ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER DAYS!!(14)<剣の如き心>


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(03/ 7/19)



殺せないでござる。
―――――殺せるわけがないでござろう。


次から次へとシロの脳裏に横島クンの顔が浮かぶ。




散歩に付き合ってくれるせんせい。

  一緒に走りながら頭をなでてくれるせんせい。

    ヘマをしても一緒に美神殿に謝りに行ってくれるせんせい。

       疲れた顔をしても結局、毎日一緒に走ってくれるせんせい。




西条殿を殺すなんて事になれば先生を裏切ることになる……
先生の笑顔が目の前で凍り付いたら―――――拙者は……拙者はっ!!!!


「どこを見てるんだい!?君にそんな余裕があるのか?」

シロが我に返るとすぐ目の前に西条の姿があった。

右脚に怪我を持ってるとは思えない踏み込み。
そしてその勢いをそのままに豪快にジャスティスを振り抜く。


ギィン!!


シロが受けた霊波刀から激しい火花が飛び散った。
間違いなく本気の斬撃。―――――殺すことが本気の斬撃。


(くっ………!!鋭い斬撃でござる。
 力量は互角と見た―――――それならば西条殿が負っている右足の傷の分だけ拙者が有利っ!!!!)


今度はシロが間合いを詰め、霊波刀を振り上げる。

―――――狙いは左脚。
霊力を調節して一点に霊力を絞り込む。
骨の1,2本は覚悟してもらうことになるがコレで一気に片を付けるっ!!

疾風の如く駆け抜けるシロ。
風を切り裂き、その剣先の速度は音速にも達する。


ダンッ!!!!


……が、その刀は西条まで届かなかった。

目の前には地面が広がっている。
右脚が熱い。いったい何が起こったのか分からない。


拙者は…転んだでござるか………?
右脚が熱いのは………これは銀の銃弾っ!?!?


シロの右脚には銃弾痕のようなものが・・・
しかも超回復力を誇る人狼が傷を受けたにもかかわらず
ほとんど回復しない所を見るとやはり銀の銃弾しかあり得ない。


「まずは君の機動力を封じさせてもらった。
 ………僕を卑怯だと罵ってくれて構わない。
 横島クンを捕らえる、すなわち令子ちゃんをこの件に巻き込まないためには
 喜んでこのプライドを捧げよう!!
 コレで条件は五分……しかし君の迷いのある刀では決して僕を斬れまいっ!!!!」


雨のように降り注がれるジャスティスによる斬撃と銀の銃弾のフルオート連射。

それを必死にかわすシロ。
さっきは不意をつかれたが用心しておけば直線的な動きの弾丸など
人狼の超感覚を持ってすればかわすことはたやすい………はずだった。


さっき撃たれた右脚がまるで燃えてるように熱い。
体が鉛のように重い………弾道は見えているのに身体が思ったように反応してくれない。

………だが、痛みを介する暇があるわけがない。
次の一撃に備えて神経を研ぎ澄まし、最大の集中力を引き出す。


「これしきで………倒れる拙者ではござらんっっっ!!!!」


ザクゥ!!


これ以上ないと言えるタイミング、これ以上ないと言える集中力、これ以上ないと言える出力。
すなわち、現在シロが放つことができる最高の太刀筋で放った斬撃だった。

その太刀筋なら西条ほどの達人でも昏倒、並の者ならその場でショック死もあり得るほどの威力……




「どう……したんだい………?これで…終わりかい……?」


だが西条は立っていた。
執念とも言えるその信念ゆえに。信仰とも言えるその目的の為にっ!!


ガッ


左肩から袈裟の部分を斬られ、鎖骨も砕けているであろう状態から
その左腕でシロの霊波刀を掴み動けないように固定する。
そしてさらに残った右腕でジャスティスを構え、振り下ろす。

無論そんな体勢で強力な斬撃が放てるわけもないが
それでも振り下ろす。
振り下ろす!振り下ろす!!振り下ろすっ!!!!

もはや剣で斬ると言うより
鉄の棒で殴る、あるいは叩くと言った方が適切かもしれない。
それでも振り下ろすことをやめない。


―――――すでに決定的なダメージを受けている西条に
          残された攻撃はこれしかないのだから。―――――




「ぐっ…………まだまだぁ!!」

だがシロもただやられている訳にもいかない。
その場で霊波刀をひねり霊波刀を固定している西条の左手を弾く。

唯一残された攻撃を防がれた西条。
霊波刀に弾かれた左手、砕かれた左肩に走る激痛も無視して
そのまま右手に構えたジャスティスで打突を放つ。


(こちらの方が一瞬早いっ!!!!)


西条の考えは正しい。

シロが西条の左手を弾くために使ったのは右腕………
すなわち霊波刀が放出さえている方の腕である。
左腕で霊波刀を使えない以上、
西条が右腕に構えたジャスティスの方が一瞬早く届くはずだからだ。


――――――――――相手が普通の人間ならば。



ギィン!


西条の練りに練った策による一撃を難なく右腕の霊波刀で防ぐシロ。

極限にまで研ぎ澄まされた人狼の集中力。
『一瞬早い』程度の時間差なら動作もなく
その差を埋める―――――あるいはひっくり返すことも可能だろう。
この不公平かつ理不尽さが戦いなのだ。


最後の策も失った西条。
普通ならこの場で心が折れても不思議ではない。

だが、信念を宿した心は
決して折れることはない!!決して曲がることはない!!!
まるで傷だらけの腕の中で輝く聖剣ジャスティスのようにっ!!!!


西条の眼はまだ輝きを失っていない。
だが策があるわけでもない。
―――――ならば捨て身の一撃に頼るしかない。1%未満であろう可能性を信じて。






二人の間を静寂が支配する…………

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa