RAINY NIGHT −後編−
投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 7/16)
※それほど意味のあるわけでもない中書き※
『PS.』以下は蛇足ながら・・・です。(をい) ですので、各々で受け流していただきたいと思ったりする所存です。
―――んでは、続きを。でわでわ。
部屋の中にあったタオルと毛布。
水気を含んだ身体をタオルで拭いてやり、子犬の身を毛布で包む。ぶるぶると震える彼女が痛々しかった。抱くマリアは自分の身を拭こうとはしなかった。代わりに抱いていてやるから―――そう言っても聞こうとしなかった。
「ロボットってのは、人間様の言う事を聞かなきゃいけないんだぞ?」ひくん、と一瞬身を震わせ考える素振りをして見せた―――それでも聞かない。溜め息をつきながら、彼女の髪と、顔についた雨水を拭いた後に、濡れた畳板を拭いた。俺を見つめる彼女の目には何かの感情が見え隠れしていた。ただ、それが何であるかは分からなかった。
迷惑―――という類いのものではないと信じたいけれど・・・
自信はない。
身体を拭かない理性のある自分を褒めて欲しかったのは内緒だ。
そんな事を考えて欲しくなかったのも事実だったが。
「横島さんは?」
初め、何を言われているのか分からなかった。
解するのに10秒―――。あぁ、と気づいて笑う。
「別に良いよ。俺、馬鹿だから風邪引かないだろうし」
風邪なんて滅多に引いた事が無い。
馬鹿は風邪を引かない、ってのは、結構正しい事なのかもしれない。だから、必要もなかった、それに、特に濡れているわけでも無い。
「駄目」
じっと、俺を見つめる。その視線の強さに、うっ、と思わずうめき後退りながらそれでも俺は言葉を吐き出した。情けないと、思いつつ。
「良いって。俺のことよりもそいつの事を心配してやれよ」
しばし逡巡。人間臭い―――そんな事を思って苦笑しながら、俺は背を向けた。返事を待つ気はない。
俺の部屋の三分の一程度を領有する炬燵様は冬でも無いのに堂々としていた。
片付けてなくて良かった―――などと、今回だけは自分のものぐさ振りに感謝しつつ。
コンセントに繋がれたままの炬燵のコードの『切』にしてある電源を『入』に変えて、 ゆっくりと温かみを帯びていく様に焦れながら、俺は子犬を抱く彼女を見つめていた。先の問答の答えはついていたから、気にすることもなかった。
『そう言えば―――』
考えてみればそうそう話す機会があるわけでもなかった。俺は彼女のことを良く知らなくて。でも、何となく、今、このときに、俺は『本当の彼女』を見つめた気がした。
ただ、抱く子犬を見つめている彼女―――。
何だろう?
この姿をどこかで見たことがある。
今のように―――感銘を受ける事も無く、ただ、忘れ去っていた何か。
「横島さん・どうかしましたか?」
「・・・ん?」
ゆっくりと顔をあげ、俺を見つめる。
「何でもない・・・そいつ・・・」
彼女がまた、抱く彼女を見つめた。
「元気になると良いな」
彼女は子犬を見つめ、頷いた。そして、俺を見、言う。
「マリア・この子・助けたいです」
手の平でさする強さは優しく。
されど、眼差しは強く。
感情というものをあまり感じさせることのない表情は、笑顔と言うものからははずれていた。けれど―――。
優しい。
「・・・あぁ」
そうだな。
炬燵が温もりを帯びてきた頃に。
雨音が止んだ。
「皮肉なもんだ」
呟きは彼女達には聞こえなかったろう。
窓の外の景色は薄闇の中、ちらおらと降る小雨。帰れるか?―――尋ねようと思ったけれど、止めた。帰るつもりなんて無いだろう―――カオスの爺さんには悪いけど、今日だけは我慢してもらうしかない。不安がっているかもしれないから連絡しなければいけないだろうけど―――電話、あるんだろうか?
流れる水滴の動きを見つめた。サッシを下って―――落ちる。
反射する部屋の中の光景はまるで―――そう、頭の中に浮かんできた。漠然とした絵―――聖母が赤ん坊を抱く絵画のようだった。
もしも写真に撮ったなら。
あの絵なんかよりもずっと―――。
温かくて。優しくて。素直で―――
そう、きっと、『聖母』なんて言葉じゃない。
一人の『母』として彼女は残るだろう。
―――たとえ色褪せても。
・・・彼女のまま。
一応、終わり。
PS.
