ザ・グレート・展開予測ショー

Be Be Strong!!


投稿者名:gooday
投稿日時:(03/ 7/18)

横島は前に座る男の放った質問の意味を解りかねていた。それを察知した山瀬が
言葉を付け加えた。
 「あのですね、逮捕状があなたに対してでたのは事実です。しかしあなたの事を詳しく調べてみた結果、私たちはあなたがそんな大それたことをしようとしたなんて信じられないんです。それでこの件の元を内密に探ってみますとあなたが首相暗殺を企んでいるという情報がきたのは.....」
ちらっと横目で喋っても良いものか判断を委ねるように鷲塚を見る。彼はこくりと頷いた。
 「情報はどうやらオカルトGメンの方のほうかららしいんです。 警察とオカルトGメン、お互い反目しあっている組織にも拘らずこんなことはあるというのはおかし過ぎるんですよ。 それで私たちはこれは何かあると考えているんです。」
 「あ〜なんだ、例えばだ。忠夫君は見てはいけないものを見てしまったとか、その、なんだ、国がやばいと感じるものを持っているとかだな。そういうやつだ。」
 彼の言いたいことは理解したが、あまりにも唐突すぎで、しかも自分にとってスケールの大きい問題すぎて心当たり探す気にもならなかった。
 「馬鹿らしい、俺はただの高校生にすぎないんだ。」
 横島は鷲塚の口をまるで自分の口と錯覚に陥りそうになった。鷲塚は横島の反応をみて煙草を咥えながら笑みを浮かべる。 
 「こちとら25年も刑事生活してるんだ。人の表情で少しはそいつの考えていることが読めるんだよ。」
 慌ててパッと両手で顔を隠した。横では山瀬が笑いを必死に堪えている。
 「でも、お上はそうは考えてくれてね〜らしいぞ。三日後だ......ある友人から聞いた話によると忠夫君の輸送要請がくるのは三日後らしい。部屋にあった爆弾やらこれやら、ここまで綿密な計画が立てられているくらいだ。」
 友人という言葉に山瀬は渋い顔をして頭を振った。山瀬は上にいるエリート達に多く友人を持っている。もともと山瀬はエリートコースを彼らと共に歩んでいたのだが、あるきっかけで挫折をしてしまったのだ。しかし未だに彼らとは交友関係にある。そのつてを鷲塚に使われたのだ。
 「でも、ほんとに心当たりがないんすよっ!」
 大きく声を出したため、頬に軽い痛みが走る。
 「困りましたね……では、ここ最近あった話を隅から隅まで聞かせてくれないですか。」
 首を縦にふった。



 「どういうことよ!!」
 美神はニュースを見て数秒固まった後、美智恵に詰め寄った
 「私にいわれても困るわ。」
 朝知ったばかりだからといい、襟首を掴んでいる手を払った。何事もないようにニュースは依然として続いていく。未成年者なので名前は出されていないが、彼のアパートや学校、そしていま拘留されている警察署がモザイクをつけて映されている。
 「横島君がこんな事するはずないじゃない。」
 手に持っていた万年筆がボールペンであったのならば、既に折れているであろう。感情をむき出す彼女という存在のおかげで逆に美智恵は冷静に物事を考えることができた。このことを知りまず事務所に訪れたのはその理由があってのこと
もある。あることを思いついたように美神が電話をかけようと受話器を上げた。
 「あ、もしもし〜〜さん、私よ、みか!」
 ツーツーツーツー
 突然に切れた電話、横を見れば美智恵が受話器の降ろしに手を置いていた。
 「ちょっと、ママなにすっ…ひっ!?」
 そして美智恵は考えるように俯いていた顔をあげると、青い顔をしている美神の手から受話器をうばった。
 「まず状況をよく把握する。動くのはそれからでも遅くはないわ。」
 あまりにも情報がなさすぎるのだ。そして判断材料も少なすぎる。厳しい顔をしながら美智恵は踵を返すと何もいわずに外へ出て行った。美神は彼女の迫力にその場を動けなかった。

 


