彼女との関係・後編……の後編(3)
投稿者名:稀有
投稿日時:(03/ 7/13)
泣いて笑って、そして時に怒って。
彼女は呆れるくらい、元気に成長していった。
『彼女との関係・後編……の後編(3)』
−Good night , dance in the dream !(3)−
「お兄ちゃんっ!」
ひのめの叫び声が爆発音に掻き消される。
爆発により、辺りが破壊しつくされ――ひのめにその破片が襲い掛かった。
「きゃあっ!」
ぎゅっ、と目を瞑るひのめ。だが、その身に破片が突き刺さることはなかった。
「いてて……くそっ、油断した……」
恐る恐る目を開いたひのめ。その視界にはひのめを守るように立ち塞がっている横島の背中が映っていた。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫? 守るって言ったのに、危険な目に合わせちゃって……ゴメンな」
顔だけをひのめの方に向け、にっこり笑う横島。だが、その身体は隈なく傷つき、中には重傷と言っても過言ではない傷もある。その傷ついた身体は、ひのめにとって、とても正視できるような状況ではなかった。
だが、それを巧みに見せないようにしている横島に、ひのめは気付かない。
「あ、ありがと……お兄ちゃん」
「あはは……大丈夫だって。まぁ、ちょっと油断しちゃったけどね。まだまだ美神さんのようには上手くコトを運べない、って事かな?」
軽い口調でひのめの心配に答える横島。それと平行に、文殊で自らの負傷を治療する。ようやく動くには問題ない程度に回復したところで、初めて横島はひのめに身体を向けた。
「さ、しばらくはこの煙幕で相手も迂闊に動けないだろうから、さっさと逃げようか。……流石に、これほどの相手だと美神さん達に連絡を取った方がいいみたいだ」
そう言った横島の視線の先には『煙』の文殊が。多少時間が経ったにも関わらず、未だもうもうと煙っているのは横島の仕業であったらしい。時間稼ぎとはいえ、咄嗟にひのめを守りつつ、文殊によって次の手段を取っていた横島の能力は、おおよそ昔からは考えられないほど成長していた。
「さあ、とっととトンズラしようか」
「そうは問屋が卸さないわっ!」
――と。
横島が生成した文殊が粉々に砕け、徐々に煙が晴れていった。そして、声が高々に響く。
横島は再び臨戦態勢に入り、攻撃に備え、ひのめを背中に隠す。
「誰だっ!」
横島はこの時、すでに文殊を十個使用していた。ワルキューレ戦で慎重に闘っていた上、先ほどの爆発で重症を負ったせいか、余力はほとんど残っていない。
苦戦どころか、明らかに不利な状況に横島のこめかみから一筋の冷や汗が流れ落ちる。
(――せめて、ひのめちゃんだけでも無事に帰さなきゃ!)
横島は煙の向こうにいる相手を睨みつけ、左手に『栄光の手』を発動した。
そして、ついに煙が晴れ、相手の顔が顕わになる――
一方。
この大爆発を引き起こした犯人――美神は目の前の大惨事に、内心冷や汗をかいていた。
(よ、予想よりイイ仕事してるじゃない)
美神は元々、万能タイプのGSであり、典型的な近接戦闘タイプの横島やシロのような爆発的な力というのは出せない。もっとも、世界でも有数のGSだけあって、全てが高いレベルで安定しており、そこらの近距離専門のGSよりはよっぽど強い力を発揮するのだが。
だが、無論のこと、これほどまでの力を美神が発揮することは不可能である。
では、何故美神が大爆発を引き起こしたのか?
――それは、美神が足を乗せている、魔法陣のおかげだった。デジャヴー・ランドが誇る、『マジカル・ミステリー・ツアー』専門研究員たちが汗水垂らして作り上げた、特殊な魔方陣。その上に乗ると自動的に対象者の霊力を一瞬だけ増幅させ、相手を打ち砕く。――本来ならば、『マジカル・ミステリー・ツアー』の最後で、ラスボス相手のトドメに使用する物であった。
霊能力を持たない一般人にもGSの気分をリアルに味わってもらおうと苦心した魔法陣だったのだが、美神のような超一流のGSが使用するとこれほどまでに能力がアップする――はっきり言って、研究員達は凄すぎだった。
(プロでもコンパクトで強力な魔法陣はなかなか創造できないってのに……恐るべき、デジャヴー・ランド)
まぁ、そんなこんなで辺りは火の海だったりする。
(どうしよう? そうだ、あのバカのせいにして私はとっとと逃げれば……!)
どうやって、この事件をもみ消そうか思案している美神の耳に、煙の向こうにいる横島たちの声が聞こえてきた。
「――さあ、とっととトンズラしようか」
瞬間。
美神の脳内で一気に思考が加速した。
(横島が逃げる→罪を擦り付けるヤツがいなくなる→支配人を脅していた私が一番アヤシイ→私が犯人→大問題……って、アイツを逃がしたら私が犯人扱いにっ!)
扱いも何も、犯人なのは間違いないのだが、彼女の思考回路は素敵に都合よく脚色されていた。
(くっ――! こうなったらシバキ倒すしか!)
火事場の馬鹿力というべきか、晴れない視界ながら、ピンポイントに文殊を破壊する美神。今度は上手く力をコントロールし、辺りに被害を出すことはなかった。
「そうは問屋が卸さないわっ!」
そう横島に宣言する美神。後はもう、勢いでコトを進めるしかない!
「誰だっ!」
横島の鋭い声を聞き流し、美神は静かに神通根を握り締めた。
ついに対峙しあう二人。
不利な状況の横島とひのめは、ついに現れた諸悪の権化(文字通り)にどう立ち向かうのかっ!
次回に続く――(死ね
今までの
コメント:
- 忘れ去られているのを承知で書き込んでます(土下座
次回はいよいよ最終局面に。エピローグまであと二話ですので、何とか完結させたいなぁ、と思っております(土下座
遅筆、誠に申し訳ありません(土下座 (稀有(土下座モード))
- 忘れてはおりませんですよ-(笑)つづき期待しております。 (kuromimi)
- 初めまして稀有さん、dryといいます。
密かに続き、待ってました。
周囲の女性の壊れっぷりとひのめの純粋さのギャップが、とても面白いです。
果たして、美神はこの状況から逆転できるのか。
横島はひのめ(と自分の命(笑))を守り切れるのか。
次回も楽しみにしております。 (dry)
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