ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その31(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 7/10)














「はぁはぁ!どこ行ったのよ!?」

かすみは逃げるように駆け出した京華を追ったもののその速さについていけずに見失ってしまった。
ただ、階段を駆け上ったから屋上のどこかにいるのは確かなのだが・・・そのとき

ガシャン!ガシャン!!

夜風に流れ何かの音がかすみの鼓膜を揺らした。
一体なんだろうと思い音源に近づいてみるかすみ・・・・そして・・・そこにいったのは・・・

ガシャン!ガシャン!!

両手を躍起になって屋上の金網フェンスに叩きつける京華の姿だった。

「京華!何やってんの!?ケガするわよ!」

「ぐっ・・・ううッ・・・・」

「・・・・・京華。・・・・あなた・・・・泣いてるの?」

かすみに両手を掴まれた京華は崩れるようにその場に膝をついた。
その瞳から涙が流れ頬を濡らしている。

「すまなかった!!?7年前、私とお母様を苦しめて!お母様を殺して!!
 それを今さら!今さらっ!!だったら・・・わたくしの・・・わたくしのこの7年間は一体何だったの!!!?」

「京華・・・」

京華の慟哭。
この少女の7年間は『復讐と恐怖』・・・・この二つで成り立っていた。
復讐・・・・母を死ぬことになった原因、京ニと京介・・・・しかし既に前者はいなく後者は意識不明、
京華はいつか目覚めるであろう後者に復讐を誓い修行をしてきた。
恐怖・・・・自分の人生を狂わせた京介がいつ目覚めるのだろうか、目覚めたらまた自分はあの辛い日々に落とされるのではないか、
そんな恐怖感に襲われながら過ごしてきた日々。
誰かを恨んで、憎んで、恐怖して・・・・・しかし・・・そうでもしなければ京華は自分を保てなかった・・・
辛くて、悲しくて・・・例えかすみと和江をいう理解者がいても母を失ったあの日の衝撃は癒すことは出来なかったから。

「は、はははははは・・・うふふふふふ」

「きょ、京華!!?」

京華の突然の笑い声にかすみは思わず後ずさった。
しかし、京華は額に右手で顔を覆いながらさらにその笑い声のボリュームを大きくする。

「あははははははははは!!!そうことですの!!?あははははは!!!」

「ちょっと・・・どうしたの?」

「ふふふ、ねぇ・・・かすみ・・・・お母様は何で死んだと思う?京二伯父様が人造妖怪を出したから!?
 おじい様がわたくしを過度に鍛えたから!?」

「え!?それは・・・」

かすみは思わず答えに詰まる。
この7年間なるべくそのことには触れないようにしてきたし京華自身も語ることは少なかった。
それが今は自分から聞こうとする友人に戸惑いを覚えたからだ。

「おじい様は7年前のあの日まで・・・厳しい人だけどあそこまで悪い人じゃなかったわ・・・
 あそこまで変わってしまったのは・・・・」

「京華・・・・!!?」

かすみは思わず声を張り上げてしまう・・・。
知ってるからだ・・・京介が豹変した理由・・・それは・・・

「美神家・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あなたも知ってるわよね・・・・」

「・・・・・・・・・・うん」

「ふふふ、そうよ・・・・美神家がおじい様を排斥なんてしなければこんなことにはならなかった!!
 お母様も死なずに、わたくしと楽しい日々をすごしてはずですわ!!!」

「・・・・あ、あ」

月の光に照らされ恍惚とした表情で語る京華にかすみは戦慄が走った。
こんな感じは7年前のフラウが死んだとき以来・・・・壊れ、狂い・・・それでしか自分を保てない。
でも・・・やはり辛くても・・・はっきり言ってやるべきだ・・・・かすみはそう思い勇気を振り絞って口を開いた。

「京華・・・それは違」

そう言いかけたとき・・・

ギュッ

「え!?」

温かく柔らかな感触がかすみの前面に訪れる。
京華がいきなりかすみに抱きついたからだ。
さすがに何だろうと思い目を丸くするが・・・・・かすかに聞こえた・・・京華のすすり泣く声が。

「京華・・・・」

「言ってよ・・・・・お願いだからそう言ってよ・・・ぐすっ・・・・ねぇ・・・かすみちゃん・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

かすみの身体はまるで時が止まったように動かない、
京華の泣き声を聞いたのは何年ぶりだろう・・・いや、分かる・・・7年振りだ・・・
あの7年前から喜怒哀楽の感情を表に出すことは少ないからだ。

「お願いだからぁ!ねぇ!かすみぃ!お願いだからぁ!!」

まるで子供のように泣き叫ぶ京華。
辛いから・・・悲しいから・・・心が壊れてしまいそうだから・・・・だから・・・かすみは・・・

「・・・うん」

と短く答えることしか出来なかった。


そして・・・・・・・・・・────三世院京介が亡くなったのはこの2か月後のことだった────



京華過去編 完
























カーン!キーン!!

神通トンファーと即席木剣が激しくぶつかり合う。
お互いに息を切らせ相手の隙を伺い、霊力を込めるかすみと幸恵・・・

「だから!!私はいつまでも京華の味方でいなければならないのよッ!!!」

ガンっ!!

裂ぱくの気合と共に繰り出された一撃がこの戦いが始まって初めて幸恵の頭部に決まった。
その衝撃にたまらず後ずさる幸恵。
しかし、かすみも幸恵の恐ろしいまでの実力にそれ以上追撃することを戸惑った。
幸恵は額からツーと流れる血を袖で拭うと・・・冷めた瞳でかすみをみつめる。

「あなた達の過去に、想いに・・・・同情も理解も共感もする・・・・だけど」

幸恵はモップの柄をまるで鞘にでも収めるように左脇に収めた。

「それでも・・・・ひのめを傷つけることに納得することも許すことも出来ん!」

そして刀でいうところの柄(つか)の部分に右手を添える。

「(居合い抜刀の構え・・・・・。)
 京華ならこう言うわね・・・・わたくしに同情も理解も納得いらない・・・・って」

こちらも不適な笑みを浮かべながら構えをとった・・・最後の力を込めて。








ガッ!ドス!ドガッ!!

夕暮れの校舎裏に響く打撃音。
こちらもひのめと京華の戦いは続いていた。現状は・・・ひのめが防戦一方。

「美神家さえ!美神家さえいなかったらぁっ!!!!」

悲痛な叫びと共に繰り出される京華の拳、
ひのめはそれを甘んじて受けるようその身体に叩き込まれていた。

『こら!ひのめどうしたわさ!!?』

その状況にさすがの心眼も心配になり声をかけてみるが反応はない、
過去を見せたのは相手の立場、気持ち、そしてひのめと京華のつながりを感じさせ、
その中で成長を促すためだったが・・・・それは失敗だったのか?と心眼が思ったとき。

ついにトドメをさすべく今日一番の霊力を込めた京華の右拳がひのめの顔面へ飛んできた。
もう駄目・・・と思った瞬間・・・

グッ!

「なっ!」

ひのめはその右拳の外側へ避けるように上体を動かすと右手で京華の右手首を掴み、
そのまま左肘を隙だらけの右脇に叩き込んだ。

「ぐ・・・はっ!」

人体急所を突かれたことで息苦しさが京華を襲いその場に膝をつく。
ひのめからみれば絶好の追撃のチャンス。
だが、ひのめ攻撃などせずむしろ哀しみを浮かべた表情で京華に語りかけた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私は・・・難しいことは分からない・・・ママがしたことは正しいと思うけど、
 でもあなたが全て苦しみも辛さも背負って・・・・・ ・・・・ ・・・・そんなの悲しすぎるよ。 
 ・・・でも」

握りこぶしを作り、強い瞳で叫んだ。

「全てここで決着をつける!あなたの悲しみも辛さも悔しさも・・・ここで清算してあげる!!」

2、3歩下がり構えるひのめ。
そんな宿敵の姿に・・・・京華は複雑な思いで立ち上がるのだった。



                                   

                                     その32に続く




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あとがき

誰が何と言おうと『ひの記』はハートフルコメディです(挨拶)

まずは・・・・
過去編終わったあぁぁ(膝スライディングガッツポーズ←分かりにくい)
はぁ・・・もうひのめの過去編のときもそうだったけどホント収拾つくのかと不安の毎日でした (ノД`)

今回の過去編でやりかったのは母の愛情とかすみとの友情、京華が美神家を恨む理由・・・
なんですけど分かりにくかったですか?^^;

「結局京華の八つ当たりじゃん」
という冷めたツッコミだけはご勘弁をぉぉ!!
「京介の性格から考えて謝罪しないだろう」
というツッコミも勘弁して下さいぃぃ (ノД`)

いえ、決してツッコまれる部分を予想してるわけではありませんYO!(笑)
さて、『ひのめ奮闘記・学園バトル編(仮名)』も終局が近づいてきました。
ちゃんと完結出来るようこれからも精進します、今回も読んで下さってありがとうございましたm(__)m

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