ザ・グレート・展開予測ショー

彼の大きさ(10−4)


投稿者名:ANDY
投稿日時:(03/ 7/14)

「一つ忠告。自慢するならちゃんと防御手段も考えときな」
「何を―」
 ―言う。と、ジャッカルが続けようとした時、グシャ、ボト、と言う音が聞こえた。
 こことは違う次元から。
 慌ててジャッカルが目を空間の穴のほうに向けると、ジャッカルが己の最高傑作といった『究極の魔体』はその身を腐らせ、朽ち果てようとしていた。
「生ものはちゃんと保管しとかないと腐るぞ?」
 悪戯が成功した子供のような笑みを浮べながら横島はジャッカルに言った。
「な、なにをしたんだ!!!」
 言葉遣いも変わったジャッカルは横島に怒声をぶつけた。
 それに答えるように、横島はマントの下から左手を出した。
 その手の中には『穏行』『腐敗』と言う文字が刻まれた二つの『太極文殊』があった。
「な、な、な・・・・」
「言ったろ?ずる賢いって。あんなのとは二度と戦いたくなかったんで壊させてもらった。にしても、研究者ってのはどこか抜けてるもんなんだな」
「な、な、な・・・・」
「って、聞いてるか?」
 崩れ行く『究極の魔体』を見ながら、ジャッカルは壊れたラジオのように一つの単語しかいわない。
 ここに、かつて世界を恐怖の底に陥れたもののオリジナルは、ついに日の目を見ずにこの世から消えた。
「で。これであんたらが俺らと戦う理由はなくなったと思うんだが、どう思う?狂乱角」
「ふ。愚問よ」
「というと?」
「汝は強い。故にここで消さねば後々に邪魔になる」
「で、本音は?」
「ふ。我が戦いたいからよ」
「なるほど」
 狂乱角から発せられる気をその身に受けながら、横島は紅い刀を鞘ごと美神たちのほうに蹴り、マントを外しながら言った。
「おい。プラム。起きてるんだろ」
「まだ寝てま〜す」
 横島がGSの誰のものでもない名前を呼びかけると、横島の持っていた荷物が突然動いて、その口から何かが出た。
 それは―
「小妖精?」
 美しい羽を持った二十センチほどの女の子が出てきた。
「なんです?タダオさま」
「「「「「「「「「「「「「タダオサマ〜〜?!!」」」」」」」」」」」」」
「うわ?!」
「ちょ、ちょっと横島さん!」
「先生!どういうことでござるか!」
「横島・・・」
「横島、テメエもう少し節操ってもんを持て」
「よ〜こ〜し〜ま〜」
 プラムと呼ばれた小妖精の発言でまた変に活気付く美神たち。
 男性陣はどこか呆れた顔で、女性陣は、一部は呆れた顔で、残りは夜叉の顔をしていた。
「・・・え〜い!プラム、『ディア』を使って結界を作って、そこにいる人間を守護!」
「わ、わっかりました〜」
 横島の叫び声からの指示にそう答えると、プラムは紅い刀―『ディア』―の柄にある紅い宝石にその小さな唇を押し当てた。
  シュワーーーーー
 すると、『ディア』は刀としての形を失い始め、紅い粒子となり、美神たちを包み込んだ。
「結界完了しました〜」
「わかった。で、みんな。そこから出ないでくれよ。そこから出なければ、そこが一番安全なんだからな」
「そうそう。この結界は外からの攻撃を全て無効にしてくれて、外からは入ることが出来ないんだから。あ、でも中から外に出ることは出来るけどね」
 横島の説明にプラムが補足を加える。それを見て、夜叉たちのレベルが十ほど上がったのは気のせいだろう。
「さて、待たせたみたいだな」
 マントを脱ぎ、漆黒の刀に手を添えて横島は言った。
「かまわん。だが、これから先は真面目にやってもらうがな」
 狂乱角もマントを脱ぎ去り、刀に手を添え構える。
「ああ。真剣にやるさ」
「ふふ。我を落胆させるなよ。横島忠夫」
「さあね」
 構えを取る二人から発せられる気のためか、美神たちは身体を動かすことが出来なかった。
「では」
「いざ」
「尋常に」
「「勝負!!」」
      ガキイイン!!
二人が同時に発した声と共に、金属と金属が打ち合う音が響いた。
 二人は一瞬で動き、先ほどまで二人が立っていた場所からちょうど真ん中のところで、漆黒と闇色の刀を切り結んでいた。
「なかなかの太刀筋よ!」
「そりゃどうも!」
 普通に会話をしているようだが、腕だけはまるで別の生き物のように縦横無尽に動き、とてつもない速さで切り結んでいた。
「す、すごい・・・」
「せ、先生・・・」
「マジかよ・・・」
「・・・うそ」
「いけえ!タダオさま〜」
 それぞれが二人の戦いようを見て感想を漏らした。
 二人が繰り返す一撃は、簡単に鋼鉄をも切り裂いてしまうのではと思うほど重そうであり、それを繰り出し続けられ、切り結び続ける二人の姿は、恐ろしく、そして、見るものの魂をも取り込んでしまうほど美しい、この世で一番美しい舞のようだった。
「はあ!」
「ふん!」
 気合の声と同時に二人は一旦距離を取った。
「やるな」
「おたくもね」
 あんなに激しく切り結んでいたのに、二人は少しも息を乱していなかった。
 汗も掻いておらず、その顔にはうっすらと笑みすら浮べていた。

「す、すごいでござる!さすがは先生!!」
「本当に、すごい」
 声が出ない美神たちとは違い、シロとタマモの二人は興奮していた。
 横島の異常なまでの腕前も二人には単純に、すごい、としかうつっていなかった。
「あ、あれは・・・」
「どうしたのよ?」
「あそこを見るでござる」
 そういい、シロが指差したところには、いまだ呟き続けているジャッカルがいた。
「あいつ・・・」
「これは、ちゃんす、というやつでござる」
「はあ?」
「ふふふ。拙者だけであいつを倒して、先生にほめてもらうでござる」
「あんた、本気で言ってるの?」
 シロの言葉に、タマもが呆れながら突っ込みを入れるが、シロは自分の妄想に浸っていて聞こえていないようだ。
「はあ。なにやってるのよ」
「ああ、先生、恥ずかしいでござる。え?ご褒美でござるか?そ、そんな。せ、先生、優しくしてくだ―」
「って、なに想像してんのよあんた!」
   バス!
 右手をハリセンに変化させ、タマモはシロの頭をはたいた。
「う。な、なにをするでござるか!」
「うっさい!」
 二人が喧嘩を始めようとしているのだが、誰もとめようとはしない。
 なぜなら、横島と狂乱角の二人の戦いに目を奪われているからだ。
 このことが後の事件につながるのだが、誰も知らなかった。
「て、それどころではござらん!行かなくては・・・」
「・・・私も行くわよ」
「な?!」
「なによ。あんた一人だと心配だから付いていってやるんでしょう。感謝しなさいよね」
「誰が・・・」
「行くわよ」
「あ、こら!」
 そう言いながら、妖弧と人狼の娘は狩に出かけた。

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