ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その27(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 6/23)





三世院京介が京華を後継者に決めたと発表した3時間後。
総会はどよめきの中終わった。

そして、ここは三世院京介の執務室。

「親父!どういうことだ!京華が後継者っていうのはっ!!!?」

ドンっ!
という音が机を叩く音が執務室に響いた。
オールバックの髪型にタキシードを着た40代くらいの男・三世院京二はあの発表からずっと荒れていた。
今もモノ凄い形相で父の京介に噛み付いている。

「京二さん落ち着きなさい、京華が怯えてるわ」

「義姉さんは黙っててくれ!」

着物姿の和江に叫ぶ。
今この執務室には京介に呼ばれ京二、和江、京華そして京介の四人がいる。
京華の母フラウだけはあの総会の後発作が起こり静養のため部屋へと帰っていた。

「大体京華はまだ7歳だぞ!!」

「年齢など関係ない・・・・」

「だったら!!」

「霊力・・・・・・・・・ワシが求める才能はこれだけだ」

「なっ!!!?」

「GSとしての三世院家を再興するにはこの才能が必要不可欠だ・・・
 霊能力者だった父とシスターの母を持つ京華は生まれながらにしてその才能を豊かにもっとる。
 もしかしたらワシを超えるほどにな」

「霊力・・・・?はははは、冗談はよしてくれよ親父・・・
 今の時代それがどうなるってんだ、三世院家はもう巨大企業なんだ!
 GS界なんかにこだわらなくても日本を動かすことだって出来るんだ!
 いいかげん過去の栄光を見るのはやめろよ!!」

「黙れ・・・・」

霊波の込められたその言葉に本当に息苦しくなる京二。

「いいか・・・これから三世院グループの全てを京華に賭ける・・・意見も文句も反論も許さん」

他者をよせつない眼光、断固たる意思、例え子供だろうと容赦などしない態度。
三世院京介が三世院京介たる存在を再度実感する中やっと京二は苦しみから解放された。

「親父はいつもそうだっ!!!
 勉強も!スポーツも!経営も!全て兄貴より俺のほうが優れてるのに!
 霊力の大きさだけで贔屓(ひいき)しやがる!だったら俺はもう知らん!勝手にしろ!!」

京二は吐き捨てるように言い残すといきり立ちながら執務室を出て行った・・・京華に侮蔑の眼差しを向けながら。

「ねぇ・・・なんでおじさん怒ってたの・・・」

「ん?ちょっと虫の居所が悪かったかしら・・・いいのよ京華は気にしなくて」

和江は優しい笑顔で不安げな京華の頭を撫でた。

「京華・・・・・・・お前は今から三世院家の跡継ぎだ・・・
 これからは三世院家のため・・・その再興のためだけに生きればよい・・・」

「う、うん・・・」

いつの間にか眼前にいた祖父に怯えた表情で頷く。
まだ幼き故に京介が言ったことを完全に理解していたわけではない、
ただ今まで感じたことのない祖父の雰囲気に何となく飲まれていただけだった。

「和江・・・この娘の母にはお前から言っておけ・・・ワシは今日から京華を鍛えることにする」

「はい・・・お義父様」

和江はうやうやしくお辞儀をするがその表情は苦渋に満ちたものだった。

「京華・・・行くぞ。今日からお前は屋敷で暮らすのだ、母親との接触はワシの許可なしには許さん」

「え!!?」

京華の目が丸くなる。
お母さんと会えない?何で?
京介の言葉が京華の思考を困惑させる、理由はわかならない、でも言ってることがどういう事なのかは分かる。

「やだ!そんなのヤだぁ!!京華いっつもお母さんと会いたいもん!
 お母さんと会えないならコウケイシャなんてならないもん!」

京華の心からの叫びだった。
最愛の母と引き離れるのは7歳の少女には酷なことだろう。
しかし・・・そんな子供の悲痛で純粋な訴えは京介を腹立たせるだけだった。


バシィっ!!


乾いた音が執務室に響くと同時に京華が右に吹っ飛んだ。
京華はゆっくりと起き上がると左頬がジンジンと熱く痛くなるのをゆっくり感じていく。

「うっ・・ぐずっ・・・・うえぇ・・・うわあぁぁぁぁん!!おじいちゃんがぶったぁぁぁっ!!!」

祖父にぶたれた・・・その事実と痛みで7歳の少女の瞳からボロボロと涙が溢れていく。
大きな声で泣き叫ぶ、ぐしぐしと袖で拭うが涙は一向に止まらない、
だが、そんな京華にすら京介は容赦しなかった。

「後継者にならないだと?母に会いたいだと?
 バカ者ぉっ!!貴様は後継者としての自覚が足らんわ!!!
 三世院の後継者に甘えなどいらんのだ!!」

「ぐず・・・・え゛・・・も・・・おがぁざんにあ゛いた・・・えぐ・・・もん」

「泣きやまんか!!!」

再び京介が右腕を振り上げたそのとき

「待ってください!!!」

京華をかばう様に和江が覆い被さった・・・・まるで本物の母子のように・・・

「ふん・・・子供を産めぬ体になっても愛した男の娘を守りたいか・・・」

「・・・・・・」

和江は京介の屈辱的な言葉に何も答えず優しく京華をあやした。
そして京華が泣き止むと立ち上がり、強い瞳で京介と目を合わせる。

「なんじゃ・・・お前までワシに逆らうというのか・・・」

厳しく冷めた視線・・・
しかし、和江はそれに臆することなく言った。

「お義父さま・・・・お願いです。
 週に一度だけ・・・・京華をフラウさんに会わせてあげて下さい!どうかお願いします!」

そう言うと和江はその場で膝まつき京介に向かって土下座をした。
幼い京華は一体なぜ優しいおばさんがこんなことしているのかは知らない。
京介はその姿に少しだけ考えると・・・

「・・・ふむ、いいだろう。
 餌があったほうが生物は成長がいいものじゃからな・・・」

と一笑した。
この男はもはや京華のことをモノとしでか見てない。

「じゃが鎖は必要じゃな・・・」

京介はドガっと豪奢な椅子に腰を下ろすとやっと泣き止んだ京華を見下ろす。
そしてゆっくりとその口を開いた。

「京華・・・・お前の母親・・・・フラウが心臓病なのは知ってるな・・・」

「・・・ぐす・・う、うん」

前にも記述した通り京華の母は重度の心臓病だった。
今でも毎日診察、治療を欠かさない・・・それでも完治する見込みはなくただの延命作業でしかない、
本人はそれを承知しつつも娘の京華には『よくなってきてる』と虚勢を張り続けていた。

「あれはな・・・・お前のせいなんじゃよ・・・」

「!!?」

「お義父さま!!」

「お前は黙っておれ!!!」

京介は和江をピシャリと黙らせると話を続けた。

「ある日・・・・一人の幼子に先天性の心臓病であることが発覚した・・・
 それもただの心臓病じゃない・・・チューブラーベルの変異体が寄生した心霊病というべきものじゃった・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・その幼子というのがお前だ・・・・京華」

「き、京華が・・・しんぞうびょう?」

祖父の言葉に目を丸くする京華。

「母は嘆いた・・・何百万人に一人の発生確率なのになぜ私の娘が・・・・と。そこで、
 当時イギリス王室霊能機動隊所属の母は・・・・教会に禁じられた秘術を行使した」

「・・・・・・・・」

「秘術は無事成功・・・・・・・・・・・しかし、禁術を行使したその母親はまもなく自ら霊能機動隊を辞職、
 GS協会からは免許を永久に剥奪された。じゃが母親は幸せじゃった・・・・これで娘が助かったならと」

「そ、それってお母さんのことなの・・・?」

「そう・・・母は喜んだ・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分に変異チューブラーベルが憑りつくことで娘が助かったなら・・・・と」

京介の口元がニヤリと歪んだと同時に京華は全てが理解できた。
つまり・・・自分の母親が心臓病なのは・・・

「もう分かったな・・・・・・・・・その禁術は娘の心霊病を自分に転移させるものじゃった」

「あ・・・あ・・・」

知らなかった・・・
母親の病に自分が起因しているなんて・・・この7年間母は何も言わなかった。
苦しくて辛くても決してそんな所を見せたことなかった・・・
それ思い出すとジワァと京華の瞳に涙がたまる。

「今生きてるのは莫大な治療費をワシが出しているからじゃ・・・もしお前が後継者にならないというなら・・・」

もはや幼い京華にも祖父が何を言いたいか、自分に何を言わせたいかなど手に取るように分かった。
選択権などない取引・・・それでも京華は京介の袖にすがって叫んだ。

「がんばるから・・・京華がんばるから!!
 がんばってコウケイシャになるから!だから・・・だからちりょうやめないでぇ!!
 お母さんをころさないで!!おねがいだからぁ!!」

涙をボロボロとこぼし泣いて懇願する京華。
今治療を止められれば母の命はない、そんなことは絶対させるわけはいかない。
愛した男の娘の悲痛な姿に和江も涙が溢れて止まらなかった。


そして・・・・京介は孫の言葉に醜悪な笑みで2、3度頷いて見せるのだった・・・







                                   その27(B)に続く


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あとがき

ちなみに京華の母フラウの由来は

『京』『華』→『華』→花→フラワー→フラウ

とまあ単純な思いつきです^^;

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