ザ・グレート・展開予測ショー

#まりあん一周年記念『ヒト』(完結編2)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 7/15)

だって、あの人たちに、笑ってほしかったから。












関係ないんだ。と思う
人だとか、そうじゃないだとか。
だって、今まで育ててくれたのだ。
あたたかいものをたくさん、くれた。
人間だって人間を殺す。
人間じゃないものが人間を生かしている。
なんでだろう。
殺すことは、認識されているのに生かしているのは『ありえない』話だと言うのだろう。
何故人でない『化け物』は人に仇名すと。
二人とも、こんなに優しいのに


ジムはマリアの服を握り締め、涙に濡れながら言う。
そして、何でそんなことで、自分は捨てられなければ、ならないのだろう。


「ノー・ジム・それは・違います」
はっと、抱きとめていた腕に力を込めマリア。

「違わない」
ぎっと瞳を上げジム。
その瞳には明確な意思が宿っている。

「ジム……」
困ったようにカオス。
その声音は揺れている。

「僕は、絶対にカオスとマリアに、ついて行きたい」


ふうっと、カオスはため息を一つ付き、言う。
「…ワシらは、お前らとは決定的に寿命が違うのじゃよ?」
オマエが老人と呼ばれる歳になったとしても、ワシらは同じ姿で─若干カオスに限って言えば、違いはあるかもしれないが─いるのだと。
目の前で、自分より幼かった人が、年老いて死んでいく姿。
そんなものを見てきたカオスの目には、深い憂いの色が見える。
目の前の少年が、いなくなる姿を見るくらいなら、早い時期に分かれて
しあわせでいると、思って暮らしたいのだ。

だが、まだ幼いジムにそれを分かれと、言うのは無理であろう。
したがってわかるのは、今自分がいっている事でカオスが困っていると言う事だけ。
ジムはおそるおそる…まるで、それ自体が苦痛であるかのように言う。

「…………それとも、僕は迷惑…かなあ」

「ノー・ジム・迷惑・違う」
自信なさげな、泣き出しそうな声音に、マリアが言う。

「だけど…じゃあ…なんで」
連れて行ってくれないの。

言葉の外にあるそれは、あまりに切実で、そしてかすかな怯えが含まれている。

「ジム・いっしょに・いると・普通の・生活・できない」

「普通じゃなくていいよ。マリアとカオスと一緒にいられるなら」
ふうわりと、笑いジムはマリアに抱きつく。
柔らかくも、あたたかくもない、体。
柔らかな曲線を描く外見とは、対照的にひんやりと冷たく硬質なそれ。

だけど、この感触が彼の『おかあさん』の感触であったのだ。


「ドクター・カオス」
マリアはそっと、カオスのほうを窺い、言う。
その、名前に含まれている意味に気付かないほどカオスも鈍くない。
「そうじゃ…のう…」
カオスは、はあっとため息を一つつく。
最初から勝てる訳がない。
……マリアとジムの涙目お願いコンボ(笑)なんぞに勝てるわけない。
それに第一自分も分かれたいとは、積極的に思ってないのだ。
カオスは、ジムの髪の毛をくしゃっと撫でた。
















てろてろと、ジムは夜道を歩いている。
泣き落とし作戦(というわけでもないのだが)今日この地をマリアとカオスと去る事になった。
ダイスキな村のみんなと別れるのは悲しいけれど、後悔するつもりはない。
だって一番大切なのはこの二人なのだから。
けれど、一人だけお別れを言いたい人がいるのだ。
そうカオスに頼み込み、マリアが傍にいるのなら─という条件つきで、許してもらったのだ。
外灯すらない夜の町を、マリアとジムは歩く。
「ジム・大丈夫・ですか?」
「うん。大丈夫マリアが手を繋いでくれているから」
にこっと笑いながらジム。
「なら・いいです」
そして再び歩き始める。
歩きながらジムは考えてきた。
カオスの言葉を。
寿命と、いうものは、生きていける時間のことだと教えてもらったことが有る。
それが違うと言う事は、もしかしたらカオスたちは、自分よりずっと長く生きていくと言う事だろうか?
先に自分が死ぬと、いうことだろうか?
ジムにはまだ、死というものにはっきりとした感じのものが見えない。
それはそうだろう。
まだ十の健康な子供に、はっきりとそれがわかったら怖い。
だけど、と思う。
つい一ヶ月前に死んだ、メアリの事を思い出していた。
メアリは七十を越えるおばあちゃんで、ぽっちゃりとした身体に、ふわふわの白い髪。
おばあちゃんだけどひどく可愛いと思っていた。
村のみんなは、ばあさんと呼ぶけれど、自分はメアリと呼んでいたら、
「なんで、おばあちゃんって呼ばないんだい?」
その問いに驚きながら、メアリっていうのがメアリの名前なのに?
名前は呼ばないと駄目だよって言うと
メアリはおっきな目を針みたい細めて、笑った。
それから、仲よくなり、遊びにいくと、甘いお菓子と自分の知らないお話をたくさんしてくれた。
思い出してみても、同じお話をしてくれたことはなかった。
そんなメアリが死んだ時、村のみんなは歳が歳だし、大往生だと言っていたけれども
悲しかった。

そのひとがもういないことがひどく悲しかった。
メアリに言いたい事が、あるのに言えない。
メアリの家にいっても、ぽっかりと穴が空いたみたいに遊びにいくとあった、お菓子のいいにおいや、ぎいっと揺れる揺り椅子、ちょっと調子はずれな声。
その全部がない。
あるのは、単なる家だけだった。
お葬式のときも泣いたのに、またたくさん泣いて、マリアに慰めてもらったのを、覚えている。
その日は、マリアがずっと抱きしめてくれて、カオスがちょっと焦げてたけど、夕ご飯を作ってくれた。


マリアやカオスは、そんな気持ちをずっと繰り返してきたんだろうか?

でも、と思う
でも一緒にいたいのだと。


(我侭で…ごめんなさい)
続くんですすいませんすいませんすいませんっ(つд`)←駄目

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