ザ・グレート・展開予測ショー

Be Be Strong!!


投稿者名:gooday
投稿日時:(03/ 7/13)


「上に行ったわよ!!」
 美神の声が階段を駆け上り、二階で待っている横島のもとに届いた。手の中に入っている文珠は
すでに用意された文字が込められていた。ものすごいスピードで駆け上ってくる悪霊が目に入り、
少し汗ばむ火照った背中に寒気が現れては消えたがそれも一瞬のこと、目の前に来た悪霊に反応し
て文珠を投げつけようとした。


「この馬鹿っ、なんであそこで見逃すのよ!」
 事務所、横島はすでに小一時間正座をさせられていた。最悪怪我はなかったが除霊対象に逃げら
れてしまい、仕事は失敗ということになる。名前が大事なこの業界では一つの失敗でも手痛いもの
で、情報は恐ろしい速さで知れ渡る。美神は荒れた呼吸を調えて、深く椅子に腰掛けた。
「何回トチれば気がすむのよ。」
 頭を抱えている手を彼のほうに向け、デテケのサインを送る。部屋から出る前にすみませんと頭
を深く下げてた。すでに夜も深い、濡れた窓ごしに電灯がこうこうと光っている。おキヌは部屋か
ら出てきた横島に心配そうな顔を向け何かを言いかけたが、思い改めた目線を下げた。
「心配させてごめん。」
 横島は下を向いたままのおキヌに声をかけると事務所から出ていった。おキヌは美神の横にコー
ヒーを置くと、お盆を胸に抱きながら美神に話しかけた。
「やっぱりまだ……」
「三件目よ。いえっ、三件中三件よ!」
「でもっ!」
「横島君は仮にもプロなのよ。公私混同は止めてほしいわ。」
 おキヌは何も言えずに部屋から出て行った。一人残された美神は淹れたてのコーヒーに口をつけ
た。



 不甲斐ない、情けない、そう小さく呟かれた声は雨によってかき消された。胸の内から激しく湧
き出てくる黒いものにそのまま身を任せてみたく、コブシをコンクリートの壁に向けて振り上げ放
った、がしかし壁から十センチというところで拳は止まった。
 「度胸もない……」
 雨のため、泣いているのか判断しにくいが、声だけは微かに震えていた。振り返り歩道の脇に転が
っている空き缶にありったけの力を込めて蹴飛ばす。空き缶は放物線を描き向こうの歩道へと飛んで
いった。悪霊に文珠を投げつけようとした際、突如胃から込み上げてきた強い吐き気に、そのまま吐
瀉物を流してしまい悪霊に逃げられてしまった。それは今回だけではない、三回連続でだ。それもい
つも体調が悪いわけではなく、いざ悪霊を退治しようとする時だけ込み上げてくる。もう首になるか
なと考えることは避けられない。自分の無力さを感じながらアパートへと繋ぐ道を歩いていった。



 出来事は翌日、今日も適当に事務処理をこなしていた美神のもとに美智恵が真っ青な顔をして事務所
に駆け込んできた。
 「れ、令子ニュースは見た?」
 「何よママそんなに慌てて。」
 「そう…まだ見てないのね。落ち着いて聞きなさい……」
 美智恵は上手く言葉を選びながらことの次第を話していった。




 「そっちはどうだ!」
 「だめです、見つかりません。」
 「早く探し出せ!」
 中年の男が檄を飛ばす。新人に買ってきてもらったタバコを咥えると、まず自分を落ち着かせようと大
きく煙を吸い込んだ。そして左手に持っていた缶コーヒーを一口飲む。
 「まったく、どうなっちまったんだろうね日本は…未成年者が国の転覆を試みただと。」
 「今の段階では事実かどうかわからないですから、いざという時のため報道関係にこの件を漏らさないで
おくことに越したことはないですね、鷲塚警部。」
 中年、鷲塚の独り言への返事が後ろから返ってきた。
 「なぁ山瀬、情報ってのは水みたいなもんさ。完璧なコップでなけりゃどっかで漏れちまう。」
 「それは内部に情報を渡す輩がいるということですか?」
 山瀬と呼ばれた若者は少し心外といった顔で鷲塚を見る。鷲塚はかぶっている帽子で顔を隠し軽く笑った。
 「まぁ内部もたいした信用できねぇが、俺の勘だが今回は情報の出処からかな。」
 「情報の出処って国じゃないですか!!」
 「まぁ、足りない頭でじっくり考えろ。俺はあんましこの件に深入りしたくないんで考えないことにしてる
んだよ。ほれ禁煙中なのに」
 指された地面には既に一箱分の本数が落ちていた。
 「横島忠夫を連行しました。」
 私服の男二人に挟まれるように腕を捕まれながら、横島は千鳥足で歩いてきた。
 「あ〜〜、横島忠夫……君。」
 鷲塚は確かめるために、横島の項垂れている頭から顔を覗き込むように腰を曲げた。そして横島の顔に見た途
端顔つきが変わった。
 「お前たちが捕まえたのか。」
 「「はい!!」」
 「なるほど……ご苦労だった。」
 そういい終わると同時に片方の腹に拳が喰い込む。男は殴られた腹を押さえながらうずくまった。もう一人は事
態を把握できてないのだろう、ただ呆然と殴られた男のほうを見ている。その一人のほうにも同じく拳が、今度は
頬に飛んできた。ダシッと渇いた音が響いた。
 「お前ら、相手の年を考えてやれ。」
 唾を吐きかけるように言い放ち、そして今にも倒れそうな横島を支えた。
 「本当にすまない。」
 鷲塚は頭を下げると、山瀬を呼び寄せ両側から支えながらパトカーの中に入っていった  

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