ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER DAYS!!(15)<心を受け取ると書いて>


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(03/ 7/19)



(頼むぞ、聖剣ジャスティス。
 お前に僕の全霊力を……託す。そして願わくばたった一度だけの奇跡を…………っ!!!!)

(………いわば今の西条殿は手負いの獣。
 そして誰かを護るために戦う者は何よりも強いでござる!!
 殺らなければ…………殺られるっ!!!!)





「「ウオオオオオォォォォォ…………!!!!!」」


二人の咆哮によって辺りの空気がビリビリと震える。
一瞬の静寂。そして………

「いくぞっ!!!!」

西条が大きく一歩を踏み込みジャスティスを振りかぶる。

(くっ………
 やむを得ないでござる……すまぬ!西条殿っ!!)

西条がくり出す渾身の一撃にカウンターで斬り込もうとシロが霊波刀を構えた時
シロの脳裏に今は亡き父の言葉が思い浮かんだ。


<シロ……焦ってはいかんぞ。
 焦りは迷いを生み、迷いは刀の輝きを鈍らせる。>


それは在りし日。
まだシロの父親が健在だったころ……



〜回想〜

「シロよ。
 『命を斬らずして心を斬る』とはどういうことか分かるか?」

父と剣術の稽古をしているとき
師としての厳しい顔の合間に見せる父親としてのやさしい顔。
やさしいやさしい・・・・大好きな顔。

「な、なぞなぞでござるか?父上……?」

困惑したシロの顔。
命を斬らないで心を斬る?
何がなんだかさっぱり分からない。

「ハハハハ……
 なぞなぞか。そうかもしれんな。
 何せこの人狼の歴史の中でほとんど解けた者がいないのだからな。
 ……実はコレは人狼の里に伝わる剣の極意なのだ。」

「ほとんど…でござるか!!
 それでは父上はその極意を掴んだでござるか!?」

シロが目を輝かせながら父親にせまる。
父上の目がいっそう優しくなった気がした。

「ああ。
 ワシはおぼろげながらも極意が見えてきたぞ。
 とは言ってもつい最近の話だがな……お前のおかげだ。」

「拙者の………おかげ?」

キョトンとした顔で不思議そうに答えるシロ。

「そうだ。お前のおかげだ。
 相手を深く理解し受け止める心。大きくやさしい心が大切なのだよ。
 お前という大切な存在ができたおかげでワシも大きく一歩前に進むことができた……
 ………いいか!?焦りは迷いを生み、迷いは刀の輝きを鈍らせる。
 焦りは禁物だぞ!!」





(…………父上。拙者はまだまだ未熟者でござるなぁ。)

もうシロの表情に迷いは無い。
澄んだ瞳をしたシロがそこに立っていた。

「そこだぁっ!!!!」

西条が斬りかかったその剣先がシロを捕らえようとしたその瞬間………



一閃!!


「ば、ばか……な……」

ドサッ

シロの霊波刀が西条の身体を貫き
西条は前にのめり込むようにして倒れていた。

その傷口からは鮮血が噴き出……………ない。噴き出ない!!
西条の身体からは血が噴き出るどころか傷一つすら付いてはいなかった。

「………命を斬らずして心を斬る。
 すなわち、いっさい肉体を傷つけることなく
 霊的中枢のみに斬撃を与えることが人狼の里に伝わる剣の極意でござる。
 命に別状はないでござるがしばらく動くことはできないでござるよ。

 ………………西条殿?『心を受け止める』と書くから『愛』なんでござるよ。
 自分の押しつけすぎではござらぬか……?
 心を与えてるばかりでは愛とは呼べぬでござるよ。
 もう少し横島先生や美神殿を信頼して下され。お願いにござる。」


「ははは………
 まさかシロ君にそんなことを言われるなんてね………
 しかしそれでも大人には譲れないモノがあるんだ。
 僕は自分の決断を後悔しないよ…………」


この言葉を最後に気絶する西条。
最後まで自分の信念を貫き通したのだった。


「せんせい……
 拙者もこの傷ではせんせいを追って神界に乗り込めなさそうでござるな………
 せんせいの御武運を祈ってるでござる。」


星を見上げながらつぶやくシロ。
シロの受け取った心は西条に伝わったのだろうか………


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa