ザ・グレート・展開予測ショー

やかま椎やつら(10話目Part1)


投稿者名:ライス
投稿日時:(03/ 6/28)


 






 タッタッタッタッタッタ………!






「ハァ、ハァ、ハァ………ッ!」







 誰かの足音。そして途切れる息遣い。それらの音は次第に速くなり、切迫感が増していく。


 追い詰められた鼠の様に。


 そして……、





 ひゅごごごごごごごぉぉ〜〜〜……………、


「うあぁあぁぁあぁぁぁあああぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁ〜〜〜っ!?」



 カッ!!



 悲鳴が上がると同時に、瞬く間に閃光が放たれた。そして爆発の轟音が周囲に響き渡る……。

 
 ズガァァァァァァァーーーーーーーーーンッ!!





 ………夏のある蒸し暑い昼の出来事であった。







 やかま椎やつら


  第10話 過激な淑女!!






 
 夏真っ盛り。
 
 社会人には忙しい季節かもしれないが、学生、特に中高生にとっては休みとなる最高の季節である。



 しかし、彼は違っていた。



「あち〜〜〜っ。しかし、今日も暑いなぁ……。」


 横島忠夫その人である。


 GS稼業は夏が稼ぎ時。それに比例して当然の如く、彼のバイトも仕事が増える。しかし、今日は運良く、午前だけの仕事だったので、こうして日差しの強い帰り道を歩いている。

「まぁ、いいじゃない?お仕事も早く終わったんだし。そうだ、プールにでも行く?」

「プールかぁ……。

(横島の妄想)

 水着のルシオラ。しかもハイレグ。胸は………、うん、まぁ……大きくはないけど。
 スタイル……、文句無し。彼女と一緒にプールで遊べる時間………priceless!!


 ヨシ、行こう!!」

 いきなりルシオラの手を握って、目を血走らせる横島。彼女は少し驚いたが、すぐに微笑む。

「そう、こなくっちゃ!じゃあ、水着とか取りに行かないと。じゃあ、私、取ってくるから、先にプール行ってて。」

「おう。頼む。」

 彼女は空高く舞うと、そして見えなくなっていった。

「さぁてと、行くか……、ん?」

 プールに向かうために通りを歩き出す。その時。彼は自分が呼ばれる声を。

「よ、横島ク……ン……。」

 後ろを振り向くと、そこには服がボロボロになりよろめきながら走ってきた、西条弟が居た。

「ちょ、ちょうど良かった、た………、助けてくれ〜〜〜〜〜〜っ!?」

 いきなり西条弟は、横島の胸倉をつかむと、切羽詰った表情で彼に迫った。

「な、なんだよ、藪から棒に……、それに俺はお前を助ける義理なんて持ってねぇからな!!」

「そ、そんなこと言わずに頼む!!早くしないと、アイツが……!」

「アイツ?」




「見つけましたわよ?お兄様………!」

「!!」

 聞き慣れない声を横島は聞く。すると、横島の目の前には、いかにも高そうなフリルのついた白いドレスを身に纏った、いかにもお嬢様然とした、黒髪の美少女が立ち尽くしていた。

「恵美里………!!く、来るなぁ〜〜っ!!」

 ゆっくり後ずさりする西条。しかし彼女はじりじりと詰め寄ってくる。横島は何がなんだか分からず、こっちを見たりあっちを見たり。

「え?お前、妹いたのか?」

「見れば分かるだろう!?あれは僕の妹の恵美里だ!!」

「………全然似てないな。あ、でも、眉毛は同じか。」

「そんなことどうでもいいから、早くあいつを何処かにやってくれ!!」

「あ、オレ、お兄さんの友達の横島って言います!!」

 西条弟の言葉を見事に無視し、横島は彼女に近付き、挨拶を交わす。

「コラァ〜ッ!!」

「まぁ、お兄様の……!こちらこそ……、」

「………なんだよ、お前が怖がってるから、どんなコかと思ってたら、大人しい普通のコじゃねぇか。」

「そうなんです、お兄様ったら、いつもあぁなんですよ?今日も一緒に遊ぼうとしたら、いきなり逃げ出して……」

「情けねぇなぁ……、お前も。」

「違う!!君は恵美里のことを知らないからそう言えるんだ!!」

「ハイハイ、分かった、分かった。じゃあ、遊んでやれよ?西条。オレは用事があるから……、」



「……嫌だ!」

 一瞬、時が止まったかのようだった。横島は溜息をつくと、西条弟に向かって言う。

「お前なぁ……、いくらなんでもそれは……、」
「嫌だと言ったら、イ・ヤ・なんだ!!とにかく!僕は妹と遊ぶつもりはないからな!?」

「そ、そんな……、お兄様……!」

 ショックを受ける彼女。そして、彼女の目には涙が浮かぶ。

「あ〜ぁ、泣き出しちゃったよ……。西条、お前のせい……ってオイ!!」

 彼女が泣き出した途端、一目散に逃げ出す西条弟。

「ナニ、てめぇ、逃げてんだ!!」

「すぐに分かるさ!!君もそこに居ると危ないぞ!?」

「え?」

「お兄様の。お兄様の……、バカァ〜〜〜ッ!!(ピンッ、ポイっ)」

 彼女は何かを投げるが、それは間も無く地面に落ちてきた……。そして、横島はすぐに西条弟の言葉を理解したのだった。


 地面に落ちてきたもの。



 それは、一個の手榴弾。


 ドカァァァァンッ!!



 光る閃光。そして爆音。



 逃げる横島。そして、西条弟に追いつく。

「なんなんだよ、お前の妹は!?なんであんな物騒なのを持ってんだ?」

「……ウチは代々、刀を受け継ぐ伝統がある。だから、兄さんも僕も刀を持っているんだ。当然それは、女の子が生まれた場合でもだ、まぁ、その場合、小刀なんだが……。」

「じゃあ、なんで……、」

「そう、そこだ。本来、小刀を持つべきなのに何故彼女は火器なのか?その理由は凄く簡単だった……。」

「それは?」

「ウチの宝物庫には小刀というものが存在してなかったのだ!!」

「………って、オイ!!伝統なんだろ!?なんでネェんだよ!?」

「……おまけにナニをとち狂ったのか、ミリタリーマニアだった祖父が刀がないなら……と、火器を持たせたのが、間違いの始まりだった……。」

「無視かよ!?てか、ナニ、一人で回想入ってんだよ?」

「そうして、刀の代わりに火器を持った彼女は当然のようにそれを玩具のように扱ってきた……、そのおかげで、僕と兄さんがどんな目にあったか、思い出すのもおぞましい………。あいつには爆発させられた記憶しか持ってない……。」

「………二人とも何を話してますの?」

 身の毛のよだつ殺気。横島は後ろを振り向く。すると先程の清楚可憐さには程遠い、阿修羅の形相を見せる彼女が居た。


 バズーカを片手に追いかけてくる、長髪のお嬢様が。



「いぃぃいいいいぃぃぃっ!?」

「火器を持った恵美里。普段は虫一つ殺さないくらい大人しく、可愛らしい彼女。だが、火器を持つと、それは一変する。そう、彼女は破壊を省みない最強の爆破魔と豹変するんだ……!!」

「テメェもいつまで説明してるンだ!?」

 横島が西条弟を殴りつけた瞬間、それは『発射』された。それは瞬く間に横島達に追いつき、そして

……、


 弾けた。



 そして、街角には小さなキノコ雲が浮かんだ。




 Part2に続く。

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