ザ・グレート・展開予測ショー

橋姫伝説 その16


投稿者名:弥三郎
投稿日時:(03/ 7/13)

辺り一面火の海だ。
炎が燃え盛りすべてのものを焼き尽くしていく。
忌まわしき炎が次々と動物達を飲み込んでいく。
すべてが狂気に包まれていた。その中心にいるのがあの男だ。

「ふははははは!!美神さん、これで決まったよ。決まったんだ!!私が日本の王となり、この国を支配していく。
 その図式が決まったんだ!!」

大きく見開いた目で、口には気味の悪い薄笑い。瞳には狂気が宿っていた。

「しかし、何故あなたはこれほどの力が出せるの?サラマンダーを制御するには相当な霊力を使うわ。」
「そこだよ美神さん。私は念入りにこの計画を進めてきた。霊力を供給する媒体を地脈に括りつけ、私に霊力が流れる
 ようにした。どこにそれがあるのか今から探しても、もう遅い。地脈は完全に私のものとなる!!」

太秦はそういうと狂気じみた笑い声を上げた。
美智恵はサラマンダーが出す業火を避けながら太秦から離れた。いくらなんでも半ば暴走したような炎に立ち向かうのは
無謀すぎる。一旦戦力を立て直してから再突入を決めた美智恵であった。


そのころルシオラと大友皇子は

「まいった、まいったぞ!!奴め解除できる前にサラマンダーを発動してしまった!!」
「……殿下、まだ道はありますよ。強制的に連絡を断ち切ることが出来ます。」
「出来ることもないがそなた、危険だぞ?」
「危険は覚悟してるわ。だからやるのよ。」

ルシオラの目は決意に満ちていた。愛する男が守ろうとした世界を守るために、愛する男を守るために。恋する女は強いのだ。


美智恵は炎を避けつつ走っていた。
逃げるためじゃない。立て直してサラマンダーを倒す。そうするために走っていた。
だけど、周りの気温がぐんぐん上がっている。肺がやられてしまうのも時間の問題かもしれない。何とかして太秦の暴走を止めないと。
暴走を止めないと太秦は権力の座に着く前にチャクラがズタズタになるし、サラマンダーの封印も出来ない。
絶大な力を手に入れるたびに人間は狂気へと堕ちて行く。自分を過信し周りが見えなくなる。
美智恵は時間がない事を感じ取っていた。


「よし、ここの回路を切断だ。そしてここの回路を外して……」
「おっと、これもまたトラップだわ。」

ルシオラはそういうとトラップ回路ごと外して冷凍封印させる。折れている左腕をかばいつつルシオラは1つ1つ結界を解いていく。
そして霊力供給の回路を探し当てることに成功した。

「これを切れば奴への霊力供給は止まる。しかし、その過程で膨大な霊力がお主の体を流れるかもしれん。それでもよいか?」
「ええ、大丈夫よ。さぁ、いきましょう。」

そういってルシオラは回路を切断した。
当たり一帯は光に包まれた……


横島は東の山から光が溢れているのを見た。
優しい光だった。キラキラとゆれるように満ち溢れ、辺りを包んでいく。
そして辺りに広がっていった。

「ルシオラ……、そうか、ルシオラがやったんだな……」
「横島クン、何故そういうのがわかるの?」
「うーん、自分でも良くわからないんですけど、直感的に。」
「そう。今は物思いに耽っている場合じゃないわ。あのバカを取り押さえるのが先決よ!」

美神はそういって太秦がいると思われるところを指した。

「はい、行きます!」

横島がそう答えると2人はまだ無事に生き残っているSAS隊員をまとめて走り出した。

太秦は急に途絶えた霊力供給に驚愕した。
(馬鹿な、自分は数々の切り札を持っていた。そしてそれを有効に使う手段も整えていた。何故だ?何故なんだ!!
 私は完璧に事を進めてきた。それを破られることはありえない!!)
そのとき太秦に強大なプレッシャーがかかってきた。上を見ると暴走し始めたサラマンダーがいた。
この契約したサラマンダーは指輪の持ち主の霊力を食い物とする。その霊力がなくなるとサラマンダーは契約者を食らう。
そして力のある限り暴れまわるのだ。
太秦はここに来てはじめて恐怖を覚えた。後悔した。どうしてこのような化け物と契約したんだろうかと。
しかし、もう遅かった。
サラマンダーが太秦に襲い掛かる。
太秦は炎に包まれた。そして爆発した。