 
 「あいつがな〜〜」
 「そうそう、俺さっきインタビューされたぜ。」
 「でも横島君があんなことするなんてね。」
 「でも何かこのごろ様子がおかしかったもんね。」
 「そうそう、くら〜〜い雰囲気で近寄りがたいし。」
 授業時間、クラスでは横島の話題で溢れかえっていた。教師たちは緊急の職員会議で、黒板には大きく白い文字で自習と書かれている。校庭をとおって向こうの門には未だに報道陣が溢れかえっている。その横に止めてあった数台のパトカ
ーと、安全のためにと制服を着た警官がピートに現実感を植えつけた。タイガーはバイトのため今日は居らず、横島を中傷するクラスメートへの、何ものにも置き換えられそうにもない心の奥で煮えたぎるもの、それを何と言い表せばよいの
かわからない。 ……………………黒い色。
 「ちょっと、横島君がそんなことするはずないでしょ。」
 その言葉に、ピートは思わず顔を上げた。声の主はどうやら愛子だったらしい。
 「横島君は、Hで、覗き魔で、貧乏で、甲斐性がなくて、お昼ごはんなんかいつもパンの耳で、牛丼でもないて喜んで、チョコレートをおかずにして、しかも自動販売機の下にお金が落ちてないか探したりもするけど…………。そんなこと人を殺そうとするはずないじゃない。」
 途中まで彼女は誰の味方だとはげしく転びそうになったピートだったがが、彼女のいいたいことが解り、賛同しようと立ち上がった時、ある同級生が言葉を投げはなった。
 「前の魔族の仲間だったっていうのも本当なんじゃねぇのか。ほらッ、あいつって臆病ですぐに強いほうにつこうとするだろう。ああいう奴を人間のクズっていうんだな。はははっ!」
 ピタリと世界が止まった。

 黒い…黒い…黒い…煮え立つその中に静かに沈んでいく。
 今の自分はどんな醜い顔をしているだろう。どんなに醜い姿をしているだろう。
 
しかし
   こいつは…こいつらは…………!!
 
 「ピート君ダメ!!!」 
 愛子の声にピートは自分を取り戻した時、彼は自分の手がさっきの男の首を絞めていることにやっと気がついた。男はすでに意識を失ったようでぐったりしている。誰かが教師を呼びにいったようだ。彼らが来るまでの間、ピートは呆然と自分
の手を見ていた。
 
 

 

 こつん、こつん、こつん、こつん。鷲塚は革靴を軽快に鳴らせ、階段を下りてすぐの部屋に入った。すでに人が待っている。警察署には珍しい客だ、鷲塚は眠い目をこすり、前に座っている女に挨拶をした。
 「ご高名な美神美智恵さん。噂は貴方の娘さんと同じくらいに聞いてますよ。」
 挑発するような態度に美智恵は眉間にしわを寄せたが、すぐに元の顔に戻した。
 「お褒めに預かり光栄ですわ。『昼行灯』さん。」
 「あらら、俺ってそんなに有名なんですかね。」
 素っ頓狂な声を上げながら、耳に掛けてあったペンで頭を掻いた。
 「えぇ。  鷲塚恭介46歳、多くの命令違反で厄介者扱いされているが、独自の調査で幾つもの手柄を立てているために、首にしようともできない。この前の連続猟奇殺人も貴方が犯人を捕まえたんですよね。」
 「ありゃりゃこれまた、今流行のストーカーって奴ですかね。」
 「ご冗談を。」 
 「じゃあ、少年のほうのストーカーですか?」
 「???」
 「少年のほうなら今夜にでも、おいしい食べ物屋で教えますよ。」
 「っ!?…………じゃあ、デートの誘いにのりますわ。 それと一つ聞いてもいいですか。」
 「なんですかね。」 
 「私たちお友達になれそうかしら?」
 噂と違わぬ切れ者だ、鷲塚は一呼吸置いた。美智恵は美智恵ですべてを見透かすような鷲塚の眼と、頭の回転の速さにある一種の怖がりを感じた。
 「さぁ? それは貴方次第ですね。」
 そういうと、胸ポケットからマッチを出して美智恵に渡した。
 『美味しさ肉肉しい・焼肉屋』とそこには書かれていた。



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