―――まりあside
友達。
横島さんは友達。
優しい友達。
マリアを助けてくれた。
そして、腕の中の子犬も助けてくれた。
良かった。
本当に良かった。
良かった―――。
元気になって欲しい。
―――頑張って。
むにゃむにゃ・・・
「・・・で、マリア、今夜は帰れないかもしれないから」
「そうか、分かった!小僧、マリアを頼むぞ!」
「ん・・・あぁ、それより爺さんは大丈夫か?」
「はははっ!マリアがおらんでもこの西洋の魔―――」
プチ。
・・・大丈夫そうだな。
・・・にしても。
・・・寝るもんなんだなぁ。
・・・アンドロイドってのも。
スリープモード・・・かぁ。
瞼を閉じない―――っていうのは凄いものがあるが・・・。
・・・ふむ。
―――マリアの腕の中で眠る子犬。
血色ってのは良く見れないが穏やかな寝息っぽい。
大丈夫―――だよな。苦笑しながら見つめた後で。
手の中にあるドッグフードをどうするかどうかを考える。
子犬用ドッグフードではないこのドッグフードをどうするか―――。
よし・・・
食うかっ!!
(嫌な)終わり。
今までの
コメント:
- なんともveldさんらしい作品だなあ……と、思いました。
カオスの世話をするという大義にも背いて、「子犬を助けたい」という自らの心の訴えに準ずるマリア。
自らが濡れる事も顧みず、子犬の……ひいてはマリアのために傘を貸し与える横島くん。
ついでに言うと、そんなマリアのためにやせ我慢をしてみせるカオス。
みんなみんな素敵でした。
ただ、横島くんの一人称描写が印象的である反面、その視野の広さや思慮の深さにちょっと違和感を感じましたが。
それも、マリアの表情の描写を読むに至って忘れました(爆)
感動の気持ちを込めて↓こんなの書いちゃいました。……ゴメンなさい(平伏) (斑駒)
- ――プチ。――ツー、ツー、
「話は済んだんだろ? カオッさん。共用の電話であんまり長電されちゃ、困るんだよ」
大家は、おもむろに黒電話のフックから指を離し、受話器を置いた。
「だ、だからと言って突然切る事もなかろうに……。ま、まあよい。邪魔したな!」
タッと踵を返すカオス。しかし…
「待ちな!」
大家の声に、ビクッとその場で硬直する。
「確か……先月分の家賃をまだ貰ってなかったねえ?」
不敵な笑みを浮かべながら、壁に立てかけられたナギナタに手を伸ばす大家。
(くそぅっ、小僧め。くだらぬことで電話してきよって。せっかく最近は上手く逃げ回っておったというにっっ。くそぅっ! くそぅっ!!)
カオスは心の中で悪態をつきながら、既に覚悟を完了しているのだった。 (斑駒)
- >よし・・・
>食うかっ!!
このセリフに1票♪(ダメ?)
いや、作品の感想は斑駒さんが熱く語ってるし、
これからも他の皆さんが語るでしょうからちょっと風変わりに(笑) (ユタ)
- もぉ!マリアの『むにゃむにゃ』がっ!!
『むにゃむにゃ』がぁっ!!!!(挨拶)
最初はべるどさんらしい心温まるギャグコメディだなぁと思ってたんですが
もぉ、最後にマリアの『むにゃむにゃ』を見て感想が変わりましたw
これからはコタツに寝言ですね♪パジャマは水玉でお願いします♪ (ハルカ)
- マリアですね。本来の意味での、マリアです(挨拶)
聖母をあらわす『マリア』という女性名詞が表現し得る効果の中でも、かなり高いレベルの効果を醸し出しています。――つーか、マリアが母って事は、父は横島、おまえなのか!? ……などと、あまり関係のない感想を抱いてしまったことは秘する方向で(笑)
(ロックンロール)
- うあ・・こんな遅くコメントしてしまって申し訳ないです〜
でも滅茶苦茶好きですこのお話〜素敵です〜
マリアと横島のしっとりとした会話が堪りません〜
流石はveldさん何度目かわかりませんが本当に勉強になります(笑
投稿お疲れ様でした。
P.S.がとっても面白かったです。あれがなければこのお話は完結しない!!(違 (かぜあめ)
- マリアに抱かれたら、余計身体が冷えそうだという野暮な突っ込みはしない紳士なNAVAです、こんばんわw
聖母とかけたお話ですね。単純に(・∀・)イイ!!と思いましたw
何つーか・・・自分のことが一番最後に来るのが非常にマリアらしいというか。
上手いんだよ、とにかくw (NAVA)
- コメントを返すのが遅れてしまったこと、申し訳ないと・・・ないとないと・・・!!
