ザ・グレート・展開予測ショー

とら、トラ、虎!42) そして卒業 


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 7/ 6)


深夜一時タイガーの自宅、部屋にはふとん1組と端に寄せられたコタツが並んでいた。
窓には今だ激しいみぞれまじりの雨が打ち付けている。

「 ・・・まさかおめえのほうからそうくるとは思わなかったぜ。 」
「 いや、さすがにこの暴風雨のなかで帰れとは言えんしー、
  それよりワシ、2階の事務所で寝るつもりで言ったんじゃが―― 」
「 気い使う必要ねえって。 おめえのこと信じてっからよ。 」

『 ・・・それはどう解釈すればいいんじゃろーか? 』

そう笑顔で答えた一文字は、コタツの中に入ろうとしていた。

「 一文字サンちょっと待ってクレ! 」
「 ん? 」
「 ワシがコタツで寝るケエ一文字サンは布団で寝てツカーサイ! 」
「 いーよ、おめえ退院したばっかなんだし、風邪でもこじらせたら大変だろ。 」

一文字は肩までコタツにもぐりこんでしまった。
動く気配のない一文字に対しタイガーは諦め、温風暖房を“強”にする。
そしてあらん限りのジャンバーなどの防寒着をコタツの周りに敷き詰めていった。

「 タイガー・・・ 」
「 これで少しは寒くないかノー。 」
「 ああ。 」
「 それじゃあ電気切るぞー。 」
「 ああ、おやすみ。 」


パチッ


あたりは真っ暗になる。

タイガーは自分の布団に入り横たわる。

―――そしてしばらくの静寂。

自分の寝ているすぐ横には、コタツで眠る彼女の頭が見えていた。

どきどきどきどき
『 はー眠られん!
  おなごを部屋に招いたことすら無きに等しいのに!
  う〜精神感能も使っとらんのにワシの虎が〜〜〜ワシの本能が〜〜〜!! 』

「 タイガー。 」
「 な、なんジャ一文字サン!? 」
「 私、おめえにどうしても言っときたいことがあるんだ・・・ 」
「 え!? 」

彼女のほうを振り向くと、彼女も自分のほうを向いていた。
暗いため彼女が高揚し、赤らめていることはわからなかったが、彼女の口調が幾分興奮しているように感じられた。

「 あ・・・さっき(前回冒頭で)ワシに言いかけてたことか? 」
「 ああ・・・そのことを話しにここに来たんだ。 わ、私な、その〜・・・・・・ 」

彼女は口ごもり、声が小さくなる。

どっどっどっどっ
『 バレンタインの夜、男と女、一夜を共に・・・これはもしや“告白”なのか!?
  ワシは今ようやくエミさんのことを諦めようと思うとるとこなのに、
  もう別のおなごに心を奪われてもいいのか!?
  いや、じゃが相手は一文字サン! 嫌いじゃない! むしろ、むしろ〜〜〜! 』

「 実は私、おめえの――― 」「 だー待ってクレ!! 」

「 !? 」

上半身を起こし、彼女の言葉を止める。

「 おなごの口から先に言わせるわけにはいかん! ワシが先に言う!! 」

「 え!? 」

「 わっしは、わっしは・・・・・・一文字サンのことが好うっきジャーーーーーー!!!!! /// 」 

彼女は黙って自分の懐に顔をうずめてきた。

「 わ、私も・・・あなたが好き。 」

「 一文字サン・・・ 」

「 タイガー・・・ 」

「 好うっきジャーーー!! 」



=☆



「 はっ! 」


目覚めるタイガー。

時計の針は3時を過ぎていた。
隣りでは一文字がスースーと寝ている。

ひそっ!
「 ・・・って、夢オチかいっ!! 」

一文字が寝ているため、小声で自分につっこむタイガー。

「 夢の中のワシよくあんなこと言えたなー、
  しかも一文字サンにあんなことを・・・・・・・・・はあっ、自己嫌悪ジャ、寝よ。 」

ばたむ・・・

「 ・・・・・・ 」




      ◆



・・・翌朝。

がちゃんっ・・・玄関の扉の音でタイガーが目覚めると、隣のコタツで寝ていたはずの一文字の姿が消えており、
一文字が寝ていたコタツの上には、コンビニで買ったと思われるパンやおにぎり、飲み物が並べられていた。




一文字は階段を下りて外に出ると、昨晩の雨もすっかりおさまり、いい天気になっていた。


「 ふぁ〜っ、結局ほとんど眠れんかったー。
  タイガーがヘンなこと言うから・・・・・・ったく、寝言全部つつぬけだっつーの。 」


一文字は顔を赤くし、口もとは緩ませながら昨晩のことを思いだしていた。

布団に入り10分で眠りだしたタイガーとは違い、一文字は寝慣れぬ環境のせいか、眠れぬ夜を過ごしていた。
1時間ぐらいして一文字は起き上がり、タイガーの顔を見て、
私が隣りで寝てるのによくもあっさりと寝やがったなー≠ニか、
幸せそうに寝てるなー≠ニか、顔に落書きでもしたろかー≠ニかいろいろ考えていた。
そんな時タイガーは突然寝言を話しだし、
一文字は顔を真っ赤にしながら、タイガーの寝言を聞いていたのである。
夢の中の自分が危険な目に遭っているのを察し、最後には殴り起こしたが。



「 ・・・でも私結局言えなかったなあ、“魔理”って呼んでくれって。 」



タイガーと出会って2年2ヶ月の間、ずっと“一文字サン”と呼ばれ続けており、
親しい友人からも苗字で呼ばれていた彼女にとって、最初はそんなこと特に気にしてなかった。

ところが、タイガーが寮に来て知り合った洋子や水樹が名前で呼ばれていくのに対し、
自分だけ今だ苗字で呼ばれ続けることに、少しだけ納得いかないものを感じだした。
そしてその2人がタイガーの事務所に本気で入所することを知り、
このままいけば所員の中で自分だけ苗字でずっと呼ばれることになる・・・
周りの者が特に気にするとは思わないが、自分はきっと気にする・・・
そう思い、入所前にタイガーに話す機会をうかがっていたのである。



「 あーもー 私らしくねえ!! 」


だだだっ
一文字は再びビルの階段を駆け上がった。
そしてタイガーの部屋の前に来ると、玄関のドアを思いっきり開ける。

がちゃっ!

「 タイガー!! 」
「 んっ!? 」

タイガーは、コタツで一文字の用意した朝食のパンを食べていた。

「 いいかタイガー!
  次から私を呼ぶときは苗字じゃなくて名前で呼べ!
  じゃなきゃ私は返事をしないからな!! いいな!! 」

ばたん!

一文字は思いっきりドアを閉めた。
タイガーはパンを口にくわえたままボーゼンとしている。



「 ・・・もご????? 」
























―――3月。


■六道女学院 卒業式■

一文字達の卒業式終了後。
一文字・弓・おキヌの3人は、卒業証書の入った筒などの荷物を持ち、校舎から外に出ようとしていた。
周りでは他の卒業生たちが記念写真を撮ったり、両親や友達と話しをしていたりしている。

そんななか一文字は両腕を広げ、思いっきり背伸びをした。

「 あ―――っ! ついに私たちも卒業かー! 」
「 学園生活もこれで終わりですのね。 」
「 なんだか泣けてきますね。 」

「 おーい、おキヌちゃーん! 」
「 あ、美神さん! 」
「 雪之丞も!? 」

校門近くにある六道家式神使之像の前には、手を振る美神とその事務所メンバーのシロ・タマモ、
そして横島の変わりに美神の事務所で働いてる雪之丞がいた。
おキヌと弓は美神たちのところに向かった。

「 卒業おめでとう! 」
「 おめでとうでござる! 」
「 みんなどうしてここに!? 」
「 学生生活最後の日ぐらい、迎えてあげないとね! 」
「 美神さん・・・ 」

目を潤ますおキヌ。

「 雪之丞、あなたも来てたの? 」
「 来ちゃ悪りいかよ、かおり。 」
「 いいえ、大助かりだわ。 」
「 は? 」
「 それじゃこれ持って。 」

弓は雪之丞に手にしていた荷物を全部雪之丞に渡した。

「 じゃ、私の家まで運んでくださる? もちろん車ぐらい用意してくれてますわよね? 」
「 ・・・俺はアッシーか?(怒) 」

「 御呂地村のご両親にはさっき会ったわ。
  これから事務所でおキヌちゃんの卒業パーティーするわよ! 」
「 わあ♪ 」

『 ・・・さてと、私は寮に戻って荷物の片付けでもしようかな? 』

少し離れた所で弓やおキヌの様子を見ていた一文字は、校門のほうに歩き出した。
その様子におキヌが気づく。

「 あ、一文字さん、よかったら一文字さんも――― 」

おキヌが言いかけたその時――



「 おーーーい 魔理サーーーン!! 」



今日は駐車場と化している校庭のほうから、ギブスの取れたタイガーが右足をかばいながら走ってくる。
黒のタキシードに蝶ネクタイ、いつかのクリスマスの時と同じ服装であり、手には花束を持っていた。

「 タイガー!? 」
「 魔理サン卒業おめでとう! これ花束! 」
「 あ、ありがと・・・ 」

巨体で目立ち、寮生活でタイガーのことを知っている卒業生も多いことから、その行為は周囲の注目を集めていた。
更に初めて名前で呼ばれたことにより、一文字は内心かなり動揺していた。

「 ワシのボロ車で来とるんじゃが、よかったら送っていくがー。 」
「 ああ・・・ 」
「 それじゃあ荷物ワシが運ぶケエ、貸してツカサイ。 」
「 ああ・・・ 」

一文字は動揺を隠すため、それ以上は話せなかった。
タイガーが花束以外の荷物を受け取ろうとした時、

ぼそっ
「 一文字サ・・・いや、魔理サン、呼び方これでいいカイノー? 」

「 ・・・ああ、ばっちりだ! 」

そして2人は校庭のほうへと向かった。
その様子を見ていた弓と雪之丞は・・・

「 雪之丞も彼の紳士ぶりを見習ってほしいものですわね。 」
「 ケッ、いってろ。 」



そして上機嫌の一文字が向かったタイガーの愛車の所には、同じ花束を持った水樹と洋子がいた。

「 お、おめえらなんでー!? 」
「 なんでとはなによ。 私達もタイガー除霊事務所の所員予定なのよ。 」
「 それとも自分だけだと思うとったんか? 」
「 うっ・・・! 」

BUOOOO―――N

「 それじゃあミナサン、寮まで送るケエ乗ってツカーサイ! 」

「 はーい! 」
「 頼むから事故らんといてなー! 」






サアアアア―−‐ッ

暖かな風がふき、早咲きの桜の葉が穏やかに揺れた。






ぽりぽり・・・

「 ま、いっか♪ 」







一文字魔理は、仲間の元へと駆け出していった―――
















第4章 完

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