A Tale From The Kitchen〜1〜
投稿者名:マサ
投稿日時:(03/ 7/12)
〜1巻リポート1・「美神除霊事務所出動せよ!!」のその後より〜
場所はオフィスビルの立ち並ぶ都心の一角―――シャングリラビル5階。
言わずと知れた美神令子除霊事務所である。
『美神さん、これ何ですか?』
「それはテレビよ」
初めて見る現代の物に目を輝かせるおキヌの質問にさも面倒そうに美神が答える。
『てれびですか…』
おキヌが物珍しそうにあちこちぺたぺた触っていると…
ポチッ
〔一昨日未明、オカルト犯罪防止法に違法したとして逮捕された摩久間 鯛詩氏の………〕
スイッチの入ったテレビの画面にニュースキャスターとその斜め上にぼさぼさの金髪の男の写真が映る。
『きゃ――っ!?人が小さな箱に閉じ込められてる〜〜〜っ!!』
「あ、あのねぇ…」
『あれ〜、どこですかぁ〜〜〜?』
美神が説明しようとするのも聞かず、テレビの上から頭だけ突っ込んで叫ぶおキヌ。
首が無くて、ほぼ逆さまになっている人の姿(読者は出来るだけ想像しないよーにっ)に言いようの無いものを感じつつ美神は頭を抱えて椅子に座って苦笑を浮かべている横島に歩み寄る。
「…横島クン、あとお願い」
「俺っスか?!」
何となく分かってはいたものの、いざ言われるとつい言いたくなる。我侭な自分の雇用主に。
「こーゆー面倒なことするのがあんたの仕事なのよ!」
「何故じゃぁ〜〜〜っ」
「じゃ、仕事やめる?(はぁと)」
「………すんませんでした。ここで働かしてくださいおねーさま」(涙)
「よろしい」
結局、横島に拒否できるわけも無く、床にべったり這い蹲る。
美神は満足げに微笑むと、さっさと扉の向こうへと消えてしまった。
「さて…」
美神に代わって微妙に足りなさそうな脳みそを懸命に駆使し、何と説明したら良いかと考えつつ数歩おキヌに歩み寄ろうとする横島だったが…。
『あ、えーと、横島サン…でしたよね』
おキヌは横島に気付いてそう言うと。
そそそそそ.....
「あの、何でそーやって退くのでせう?」(汗)
明らかに横島と距離を置こうとしているおキヌ。
「俺が怖いとか?(確かそんなこと言ってたし)」
『いえ、そうじゃないんですけど…』
否定はするものの、口ごもる。
「?」
『その…私が怖くないんですか?』
「は?なんで?」
おキヌの言葉に意味が分からぬと横島が聞き返す。
『私、二度もあなたを殺そうとしたんですよ!?』
切な表情で疑問をぶつけるおキヌ。
それに対して、横島はあっさりと一言。
「別に?」
『べ、別にって…』
今度はおキヌが不思議そうな顔をする。
「だって、おキヌちゃんは山を静めるために幽霊になったんだろ?そんなコが俺なんか殺そうとしたって少なくとも美神さんはあっさりOKするだろーし」
『でも…』
「ホント言うとさ、一人ぼっちの辛さって分かるから。俺も、親父とお袋が海外に行ってるからここで働くまで寂しくて、毎日が詰まらなくて…。だから、きっと、それが辞められない理由の一つだと思う。おキヌちゃんは俺なんかじゃ比べられないくらい寂しい思いをしてたんだから仕方ないんじゃないかな?」
『横島サン…(じ――ん)。ありがとうございますぅ。ひっく、ひっく…』
嬉しそうに頭を下げるおキヌの目からとめどなく涙が流れる。
300年の間の幽霊としての生活を考えれば、そして自分の姿を見た途端に恐怖して逃げ出した他の人々に比べれば、美神と横島の自分への接し方はどれほど暖かいだろうか。
冷えて凍っていたものが解けていくような、そんな暖かさが胸の中をいっぱいにする。
おキヌは心から思う、ここに来て良かったと。
「おキヌちゃんはほんとーに良いコだよ(ああっ、可愛い!嬉し泣きの表情なんか最高やないかーっ!これで幽霊でなかったら、幽霊でなかったら…っ!)」
おキヌの頭に手を乗せ、撫でてみる。
そして、目線を下へ向けておキヌが言う。
『私、お役に立てるよう頑張ります!///』
「そーそー(あー、やーらかいなー/////)」
嬉しそうに笑うおキヌを見て、横島は満足げに何度も頷く。
『あの〜、ところで、お夕飯作りたいんですけど、“井戸”は何処でしょうか?』
「………(ん〜、やっぱり可愛い♪///)」
これから現代の一般常識の基礎から教えなければいけないのだが、この時の横島の頭の中にはそんなことは一片もないのであった。
おわり
今までの
コメント:
- お久しぶりです。“著者”です。えーと、何故“著者”なのかと申しますと、この話は以前に某所の掲示板でkitchensinkさんが「『井戸は何処ですか?』なんて言ったら〜♪」みたいな内容のことを話されていらっしゃいましたので、私が肉付けしてkitchensinkさんの原案とはかけ離れてしまいそうな内容の代物となりました次第です、はい(爆)。えーと、これは一応は『1』ですので、その内『2』が出るかもしれません。ご了承下さった上、題名(「キッチンの中でのお話、みたいな」とのこと)まで下さいましたkitchensinkさんに感謝いたします♪ (マサ)
- あの〜、ところで、『厨(くりや)』は何処(いずこ)でしょうか(笑)
いつになく真摯に自分の内情を吐露する横島くんですが、確かにこんな心理が働いていて、おキヌちゃんにならそれを語る事もあったかもしれませんね。
現代の世情に疎いおキヌちゃんは、これからいかようにも面白い話が出来そうでワクワクします。
続きもがんばってください。 (斑駒)
- 皆様、お久しぶりです。そして初めての方々、初めまして♪ こちらは一応原案者のkitchensinkでございます。マサさんは「著者」であるとことわりをお入れになっておりますが、私めの拙い「妄想」からここまでしっかりとした「作品」へと昇華されましたことを感謝いたします(平伏)。他の読者の皆様も、GS初期の頃の雰囲気の漂う今作を楽しんでいただければ幸いです。それでは失礼いたします♪ (kitchensink)
- そうか〜、おキヌちゃんは覚えることがたくさんあるんですよねぇ。
でも、横島くんが喜んで教えてくれそうです。 もう、付きっ切りで(^^;
そうだよね、横島くん♪
では、続きをお待ちしてます。
しかし、おキヌちゃんって偉いよね。一年後(?)には、高校入学レベルの学力までマスターするんだから・・・ (さわてぃ)
- おキヌの初めての文明との接触・・・そうですよねー、おキヌにとって都会に出てくることは、かなり驚くことが多かったでしょうね。 テレビや冷蔵庫といった電化製品なんかは特に。 自動車や電車といった乗り物は、おキヌもたまに山のふもと近くまで降りて、あれはなんだろうとか思っていたりしたのでしょうか? 一般常識をいままで教えてくれる人がいなかっただけに、これからたくさんのことをおキヌは学んでいくのでしょう。 最終回前に、「ありがとう―――」と言ったその日まで、そしてその後も。 (ヴァージニア)
- この頃もの凄く忙しくて全然顔を出せなかったK.H. Fanです。
やっぱマサさんの作品は良いですね。
いつも面白く読まさせていただいてます。
2も読みたいなぁ… (K.H. Fan)
- わ〜コメントがこんなに〜♪…とゆーことで(何?)、皆様コメントを有難うございます(平伏)。昨日、斑駒さんにはチャットの方でご連絡しましたが、このお話は続きを書く予定がありませんでした(爆)。あと、『2』と言いますのは、また別のお話として短編を書かせて頂くという形にしようと思っております。その辺りのご説明が無く、申し訳ありませんでした(続きは…前向きに検討しますが、ご期待せずにお願いします←血が騒ぐらしい)。
では、コメント返しを♪
斑駒さんへ
早々とコメントを有難うございます♪ そうですねー、横島の気持ちと言うものは私自身も発見でした(爆)。ただ、それを口に出せたのも、相手がおキヌちゃんだからなのかなぁ、とか思うんですよね♪ (マサ)
- さわてぃさんへ
えーと、初めましてですよね(汗)。はい、それはもう教える側が大変なくらい覚えることはあると思います。しかし、「付きっ切り」………むふっ、本人がいやと言っても強制で(轟爆)。おキヌちゃんが好きだからでしょうね、学力の面は。それ以外に説明できませんが。
ヴァージニアさんへ
現代の文明はほんの昔から一気に発展したものですからね。多くのことを学び、最後で「ありがとう――」…なるほど、何か大切なものがつながった気がします(何が?)。
K.H.Fanさんへ
いやはや、作者にとってそのようなことを仰ってくださる方は貴重です、はい♪ありがとうございます。『2』は…うふふ(謎)。 (マサ)
- なるほど、おキヌちゃん登場後にはこんなお話しがあったんですね!?
納得できる展開です♪
さわてぃさんも言ってますが数ヶ月で現代常識、学力を身につけたおキヌちゃんってGS切っての聡明な頭脳の持ち主かも(笑) (ユタ)
- 改めて、マサさんがおキヌモノの猛者であることを確認した、そんなSSでした(爆)
この初期の絶妙にイイカンジでずれまくったおキヌちゃんがいい味だしてますね。
>お夕飯作りたいんですけど、“井戸”は何処でしょうか?
もう幽霊のおキヌちゃんじゃなきゃヤだい!(ぷんすか)
と病んでしまいそうです(笑) (アフロマシーン改)
- 順応の早さには性格も大きく影響していそうですよね(^^)
学ぶ意志のあるなしじゃなく、彼女なら自然にきゅうしゅうしていてしまうのかなぁとも思います(笑)
久しぶりの投稿、お疲れ様でした。 (志狗)
- ユタさんへ
そうですねー、登場後のことはもっと以前から想像はしていたのですが、kitchensinkさんのお話がきっかけになって話として出来上がったので、私としても何か納得している部分が(爆)。頭脳のほうは、もしかしたら原作で深く触れられていないところにミソがあるような…(謎)。
アフロマシーン改さんへ
ええっ?!私って亡者…もとい、猛者だったんですか!?(おい) 「イイカンジにずれまくった幽霊のおキヌちゃんじゃなきゃヤだい!」と病んでいると言ったら信じてくださるんでしょうか?(轟爆)
志狗さんへ
素直な性格は吸収力は凄いんでしょうね。へそ曲がりな私には絶対無理です(笑)。 (マサ)
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