ザ・グレート・展開予測ショー

Be Be Strong!!


投稿者名:gooday
投稿日時:(03/ 7/13)


 朝になると、警察署の周りにはすさまじい数の報道陣であふれていた。あれから鷲塚は横島の怪我の手当てをし
て、仮眠をとらせた。そして自分はその間に彼を身辺を一通り調べあげていた。日が昇っても起きる気配のしない
横島を何人かは起こそうともしたが、鷲塚はそれを止めた。エッフェル塔になっている机に座って彼は今、横島の
写真を睨みながら片手に持つ煙草をそれに押し付けていた。アルミ製の灰皿には後輩の健康を気遣い取り上げた煙
草の吸い終えたものが山のように積まれている。
 「というわけで君には嫌疑がかけられているわけだ。」
 鷲塚は両目に二つ穴を開けられた少年の写真に語りかけている。
 「何をやってるんですか?」
 隣の席にいる山瀬がため息をついた。
 「練習だ。」
 憮然真面目な顔で返答する上司に涙したくなったのはこれが初めてではない。話は変わるが『第一課の昼行灯』
と称される彼に出会ってから良いことなど数える程度しかなかった。割合でいえば一割、それも上手い飲み屋、食
べ物屋を知ること、まったく刑事人生とは関係のないものであった。一番の災難といえば彼の仕事の後始末で残業
が増え、彼女にも会う機会が必然的に減ってしまい、ある晩に疲れて帰ってくると留守番電話に関係の終焉をほの
めかす言葉が録音されていた。しかし縁というのは奇妙なもので切れるものもあれば逆に切れないものもある。本
人の望みどおりにはいかないものだ。そうはいっても鷲塚の刑事としての才能だけは尊敬している。
 「それより禁煙じゃなかったんですか。」
 山瀬は灰皿を見ながら呆れかえる。
 「灰皿一杯くら…「三杯めです、すでに二回捨てに行きました」…三杯くらいたいしたことじゃない。」
 「希ちゃんに言いつけますよ。」
 「煙草を買うことで国の財政を助けているんだ。」
 「搾取した煙草でしょう。 あっそうそう国っていえば鷲塚さん。マスコミに情報を流したのが国ってどういうこ
とですか。」
 「あ〜〜そのことか、そりゃあれだな。お前の頭に似てお粗末過ぎるんだよ。部屋にあったプラスチック爆弾は処
理班に聞くところによると教科書どおり普通の爆弾、押入れに入ってたナイフは新品のように新しい、銃は銃口を擦
れ具合を見る限りこれもまた新品。」
 自分の頭をお粗末と言われカチンッときたが、それをおくびも出さぬ様に耐えた。抑えた理由としては鷲塚の主旨
がよく掴めなかったためである。山瀬は首をかしげて聞いた。
 「それがどうしたんですか。」
 「ちっとは頭を使え。国家を脅かす力のある組織がバックについているか、それともそれほど事が一人でできるか、
もうひとつはとてつもない妄想癖かだ。どでかい組織があの子の後ろについていることはまずありえないだろうが。」
 「彼の身辺で怪しいといえば雇い主の『マルサ・キラー』だけですね。」
 「カネゴンがお金のため以外に動くことはないからな。じゃあ一人でできるのか……例えばそれを肯定としてみろ。
爆弾を作るためには知識から材料からいろいろな物が必要だ。その中で一番必要なのが経験だ、まぁこりゃ何にでもい
えることだがな。経験を積んでいくにつれて癖ができんだよ、爆弾作りもな、ところがあの爆弾は教科書どおりの爆弾、
機械で作ったようでまったく面白くないってぼやいてたよ。まぁそれが一つ目だ。今度はナイフと銃。あの子のバイト
はGSだろう。GSってのは悪霊退治が主としてってが、聞いた話では銃はともかく、ナイフなんかはいざって時のた
めに常に保持しとくらしいんだわ。」
 「なるほど、使い込まれてないナイフではおかしいということですね。」
 山瀬は腕を組み大きく頷いた。横島忠夫が起きました、と一人の男が鷲塚の机に来てそう告げた。こころなしか彼の
体が少し震えているように見える。よく顔を見れば頬に青痣ができている。あぁ昨日の男か、鷲塚は右手に持っていた
吸いかけの煙草を彼の口に突っ込んだ。
 「最後の一つの可能性は?」
 山瀬は椅子から立ち上がり、鷲塚の後を追った。
 「それを今から調べに行くんだよ!」



 刑事ドラマでよくみるような部屋に連れてこられた横島は率直にいえば混乱していた。まさか自分が使うなど思っ
ても見なかった。とはいってみたものの事実上、二回ほどお世話になった覚えがないわけではない。しかし今回は全
てが違った。男二人に捕まる際、ほんのすこし反抗的な態度をとった途端何発も殴られた。自分が今おかれている状
況は、前に座っているよれよれなスーツを着た中年に聞いた。頭を整理をする時間がほしい、まさにそう思った。
 「でな、忠夫君。」
 自分のことを呼ばれたのかと、慌てて彼のほうを向いた。下の名前で呼ばれることがそうそうない横島にとって違
和感があるが、彼にそう呼ばれることに抵抗を感じなかった。
 「手を見せてくれないか。」
 何をするのだろうと不信感を露にするが、ここで反抗的な態度をとるのは賢くないと思った横島は、鷲塚の言われ
たとおりに手を机の上に出した。鷲塚は差し出された手の平から指までじっくり観察するように見た。
 「あの、なんなんすか?」 
 さすがに気味が悪く顔をしかめた。
 「いや、このところ手相占いにこってるんでね。 あっそれより、君の部屋にあった爆弾にナイフ、覚せい剤に銃。
それらは君のかな。」
 鷲塚が覚せい剤とないものを言ったのは、相手の反応を窺うためである。
 「違います!!」
 横島は机を拳で叩いた。ピクッとドアよりに立っていた山瀬が動いたが、鷲塚は片手でそれを制した。そして瞬き
一つしない目で、彼を凝視する。
 「もう一つ、質問させてもらおうと…………






  



 









                ……………………そば、カツ丼、ラーメン、君はどれが好きだ?」





  


 「すんません。」
 横島は前に出されたカツ丼を見て謝った。
 「気にするな。腹が減っちゃ何も考えられんし、それに沸点が早くなるからな。ほら食え。」
 鷲塚は箸を割ると、そばを啜りだした。その隣では山瀬がラーメンを食べている。傍から見たら滑稽な図である、
刑事と容疑者が一緒に食事を取るなんて。書記官はまた偏屈がはじまったと食事が始まるそうそういなくなった。
それを狙っていた山瀬は箸を置くと用件を済ますために鷲塚を急かした。
 「直球に聞くけど忠夫君、君は天皇暗殺を企てたのか。」
 横島はうんざりとした顔で、首を横にふった。箸をどんぶりの上に置き何かを言おうとしたが、鷲塚の次の言葉
のほうが速かった。
 「じゃぁ、次の質問だ。 君は何故自分がこんな状況に陥ったのかわかるか。」
 「い、いいえ、わかんないっす。」
 山瀬は驚いた顔を鷲塚に向けた。そんな彼に鷲塚は、面倒だがここで終わらしちゃ後味悪いだろう、そう言うと
ポケットから手探りでライターを見つけ出すと、吸殻に再び火をつけて吸い始めた。そしてその持っているほうの
手で頭をぼりぼり掻きながら口を開いた。
 「あぁ〜〜これが最後の質問だ。 君は何を持っている?」
 
 

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