ザ・グレート・展開予測ショー

グリコの憧憬


投稿者名:赤蛇
投稿日時:(03/ 7/16)

何とはなしにつらつらと、カジュアルなぞをひやかしながら歩く。
天井からの採光がやわらかいアーケード街はファッショナブルであり、どこか野暮ったくもあって心地良い。
右に左にと振り回されながら八幡町筋、三津寺筋を通り過ぎ、狭い宗右衛門町筋通を渡れば道頓堀に差し掛かる。
気がつけばもう、日暮れ時であった。

(・・・あまり、きれいになったとは思えないな)
深緑色に澱んだ水面を眺めつつ、オレンジ色に乱反射する光に一瞬目を細めた。
今年こそは優勝しそうだという事で川ざらえをしたらしいが、どうせ負けても飛び込むんだろうから無駄にはならないか、と思わず苦笑する。
そんなことを考えながら目を上げた先には、自分の記憶とは世代の違うグリコが、自分の記憶と同じように夕日に照らされて立っていた。


『横っち〜〜〜〜〜! 銀ちゃーーーーーん!』
『わはは〜〜! 1粒300メートルやーーーーー!!』
『負けへんでーーーーー!!』
『ね〜〜〜、待ってってば〜〜〜〜〜』


過ぎ去る時も知らずに、いつも一緒だったあの頃。
二人の背中に別れを告げた、あの日。

いつしか自分はGSになり、
銀ちゃんは俳優の道を目指し、

そして夏子は―――――――――――


そして――――――――――――――





「先生ーー、どうしたんでござるかーー?」
「横島ーーー!?」
雑踏の中で聞こえる、聞き慣れた声でふと我に返る。
どれくらいの間そうしていたのだろう、夕日はすっかり高速道路の向こうに姿を隠していた。
あわてて橋のたもとを探すと、シロとタマモが手を振って待っていた。
「悪い、悪い、今行く―――」

冷たい欄干から手を放す前に、もう一度名残惜しげに目を向ける。


眩いネオンのグリコが、何も言わずに輝いていた。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa