ザ・グレート・展開予測ショー

#まりあん一周年記念『ヒト』(完結編1)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 7/11)

だから、二人にもシアワセになってほしかったんだ。











カオスは、嗚咽を漏らすジムに胸の痛みを覚えながら、それでも、どこか冷静な部分でぞくりと悪寒にも似たようなものを感じていた。
ジムはこの話、カオスとマリアが人間ではないと言う話を、長老から聞いたと言ったのだ。
長老というのは一般的に、村での一番の年長者であり、目上は敬わないといけないという、一般常識から照らし合わせても、有る意味村長よりも、立場的に重要な人物である。
そしてここの村の長老は良識的で、そして人格者でもある。
智恵者とも言われ、村の重要な相談事の時など意見を必ず求められる。
今までマリアの容姿の変化のなさと、その特徴的な話し方で、何度か本当に人間なのか?という噂が立ったときも長老は
「村の仲間じゃろう?そんなことはないわ」
と言っていた。
その長老が、マリアとカオスは、人ではないと言ったのだ。
これは噂というレベルではない。
この十年、ひた隠しにしていた事実が明るみにでたのだ。

(……とうとうか)


きっと明日の朝には、この屋敷に村人達は襲ってくるだろう。
この屋敷に住む『人の言葉を話す化け物』を退治するために。
人間と言うのはそういうものだ。
カオスは、長い生の中でそれを学んでいた。
きっと、村人はこの事実に、恐れそしていたく憤慨するだろう。
いままで村人だと思っていたものが、それはとんでもない、化け物だと知らされて。
そして、裏切られていたとも思うだろう。
今までそしらぬふりをしてと、
いままで自分達がこんなにも、親切にしたというのにそれを、と。
そして今まで自分達が与えた、好意もおぞましく感じることであろう。
更には口を揃えて、いままで起きた不幸な出来事を、カオスとマリアのせいとして言うに違いない。
その様子が目に浮かぶようだ。
そして人間は、醜い事に一人では、罪悪だと思えることも、多数がそう思うのならば、それは善であると思うことがあるのだ。
きっと今ごろは、彼らは自分達─化け物を殺そうとするだろう。
もし、自分達がもっと人間の叶わないと、思わせる姿をしていたとしたら逃げるだろうに、自分達よりも弱い存在(姿かたちだけでも)と、分かった瞬間彼らは武器を持ち、多数で自分達を殺しにくるのだ。
こんなこと何度も、何度もあった。
今のこの時代、錬金術や、オカルトに対する認識は果てしなく薄い。
そんなふうな目に合うのは仕方が無い事だ。
自分のようなものが暮らすとすればよっぽど物分りの良い領主でないとである。
そしてその『もの分かりの良い領主』が、かなりの幸運でなかえれば出会えないと言う事も知っていた。







ぱちぱちっと、薪の燃える音が部屋に響く。
カオスは、椅子に座り、暖炉の中煌々と燃える炎を眺めている。
マリアは、床に座り、その膝にはジムが眠っている。
泣きつかれて眠ったのだろう、頬には涙の後が見える。
マリアは、ジムの髪をゆったりと撫でていた。


「潮時か………」

ぽつりと、呟くように、カオス。

「イエス・ドクター・カオス・99.958・パーセント・の・可能性で・村人たちに・明日・襲われます」

撫でる手はそのままに、マリア。


「……まあ、十年よくもったもんじゃ」
今まで普通の生活をしようとして、もった最長記録が一年だ。
ジムのためとは言え、それを考えると破格の長さである。

「イエス・ドクター・カオス・ジムのため・研究室・作らなかった」

「……ジムの世話で作るひまが無かっただけじゃ」
口調はそっけないが、炎の照らされている顔はてれくさそうだ

「…………ノー・ドクター・カオス・嘘つくの・下手」




「やかましいわい」



薪の燃える音と、ジムの健やかな寝息、ぽつぽつとした話し声。
いつもの、だけど明日からもう望むべくも無い、夜。


「のぉマリア…ジムの事なんじゃが」

ぴくりとその言葉に、ジムの手のひらが動く。

「……イエス…・ドクター・カオス」

「……幸い…あの子はこの村の人たちから、可愛がられておる」

「イエス」

「今、ココでジムを置いていけば、村人たちはこう、考えるだろう…化け物に捨てられた、哀れな人間の子供だ、と」
それは、カオスが十年ここに住んで得た、確信であった。

「イエス」

「ここの村人は、単純だがその分、純朴で、本質的には人もいい……」

「イエス」

「この闇夜に紛れて……」


逃げ様と言おうとした瞬間




どんっと



床を叩く音がした。


はっとその音のした方を見ると、その床を叩いた人間…ジムは泣いていた。


「……だ。」

感情の高ぶりを抑えきれないのか、ふるふると震えている。

「嫌だっ!!!!!!!!絶対に、絶対に、嫌だっカオスとマリアと離れるなんて嫌だっ!!!!」


「…ジム」

「なんでなんでなんでっ!!カオスもマリアも、ダイスキなのにっなんで人間ってだけで離れないといけないの?」

「…ジム・マリア・アンドロイド・人間じゃ・ありません・体の・90パーセント・以上は・金属で・できています」


「それがなんだよっ!!!そんなこと関係ないよっマリアはあったかいもんっ!!」

「マリア・体温・有りません」

「でもっずっと僕を抱きしめてくれてたよっ!嫌なことがあると抱きしめて慰めてくれた!僕にはすっごくあったかったよ!!」

「それは・ジムの・錯覚です・」

「錯覚でも何でもっ!!!!」


そんなこと関係ないんだっ!!!!!!



続く

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