すいませぬ・・・よよよ、ではでは!!返させて頂きます!!
・斑駒さん
そして、カオスは管理人さんに半殺されれ(以下略)。面白かったでございます・・・よよよ、PSでつけるべきなのはそちらだったかもしれない・・・などと思ってりなんかするveld。カオスの先のことをあんまり考えてなかったveld。もうちょっと自然な形の一人称にすべきだったか、と思ったりするveld。うぃうぃ。
コメントありがとうございましたぁ! (veld)
- ・ユタさん
>よし・・・
>食うかっ!!
・・・おぉけぇ!!(ゑ?) いや、良いのではないかと思ったりする今日このごろでは。ええ、良いのではないかと。
あんまり深く考えたりする事も無かった私めなわけですが、とりあえず、ドッグフードが出て来たなぁ・・・書いとけ、書いとけ、というやっつけぶりが(以下略)―――こほん。
コメントありがとうございましたぁ! (veld)
- ・ハルカさん
何と言いましょう、炬燵振興会会長ハルカ姉さま(誤解を撒き散らすveld氏)のお言葉ありがたきこととぉ。『炬燵に寝言に水玉パジャマ』なるお言葉を頂きまして。つまり、これを使って書け、おまいら。と、かのお人は言いたいわけで。
つまりは、ですよ。むにゃむにゃははずせねえと。殊更に自己主張激しいお年頃veldさん。気が向いたら書きます。(ゑ?)
コメントありがとうございましたぁ! (veld)
- ・ロックさん
責任は・・・取らなくては!!(ゑ?)
雨に打たれて佇む女の子(あんどろいどさん)その腕の中で、小さくなっていく命。
見ていると儚げでやりきれない気持ちになってきます―――あなたなら、どうする!?
1.見なかったことにする 2.声をかける 3.問答無用で押し倒(がつっ、と打っているveld氏の頭になにやら鈍い音が響いた・・・)
痛っ・・・っぅ・・・、と、2.か或いは、(恐る恐る辺りを見回しながら)3.を選んだ人はねぃ・・・責任は取らないといかんですよ、ええ、いかんです!!
コメントありがとうございましたぁ! (veld)
- ・かぜあめさん
しっとりしとしと・・・窓の外から聞こえてくる雨音のせいでしょうか。どこか気分はロマンスグレー(ゑ?) どうも、veldです。こんな感じが大好きなveldです(笑)
滅茶苦茶好き、って言ってもらえて本当に嬉しいです!何というか、コサックダンスを踊りたくなる心地・・・!!というよりも、読んでいただけた事に・・・感謝!!
いやは・・・何度目か分かりませんが照れてしまいます(照) いや、ほんと、勉強になってたら嬉しいですけども・・・(恐る恐る・・・)いや、本当に?(答えが恐いなら聞くなよ、veld)
PSは正直、本当に無粋かなぁ・・・とか、思ってました。そう言って頂けて嬉しいです!
コメントありがとうございましたぁ! (veld)
- ・NAVA師父殿
うぃうぃ。金属の身体は冷めてしまっているわけですけども、マリアの心は温かく・・・などと、あまりにも上手くない言い訳(になってないし)を言ってしまうveld氏。さすってさすってをしてますから、それなりに暖を持ってたりするんですけどね。
冷めた体は熱を帯びず、その胸の中の彼女に命を再び灯す事は出来なかった―――とか、そう言うオチの方が綺麗だった気もしないでもない・・・んなもん、書きませんぐわぁ(ゑ?)
横島さんは友達・・・と言う言葉が心に残っておりました。自分を最後に置く、と言うよりも、自然、彼女にとって、彼が大切な人の一人であるから・・・と、あぁ、上手くいえない!!
うまうま!!それは師父殿こそに贈られるべき言葉かとぉ!コメントありがとうございましたぁ! (veld)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa