ザ・グレート・展開予測ショー

とら、トラ、虎!41) バレンタインミッドナイト


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 7/ 6)


2月14日の夜、タイガーの自宅。
8畳の部屋の中央には、タイガーと一文字が同じコタツの中に入っている。

一文字はコタツに入って寝転んだまま、タイガーのほうを見てたずねた。


「 ・・・あのさ、タイガー。 」

「 なんジャ、一文字サン?  」

「 だからそのー・・・・・・ 」

「 ? 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ〜〜〜やっぱいいや! 」

一文字は顔を赤くし、うつ伏せた。
真向かいに座っているタイガーの場所からは、一文字のその表情を見ることができない。
少しの間沈黙が続いた後、今度はタイガーのほうから一文字にたずねた。

「 一文字サン、ちょっと聞いていいか? 」
「 なにー? 」
「 その〜〜〜、ワシのことどう思う? 」
「 は!? 」

一文字は驚いた様子で、寝転んだまま振り返る。

「 いや、ワシ〜日本に来てもう2・3年になるんじゃが、
  エミさんの期待に応えられるよう、ワシなりに頑張ってきたつもりジャ。
  それなのにエミさん、ピートさんにはチョコあげといてワシには一度もくれたことないし・・・
  まあワシは一度エミさんにフラレとるわけじゃし、未練がましいのもわかっとるんじゃが・・・。 」

タイガーが両手を組んで指をもぞもぞさせながら話してると、一文字は少しイラつきながら起き上がり、タイガーと対面した。

「 ・・・おめーなあ。 」
「 え? 」
「 そういうことは男友達に相談しろよ。 女の私に相談することじゃねーだろ。 」
「 あ・・・そうじゃの。 すまんかった。 」

タイガーは、人差し指で顔をかく。

「 一文字サンなら、横島サンやピートサンみたいに話しやすそうじゃからつい・・・ 」
「 つい? それじゃ私が男っぽいって言いたいのか? 」
「 あ、いや〜そんなことは決して〜〜〜! 」

一文字に睨まれ、顔から大量の汗をかくタイガー。
しばらくして一文字はため息をついた。

「 ハアッ・・・別にいいよ、私も自覚してることだから。 」
「 ・・・すまん。 」
「 いいって。 いいから続き話せ。 」

「 ・・・エミさんはああ見えてものすごく一途なんジャ。 だってそうじゃろ?
  ピートサンと出会って3年経った今でもピートサンのことを想うとる。
  更に言えば、バンパイアハーフのピートサンは、この先何百年も生き続けることができるんじゃぞ。  
  たとえ一緒になっても、ピートサンはほとんど変わることはないのに、ワシら人間は老いていく。
  まあそんなことぐらいみんな承知の上のことなんじゃろーが・・・。 」

「 ・・・・・・。 」

「 やっぱりエミさんも、好きな男の前で他の男に親しくされとうないじゃろーし、
  特にピートサンの前ではいくらワシであっても、迷惑に思われとるみたいなんジャ。

  ・・・ワシ最近思うんジャ、ピートサンなら諦めてもいいんじゃないかって。
  かっこいい男だけなら他にいくらでもいるはず・・・
  じゃがもちろんピートサンは顔だけじゃない、優しい、本当にいい男ジャ。
  おなごたちが惚れるのもようわかる。 エミさんもそこんとこわかっとるんじゃろーノー・・・。 」

一文字は、エミに対して初めて諦めモードに入るタイガーを見ると、コタツの上に積まれてあるチョコ
(タイガーがもらった退院祝いを含むチョコと一文字が下級生にもらったチョコ、合わせて10数個)
の中から一つを取って話しだした。

「 ・・・おキヌちゃんから聞いたんだけど、美神さんは横島にチョコあげたことがないんだってさ。 」
「 え? それはワシもきいたことがあるが・・・それが? 」
「 でも美神さんは西条さんにはあげていた。 今回もな。 」
「 ?? 」
「 ある意味似てるだろ、エミさんと美神さん。 」
「 そうかのー、全然違うと思うがー。 」
「 仮にもし、美神さんが横島のこと好きだとして、横島にチョコあげると思うか? 」
「 ん〜〜〜ないな。 」
「 どうしてそう思う? 」
「 それは・・・う〜んやっぱり年下じゃし、仕事上は弟子と師匠じゃしー・・・ 」
「 それがそのままエミさんとおめえに当てはまらないか? 」
「 ・・・・・・あ! 」
「 まあエミさんがタイガーのことをどう思おうと、
  よっぽどのことがない限りあの人はおめえにチョコなんか渡さないだろーな。 」

タイガーは考え込み、少しの間沈黙が続く。

「 どっちにしても、エミさんはワシの師匠で恩人ジャ。
  エミさんがピートサンといて幸せなら、それでいいかもしれん・・・。 」

肩を落として呟くタイガー。
一文字はタイガーから目線をそらし、頭をかきながら助言した。

「 そう思う前に一度ピートさんに聞いてみたらどうだ? エミさんの事どう思ってるんだって。 」
「 そうじゃノー・・・あ! 」
「 どうした? 」
「 ピートサン、今日のパーティーの後ヨーロッパのほうに戻るとか言っとった。
  Gメンの研修やら仕事やらで、日本とあっちを行ったり来たりしとるからノー。 」
「 タイミング悪いなあ〜おめえも。 」
「 あ、いや、ホントはもっと早くあっちに戻る予定だったようじゃが、
  ワシの退院日まで残っといてくれたらしいんジャ。 このことは西条サンから聞いたんじゃがの。 」

一文字は少し微笑む。

「 やっぱいい奴じゃん。 」

タイガーも微笑む。

「 ・・・ああ。 」



タイガーは思った。

あの人に認めてもらいたい
あの人のお役に立ちたい
あの人を喜ばせてあげたい

そう思うあの人には幸せになってほしい。

親友の彼ならきっとあの人を幸せにするだろうと。 きっと・・・・・・



「 あ、雨だ。 」

「 え? 」


ザ――――――――――――――ッ


部屋の南側の窓にかかってるカーテンの間から、みぞれに近い雨が強風に流され、窓に降りつけているのがうかがえた。
タイガーは時計のほうに目をやると、もうすぐ11時になろうとしていた。

「 さう・・・どうりで寒いわけだぜ。 」

一文字はコタツの中に両腕を入れなおし、辺りを見回す。

「 この部屋暖房いれてねえのかよ。 」
「 ああ、ワシ寒さには強いからノー。 普段はこれ(コタツ)だけで充分ジャ。 」
「 ふ〜ん。 」
「 寒かったら暖房のスイッチ入れよう。 」

ぽちっ・・・リモコンで暖房のスイッチを入れた。

「 ・・・それより寮のほうは大丈夫なのか? 時間も遅くなってきとるようじゃが。 」

一文字は目を細め、あごをコタツの上に乗せた。

「 おめえこの大雨の中、原付で帰れってのかよ。 」
「 そ、そういうわけじゃのーて・・・! 」
「 門限なんかとっくに過ぎてるよ。 いま帰ったら余計目立って寮長に怒られるぜ。 」
「 そうかー・・・ 」
「 ま、明日休みだし今晩泊めてくれ。 」

「 ああ。 ・・・・・・・!? 」


周囲の時間が凍りついたかのように2人は固まる。

その間約6秒。

マンガで言うと2コマぐらい、セリフなしの同じカットが並ぶといった所か。


「 なんじゃとーーー!! <ガンッ☆> はう!!(涙) 」


タイガーは驚いて思わず立ち上がろうとすると、コタツの角におもいっきりギブスをぶつけてしまい、
衝撃が骨折した右足にジーンと響いた。
そしてそのままその場に倒れ、右足のギブスを抱えてうずくまる。

「 大丈夫かおい!? 」
「 ぬおおおお! だ、大丈夫ジャ、それより今言ったことは―― 」
「 冗談だよ、小降りになったら帰るよ。 」
「 な、なんジャ、あはは! 」
「 わりい、そんなに驚くとは思わなかったんだよ。
  ・・・だけどただ泊まるぐらいでそんなに動揺するなよ。 なに考えてんだおめえ。 」

一文字は再び目を細めて言うと、

かああっ
「 あ、いや、あ〜、その〜〜〜! 」

タイガーは真っ赤になり、口ごもる。

「 まあいいや、それまでテレビでも見させてもらうぜ。 」

一文字はテレビのスイッチを入れ、お笑い番組にチャンネルを合わせた。

「 あ、それじゃあ飲み物でも入れようか、コーヒーでいいカイノー? 」

タイガーはそう聞きながら、ゆっくりと立ち上がろうとすると、

「 いいって私やるから。 冷蔵庫開けるぜ。 」
「 いや、それはやめといたほうが・・・! 」

ぱかっ・・・一文字は台所に向かい冷蔵庫の中を覗きこんだ。

「 うわっ、ちょっと匂うな! 」

冷蔵庫の中の野菜や生ものなど、半分以上の食材は腐っていた。
これが夏場だったら、とんでもないことになっていたであろう。

「 ワシ1ヶ月も入院しとって、昨日ここに戻ったばかりじゃから。
  そのうち落ちついたら処分するつもりなんじゃが―― 」
「 んじゃ腐ってそうなヤツは捨てるぞ。 」

一文字は近くにあったゴミ袋の中に生ゴミを入れていく。

「 そんなことせんでも―― 」
「 いいって。 それよりタイガー、食材結構多いけど自炊なんかするのか? 」
「 ああ、昔からサバイバルな生活しとるからノー。
  お金もないし食う量も多いし、やっぱ自分で作ったほうが安上がりじゃからノー。 」

『 そういやこいつ、寮でも食堂で働いていたし・・・私より料理うまいだろうなー。 』

冷蔵庫を片付けながら、ちょっと落ち込む一文字。
その後一文字はお湯を沸かしてインスタントコーヒーをつくり、テレビを見ていたタイガーに渡した。

「 ほらよ。 」
「 ありがとう。
ZZZZ・・・
  ・・・? コーヒーの素の量多くないか?
  よく見たら粉が浮いとるし、全部溶けきってないようじゃが・・・。 」
かあっ
「 いいんだよ! これぐらい入れといたほうが! 」

心の中では、しまった! 入れすぎた! と後悔する一文字。 そして――

「 そんなに苦けりゃ、チョコの甘さで口ん中ごまかしゃいいだろ! 」
「 いや、そこまですることでもないんじゃが・・・。(汗) 」



そのあと2人はテレビを見ながら時間を過ごした。
そして時間はあっという間に過ぎていき、12時を過ぎ、日付が変わっていた。
豪雨は今だ止むことはない・・・



ザ――――――――――――――ッ


「 ・・・雨、止まねえな。 」

「 ああ・・・ 」


ザ――――――――――――――ッ


「 ・・・一文字サン。 」

「 ん? 」








「 ・・・・・・泊まっていくか? 」








―――続く

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