ザ・グレート・展開予測ショー

彼の大きさ(10−0)


投稿者名:ANDY
投稿日時:(03/ 7/ 1)

「ほ〜ほっほほ♪う〜ん。この匂いが好きなのよねえ〜」
 札束に囲まれ、この世の幸せ、という顔をしているのは美神令子だった。
 彼女の周りには一体いくらなのだろうか、数えるのも馬鹿らしいほどの数の札束があった。
 いつそんなに稼いだのだろうか?
「ほ〜ほっほっほほ。って、あんたなにすんのよ!」
 突然、令子はある一角に指をさし怒鳴った。
 その指先にいたのは、横島の影(シャドー)だった。
「よう、姉ちゃん!相変わらずええ乳しとるの〜」
「って、私のお金に触るなあ!」
「ええ?ええやん。もうあんたには必要あらへんやんかあ」
「?何言ってんのよ。この世で一番信じれるのはお金でしょうが!」
「そりゃあ、現世ではそうかも知れんなあ〜」
「わかったんなら返しなさい!今なら九割殺しで許してあげるから!!」
「え〜?でも〜」
「なによ!」
「姉ちゃん。もうこの世の人間じゃあないんやでえ」
「へ?」
「ほら。見てみい。お迎えが来た見たいやでえ」
 そういってシャドーが指した方角を見ると、そこには―
「げ?!な、なんでマルサの人間が?」
「何を言う!私は死神だ。まあ転職する前は脱税を取り締まる仕事についていたが。ふふふ。美神令子。ここであったが百年目!!今こそたまりにたまった脱税分の金額を払ってもらおうか!」
「い、いやよ!何で私が払わなくちゃいけないのよ!」
「義務だ!」
「そんな義務認めた覚えはないわよ!」
「え〜い。問答無用!!召喚!!!税金鳥たちよ!!」
「いや〜!!私のお金があ!!」
 死神が呼び出した、カラスに似た鳥たちはあっという間に札束を持ってどこかへと飛んでいった。
「う〜む。むむ?!」
 どこから出したのか、端末に何かを入力していた死神は突如うなって顔をしかめた。
「残念だよ。美神令子」
「な、なによ」
「・・・足りないんだよ」
「へ?」
「だから、金額が不足してるんだよ」
「そ、そんな」
「ということで、君には肉体労働で払ってもらうことになったから」
「い、いやあああああーーーーー!!!!」
「さあ、汗水たらして働こう!」
「は、離してえ!あ、あんた助けなさいよ!!」
「あんじょうきばりいやあ!!」
 どこからともなく流れ出した『ドナドナ』を聞きながら、令子は強制労働所に連れて行かれた。
 シャドーの、「私うれしくって涙が止まりません」という顔を見ながら。
「だ、誰かあ、助けてえ!!ママ!!先生!!・・・よ、横島くーん!!」
「はい」
「え?」
 突如現れた暖かい光に包まれた瞬間、令子の耳には声が聞こえた。


「横島君!?!」
「あ、や〜っと、起きたのねえ」
「え?ヒャ、ヒャクメ?」
「そうなのねえ〜」
 令子は突如聞こえた声の主を見て驚いた。
 そこには神族の一人であるヒャクメが、自分の端末に何かを打っている姿だったからだ。
 余談だが、一瞬、ヒャクメが死神マルサに見えたのは令子だけの秘密だ。
「こ、ここは?」
「ここは病院なのねえ〜。美神さんたちがここに運び込まれてちょうど六時間ほどたったのねえ。あ、お腹はすいてます〜?何か持ってこさせましょうかなのね〜」
「病院?六時間?」
 令子の質問に答えながら、ヒャクメは端末に打つ手を止めようとはしなかった。
 そんな様子に気づかず、令子は思ったことを口に出していた。
「あ、そうそう。ほかの人たちも怪我はしてるけど命に別状はないので安心していいのねえ」
「怪我?どうして?って、何でここに百目が?!」
 やっと、頭が覚醒したのか、令子はもっともな疑問を口にした。
「人間界を監視してたら強力な霊波を感じたから調査しに来たのねえ〜。そしたらみんなが東京タワーの下で気を失ってたのねえ〜」
「気を失ってた?ちょ、ちょっと待ちなさいよ!狂乱角は、魔族はどうなったのよ!」
「それは―」
「それならタダオ様が追っ払ったよ」
「へ?」
 突如として聞こえてきた第三者の声と、その姿を見て令子は二重の意味で驚いた。
「ああ、プラムちゃん」
 ヒャクメはどうやら顔見知りのようで、プラムと呼んだ少女に笑顔を向けた。
 プラムという少女は、蝶のような羽根を持つ妖精だった。
「男連中も全員目が覚めたよう」
「わかったのねえ」
「あ、あんた誰?」
「私は、風の小妖精のプラム。って、あの時名乗んなかったっけ?」
「あの時?」
頬を膨らませながら答えるプラム。
 その仕草を見たら、血の涙を流すものが出るほどかわいかった。
「どうやら美神さんは記憶が混濁してるみたいなのねえ」
「ふ〜ん。ん?じゃあ、あの時のことも?」
「多分そうなのねえ」
 令子を蚊帳の外に、二人は納得しあっていた。
「ちょ、ちょっと。何よ、あの時のことって?!」
 それを見て面白くないのか、令子は声を上げて事情を聞こうとした。
「まあまあ、『百聞は一見にしかず』っていうのねえ。みんなと一緒に私が説明するのねえ。さて、どこか会議室でも貸りなくっちゃなのねえ」
 そういうと、ヒャクメはどこかに連絡を取った。
「あ、じゃあ、私はタダオ様に知らせとくねえ」
 そういってプラムは病室から出て行った。
 一人残された令子は、ベッドの上で一人呆けていた。
「・・・タダオ様って?」
 訂正。プラムの言葉を理解しきれず、フリーズしているようだ。

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