ザ・グレート・展開予測ショー

とらぶら〜ず・くろっしんぐ(1)


投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(03/ 7/11)




 霊能力と超能力、この二つは基本的に同じエネルギー基盤の上に成り立っている。

 例えば、ひのめの念力発火とタマモの狐火。

 念力発火の放熱システムは、念動力の延長線上にある。
 片や、狐火は霊力の『炎と言う概念』への直接変換だ。

 斯様にプロセスに違いのある双方の能力だが、にも関わらず『念力発火封じの御札』でそれぞれを阻害する事が出来てしまう。 基本的に一定範囲内の火を熾そうとする霊力の流れを、その札は阻害効果の主たる対象としている為だ。

 では、超能力と霊能力をどこで分けているかと言えば、肉体と霊体、どちらで扱っているかだったりする。

 超能力は、基本的に大脳での回路形成が使えるかどうかで決定し、生まれつき乃至は突然使えるようになる。 大半の能力者は超度が変わる事無く、強い能力者は稀少だった。
 対して霊能力は霊体の質が全てを左右し、能力として自在に使える様になる為には、ある程度の修練を要求される。 限界は有るにせよ、強くも弱くも成り得るモノだ。

 簡単に纏めれば、基本的に超能力者は肉体依存の霊能力者なのだと言う事。







 とらぶら〜ず・くろっしんぐ   ──その1──







「…で、私にやらせようって事、ママ?」

 何気ない話の中に織り交ぜて、厄介な仕事を請け負わせようとした美智恵の言葉を、美神はそう切り返した。

「そうよ」

 すぱっと答える。 下手に誤魔化すより、交渉が楽だからだ。

「私のトコ、今は国内に割ける人手が無いのは知ってるでしょ?」

 東南アジアを舞台にした闇ブローカーによる、取り扱い禁止オカルトグッズの不正売買の一斉検挙に、極東方面の各オカGは大量に人員を投入している。

「だからって民間GSに、BABEL絡みの仕事を周す?
 それに、アソコって内務省の特務機関でしょ? うちにはタマモがいるのよ、何かの弾みでバレたらどうする気よ?!」

「だ、大丈夫よ………………たぶん。
 ほら、あの子の件は官房長官と国防省の独断だったから、万が一バレても手の出し様は有るし…」

 BABEL、それは内務省が設けた超能力支援研究機関である。
 オカルト絡みの事件に対してICPO内に作られたオカGの様に、超能力絡みの問題に対処する為作られた組織だ。 発起人が特に超能力者に対する偏見を無くす事を目論んで居た事と、お役所間での綱引きの結果、特務機関として設置され国内での発言力はかなり高い。

「ママも結構いい加減よね…」

 むっとしながら、それでも美神には何処か諦観が見える。
 結局、美智恵には頭の上がらない自分を自覚しているからだ。 それに自分の母親が、こうと決めたらあらゆる手管を駆使してソレを成し遂げてしまう人間だと、誰よりもよく知っている事もある。
 加えて、美智恵の家族に対する甘えみたいな部分が有る事も確かで、美神自身それを何処かしらで望んでいるのもまた確かなのだ。

「ま、とにかくお願いね。
 あちらのエージェントが後10分ほど……10時過ぎにはここに来る筈だから」

「ちょっ… ママ?!!」

 端から断らせてなど貰えなかったらしい。
 母親の行動に、美神は諦め混じりの溜め息を吐く。

 覆い被さる様に遠くから、ローターの風を切る音が聞こえてきた。

 ・

 ・

 ・

「は、初めまして、BABEL所属、現場運用主任、水元光です」

「美神除霊事務所所長、GS美神令子です。 よろしく」

 握手と挨拶を交わしあう。

「後ろに居るのは、ウチのスタッフ。 GS見習いの横島、同じく氷室、実務スタッフの犬飼と、後もう一人居るんですが、そちらの紹介は戻った時にでも」

 横島、おキヌ、シロと続けて紹介する。
 タマモは厄珍堂にお使いに行っていて、今は席を外していた。

「みなさん、よろしく。
 で、お話は何処までお聞きになっていますか?」

 横島達にも頭を下げた後、すぐに水元は話を切り出した。

「オカルトGメンから聞いているのは、そちらの作業を悪霊が邪魔しているらしいって事くらいね」

「では、改めてこちらから」

 そう言って資料を取り出す。

「一昨日、超能力者による誘拐事件が発生しました。
 犯人は一人。 逃走途中に見咎められた上、逃走途中に長野山中で起こした事故の為、すぐ目の前に在ったドライブインに人質と共に立て篭っています」