数時間後、霊力が枯渇しすぐに消えたサラマンダーであったが、あたり一体は未だに燃え盛っていた。
カリスマを持つ指導者がいなくなるとその集団は一気に瓦解する。反乱軍はその現象が現れていた。
反乱軍の主だったメンバーは包囲拘束され、オカルト特別法廷で裁かれることになった。
また、マインドコントロールされていた自衛隊員を保護し、国立霊障病院に入院させてマインドコントロールを解くことにした。
それに加えて5年間逃げ続けていた凶悪オカルト犯罪者も捕縛に成功した。

「ふう、サラマンダーには焦ったよ。しかし、何故サラマンダーが消えたんだ?」
「西条司令官、これを見てください。約5時間前の霊力変化です。」
「そういえば5時間前には発光現象があったな。それと場所が重なるのか?」
「そうです。理由がわかりませんが、あの後サラマンダーがいた辺りの霊力は急速に低下していきました。」

データを見て唸る西条。美智恵から入ってきた情報を総合すると、ある結論に達した。

「ルシオラ君がやったのかもな。」
「え、彼女がですか?確か未だに行方不明だと……」
「辺り一体を捜索すれば見つかるかも知れんぞ。捜索隊を編成して救助に向かえ。」
「了解です。」


美智恵は縮れてしまった髪の毛を撫で付けつつ、地面に倒れている太秦に近寄った。
一目見て彼がもう長くないことがわかった。
胸に開いた穴。そこから空気が漏れている。両足は焼け爛れ、右手はもげていた。そして顔は誰だかわからないほど
ぐちゃぐちゃになっていた。

「美神さん……あなたですか?」

太秦が弱々しい声を上げる。

「自分の理想がこんな形で瓦解するとは思わなかったな……万全だったのに……」
「私も不思議だったわ。あれほど万全だったのに。いくらなんでもアシュタロス戦に参加したGSたちの力で持っても
あなたの計画を崩すのは難しかったわ。」
「そうでしたか、日本で最強のGSと言わしめたあなたがそう言いますか。ははっ、私はこれで完全に犯罪者だ。」

そういうと太秦はゴフッと大量の血を吐いた。

「カハッ……、はぁ、はぁ、どうやら刑務所に行かなくてすむようだ。美神さん。お願いがあるんだが……。」
「何かしら?」
「彦根に私の家がある。そこにまだ5歳になる私の息子がいるんだ。養子だがね。その子の面倒を見てやってくれませんか?」
「……いいわ。あとは?」
「もう無いよ。ああ、目がかすんできた……」

太秦はその一言を最後に息を引き取った。
その死に顔は穏やかな父親を思わせる男の顔だった。
美智恵は半開きになっていた太秦の目を閉じさせて頭をたれた。


山の中を数人の自衛隊員が歩いていく。
発光現象を調べるためと、行方不明と思われるルシオラ震電部隊隊長を探すためだ。
山をどんどん登っていく。もうそろそろ日が沈む。隊員たちは道を急いだ。
途中で所々木の枝が大量に折れているところを発見した。
すぐ近くには小屋があった。地面にはなにやら引きずった後がある。
隊員たちが引き戸を開けると気絶しているルシオラと結界内で気絶している大友皇子を発見した。


山の麓では横島がベンチに座って待っていた。
ルシオラが無事なのをまだ確認できない横島は焦っていた。今すぐ助けに行きたい。だけど、戦闘で消耗しきっている。そんな自分がもどかしかった。無力な自分が情けなかった。
山道を見ているとさっき入っていった隊員たちが姿を現した。
横島はやっとのことで立ち上がると隊員たちのところに歩いていった。
隊員たちは担架2つを地面に下ろした。運ばれた2人には毛布がかけられている。
さらに近づくとルシオラが運ばれているではないか。
横島はもつれそうなる足を叱咤しつつ急いでルシオラのもとに走る。
溢れそうになる涙をこらえて走った。

「あ、ヨコシマ!」

元気そうに答えるルシオラに横島は抱きついた。

「ど、どうしたの?」
「よかった、よかったよぅ、ルシオラァ〜。心配したんだぞ、心配したんだからな!!」

横島はそういうと涙を流し始めた。嗚咽が漏れる。

「ゴメンね、ヨコシマ。ちょっと無理しちゃった。」

ルシオラはそういうと横島の頭をなで始めた。

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