ザ・グレート・展開予測ショー

ヒトにあらざる者の孤独


投稿者名:dry
投稿日時:(03/ 7/13)






 あの事件で、俺、横島忠夫は死ぬはずだった。

 だが、まだ生きている。

 生きている以上は、これまでどおりの生活を送れるはずだった。

 しかし、それは叶わぬ願いだったのかもしれない。





 周りの様子がおかしい。

 あの事件について美神さんと話そうとしたとき、彼女はうやむやにして話を打ち切った。

 いつもどおりに振る舞うことで、何かを守ろうとしているかのように。

 事務所のみんなも、学校の連中も、腫れ物に触るように、微妙に俺を避ける。

 自覚は無いが、俺は変わったのだろうか。

 もう一度、彼女を問い詰めようとしたが、かわされてしまった。

 それ以来、自分からはあの事件に触れないことにした。





 身体の調子がおかしい。

 はじめは、除霊作業中に意識を少し失う程度のものだった。

 本来なら致命的なミスになるところだが、何故かそうはならなかった。

 まるで、横島忠夫という人間の中にもう一人の俺がいて、身体を操っているかのようだ。

 美神さんは何も言わないが、それに関して隠し事をしているようだった。

 そのうち、自分の身体能力が格段に上がっていることに気付いた。

 これから俺は、どうなってしまうのだろう。





 こんな具合に、俺は自分が異質な存在と化していることを、いやでも思い知らされた。

 外見も内面もこれまでどおりなのに、あのことの影響か、何か違和感を感じる。

 それでも、誰もあのことについては話そうともしない。

 繰り返される日々の中、俺は普段と同じ自分を演じることで、自分の心を守った。





 そして遂に、限界が近づいてきた。

 極度の疲労感が、身体を襲う。

 そんな状態になっても、日常に縋ることしかできない自分が情けない。

 不安に押し潰されそうになりながら、この日も俺は、美神さんたちとともに除霊現場へ向かった。





 そこでどんな悲劇が待ち構えているかも知らずに…。





































「降りるーっ!!降ろしてーっ!!いやーーっ!!」

『ガッチリ留めてあるから、死にやしないって。韋駄天さまなら、苦も無く外せるけどね』

「こないだから何なんです!?俺に何か、俺の知らない秘密があるんですねっ!?何なんですかーーっ!?」

『あとですっかり話してあげるわ』





 …俺がヨコシマンについて知ったのは、このすぐあとだった。





     END

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