「なんか聞いてると、単純な事件みたいだけど?」

 自分達にお鉢が回ってきた理由が良く判らない。 不審気に美神は尋ね返した。

「それが、その建物周辺を無数の幽霊が取り囲んでまして…」

 頭を掻きながら、水元は大きく伸ばした現場の写真を一同に見せた。

「なんか、おキヌちゃんが戻ってきた時を思い出すなぁ」

「懐かしいですね」

 横島の呟きに、おキヌが微妙に嬉しそうな声音で返す。
 が、その当時はまだ山に居たシロが、仲間外れは嫌だとばかりに口を挟む。

「何の事でござるか?」

「あぁ、後で話してやるよ」

 そんな話をしながら、3人はそれでも写真に集中していた。

 山中の少し開けた場所。 そこに建つ古ぼけて看板の傾いだログハウス風の建物の周りを、あからさまな悪霊の群れが取り囲んでいる。
 近くには、それがエンコした車なのだろう。 ボンネットが開いている、あちらこちらに傷の付いた軽車両が、小さな祠の様な物に突き当たって停まっている。
 これでは、確かにGS方面の人材でないと対応出来なかろう。

「これらの霊体と犯人との相関関係は良く判らないものの、状況が状況だけにオカルトGメンに協力の打診をしたのですが…」

「タイミングが悪かったわね」

 打診した時には、前述した大規模な取り締まりの為に、Gメンの8割近い人員が既に日本を離れていたのだ。 仕方なく、民間業者を仲介して貰わざる得なかった。

「で、相手に関しては?」

「現在、判っているのは犯人が超度5程度のテレパスらしいと言う事。 それと、少々精神的に混乱が見られ…」
「ぶっちゃけた話、(ピー)って事?」

 すぱっと切り返されて、水元のこめかみに汗が垂れた。

「あまりそう言う表現はですねぇ…」

「どう言い繕っても、(ピー)は(ピー)でしょうが」

 言い切る美神に、苦笑いを浮かべて彼は話を変えた。

「で、本人と人質の確保はBABELのスタッフで行いますので、あなた達には突入に先立って周囲の除霊をお願いします。
 ウチでは、アレを如何にかするのは難しいですし、人質の安全にも支障が出ますから」

「じゃ、悪霊の方だけってコトで」

 オカGから、既にある程度の報酬の確約は取ってある。 美神にしてみれば、分担が少ないほど都合がいい。

「それでは、すぐにでも現地へ行きたいのですが、よろしいですか?」

 人質の事も有り、早いに越した事は無い。 既に2日が経過しており、体力的な心配も出て来ているのだ。

 水元の問い掛けに、美神はスケジュールを脳裏に浮かべた後、すぐに頷いた。

「横島クン、準備を。 相手が相手だからおキヌちゃんをメインで行くわ。 それに合わせて」

「はい」

 返事をするなり、手慣れた作業へと横島達は向かった。

「彼らの支度が済み次第動けます。
 移動手段の手配は宜しく」

「ウチのヘリを残してありますんで、それで」

 頷くなり、美神も着替えをしに席を外した。


 【続く】



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……ぽすとすくりぷつ……

 超能力や霊能力に関する記載は、あくまでこの話に都合のいい纏め方をしてありますので、その辺ご注意下さいまし。

 って、そんな事はともかく。

 いや、ほら…
 誰もやんない内に、とか、つい思っちゃって(爆)

 前の『雪』は3話目を載せた辺りでほとんど書き終わってたのだけど、それと違って今回は完全な見切り発車なので、掲載間隔はかなり開くんじゃないかと思われます。 …しかも現時点では、終わりまでのコンテがきれてません(^^;
 それ以前に、あっちもこっちも止まってて、ここを見ててもレス入れる余裕、あんまりなくて…(苦笑) これ以上、連載を増やしてどうしようと言うのだ、私(泣)

 それはそれとして、椎名作品間でのクロスって、大丈夫だったよねぇ?(^^;
 …ダメだったら、どうすべ(爆)

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