分の皿に肉を入れた。
 「ここの店は穴場なんですよ。」
 「はぁ〜。」 
 すっかり毒気が抜かれてしまい、美智恵は自分の口に肉を運んだ。
 「ほらこれなんかも、もう焼けてる。」
 鷲塚は再び肉を摘み、自分の口に放り込んだ。
 「あーーまた!!」
 横で山瀬が涙を流していた。
 完全に出鼻を挫かれた、すでに相手のペースに引きずり込まれ、気分直しにジュースに口をつけた。そして黙々と欠食中年のように肉をむしあさっていた鷲塚を注意深く見ていた。
 突然箸を止める鷲塚。
 

くる!、美智恵は心構えをした。












 「やっくん!もうカルビもう一皿追加!!。」
 
 鷲塚は空いた皿を上に高く持ち上げ、調理場に向かって叫んだ。

 ズルッ

 「あっ、肉の追加一つでいいですか?」
 
 「け、結構です。」











 「ふぅ〜〜」
 鷲塚は満足したかのように腹を押さえている。それとは逆に山瀬は未だに肉を食べ続けていた。理由は簡単だ、山瀬の焼いた肉の大半は鷲塚の胃にはいっているからだ。まだ食ってんのかと言われ、恨めしそうな顔をした。美智恵も久しぶりに量を食べて、体重計がすこし怖い。店員が食後のゼザートに頼んだ柚子アイスを持ってきて、鷲塚の前に置いた。
 「で?」
 いきなりの彼の問いかけに美智恵は意図がつかめなかった。
 「いやほら、貴方たちが彼を仕立て上げた理由ですよ。」
 山瀬は食べるのをやめ箸を置いた。
 「何をおっしゃっているんですかよくわかりませんが?」 
 「……………ほ〜、貴方でさえ知らないということですか。」
 「何がですか?」
 美智恵は鷲塚の言わんとしていることが全く解らなかった。しかし一つだけ、横島の話をしているというところだけ知った。
 「あなたの知っていることを教えていただけませんか。」
 美智恵は何かを知っている様子の鷲塚に問う。
 「その前に………あのアシュタロスを倒したのはオカルトGメンの西条輝彦と貴方の娘さんじゃなかったんですかね?」
 目を大きく開いた。何故彼が知っているんだ……彼くらいのヒラ刑事が知っていて良い情報じゃない。美智恵はハンドバックに手を伸ばした。それに気づいた山瀬は体勢整えた。
 「変に警戒しないでくださいよ、こっちは丸腰なんだから。それと俺は本人からこれを聞いたんですよ。」
 鷲塚はスプーンを口に咥えながら笑っている。
 「あなたの知っていることを何としてでも全部教えてもらいます。」
 「ギブ&テイクですよ。」
 「……お幾らかしら。」
 美智恵は鷲塚の求めているものを即座に判断すると、心の中で嫌悪しながらも単純な男でよかったと喜んだ。しかしその喜びは鷲塚の次の言葉で消えうせた。
 「ここの代金と、即金で300万、それと忠夫くんのことについて貴方が知っていること。」
 「えっ?」
 「それから忠告を一つ。この件は自分の組織の動きを把握できない奴の問題じゃない。」
 「なっ!!」
 「山瀬。お前もこの件を降りろ。」
 「えっ、どういうことですか!?」
 山瀬は自分に振られたのに驚きを隠さなかった。
 「三日しかない、それを過ぎたらGAMEOVER。手は一つしかないってことだよ。」









 一ヶ月前のことを思い出していた。あれから『辞職願い』を受け取った上司は非常に残念そうな顔をしたが内心は小躍りを踊りたくなっていたはずだ。鷲塚は家のソファーに寝転びながら上司との会話を思い出していた。
 

 『君が責任を取る必要はないのだよ。』
 
 『しかし、ミスで彼を逃がしてしまったのは俺ですから。』

 『そうか…これからどうするんだい。』

 『昔の職業に戻りますよ。』

 『探偵業にか…君にはそれがあっているのかも知れんな。』

 『でわ失礼します。』

 何よりも憤慨したのが今年で19になる娘の希だ。自分の父が職を失ったことを知り、烈火のごとく怒り狂った。その怒りは山瀬にもいき、二週間あまり口を聞いてくれなかったらしい。そう電話越しでそうぼやいていた。

 鷲塚は時計を見た。 2:00ちょうど、もうそろそろ定時報告の時間である。
 そして電話が鳴った。
 
 「子犬探しから浮気調査まで、ラーメン以外なら何でも引き受ける鷲塚探偵事務所です。」
 「チャーシューメンお願いします。」
 電話越しに小さい声が聞こえる。
 「チャーシューメンは何味ですか?」
 「醤油バターのこんがり風味で。」
 声の主が目的の人物であることを確認する。
 「で船は乗れるのかい?」
 「やっとOKもらえました。」
 「調子はどうだい。」
 「まぁ落ち着きました。」
 「そうか、だが気を抜くなよ。」
 「はい。」
 「二年後だ。 ラーメンでもまた食うか。」
 「カツ丼でお願いします。」
 「くははははは、わかったよ。特別美味しいカツどん屋探しといてやる。」
 「ほんとにお金も工面してもらったり、いろいろありがとうございました。」
 「まぁ、そりゃ俺の金じゃねぇからな。じゃぁ元気でな。」
 「はいっ!」

 電話を置いた。そして再びソファーに横たわった。もうそろそろ娘がデートから帰ってくるはずだ。相手は山瀬だが、何か面白くない。鷲塚は胸ポケットから煙草を取り出すと火をつけた。突然、人の気配が自分の真後ろでした。振り向こうとするがすでに遅く、頭に銃を突きつけられていた。
 
 「横島忠夫を何処へやったの?」
 「っ!……………遅かったな。」
 「今から聞けばいいことよ、鷲塚恭介。」
 「そうだな…タバコ吸い終わってからでいいか?」
 「最後の一本でいいならね。」
 ふ〜っとため息をつくと灰皿に吸い始めたばかりの煙草を置いた。
 「はやく言いなさい、彼を何処へやったの?」
 「あ〜〜なんだ…………お前らが絶対行けないところだよ。」
 「何処かしら?」
 「天国さ。」

 無常にもサイレンサーのシュパっという軽い音がした。

 
 


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