ザ・グレート・展開予測ショー

魔法の鉄人の器具と猫


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(03/ 6/21)

『魔法の鉄人』の『扉絵』 より





『包丁、ザックリ、ザックリ』

レストラン魔鈴では、幻想的とも非現実的とも言える光景が展開されてるんだにゃ。

『お鍋、グツグツ、グツグツ』

お目々の有る鍋やら釜やら包丁やらが、魔法使いの食材を調理してるんだにゃ。
苦笑しながら見てる魔鈴ちゃんと僕(黒猫)の後ろではお客さんが呆然としててにゃ、
その周りを足の生えた箒たちが接待してるんじゃニャ。

『グエエーーーッ!?』

アレはマンドラゴラの断末魔だにゃ。包丁の一突きでお料理が終了なんだにゃ。
語尾にゃ、人間を石化出来にゃい悲哀が感じられたのも気のせいじゃないニャ。
僕は少しマンドラゴラに同情したんにゃけど気を取り直し、箒に挟まれてるお客さん笑えんで、料理が出来上がったことを伝えるんだニャ。
お礼を言われたニャ。ついでに御勘定も僕の手にあるんだにゃ。

「じゃ、あとは厨房をお掃除して終わりになんだにゃ!』

『ちりとり、ちりとり』

中(厨房)で排水掃除をしている僕(黒猫)の指示で、お料理で出たゴミを鍋釜達が片付けてるンだにゃ。




あの美神ってメスが魔鈴ちゃんと対決してから、既に数ヶ月が経過してるんだにゃ。



人件費抑制の為、魔鈴ちゃんが考えた結果「道具ゴーレム」を使うことにしたんだニャ。
魔鈴が呪文の詠唱てたんだけど、間違いに気が付きで中断した為ににゃ、魔法の効果が変質してにゃ、
魔法のエネルギーの方向性にゴーレム化までは出来たんだにゃ。
で、どういうワケか僕の「言うこと聞くにゃ!」という命令により箒たちはは大人しく聞くんだニャ
僕はあいつ等を玩具代わりにしてたかりゃな。親みたいに思われてるのかニャ〜?
責任を感じるのは僕にゃ。僕の手にこの店の経営は成り立ってるんだニャ。

「ちゃんと言うこと聞くみたいだし、まっいいか」

って魔鈴ちゃんの判決でそのまま僕の管理下される事になったにゃ〜。
ちなみに、厨房にスパイに来た横島の「これのどこが無害なんじゃー!!」という意見は、自業自得なんだニャ。

順調に経営しているレストランでにゃ、銀行には心配かけちゃいけないにゃって、ちゃんとお金は返してるにゃ。
加えてあいつ等がすべてを手伝ってくれる為、レストランのの経営状態は最高だにゃ。
でも、お店に来る一般人にはどうかと思ったんだけどニャ、
幽霊がスーパーで買い物をし、ゴーストシンガーの演歌がヒットする世の中だが、公にする必要は無いにゃ。
普段は野菜達には、厨房で大人しく僕の遊びあい手にゃ。。
そして今日に至るまで、魔鈴ちゃんと僕はこの奇妙な道具達と上手く付き合ってるんだニャ。



今日、魔鈴ちゃんは町の寄り合いなんだニャ。

「じゃ、行ってきます」

「ニャ!行ってらっしゃい」

『箒、箒、箒』

『鍋鍋、グツグツ』

お昼過ぎに会合場所へ出掛ける魔鈴ちゃんを見送ると、僕は道具達に向かってニャ。

「今日はお店が休みなので、一緒に遊ぶニャ!」

『ちりとり、チリトリ!』

道具達が、隠れるのを確認してにゃ、僕は鬼としての仕事をする為に物陰を調べはじめたんだニャ。


お店に食品納品業者の対応があったり、魔鈴ちゃんのファンが着たりした事もあってニャ、
全員を見つけたのは夕方近くになったんだニャン。
そろそろ、お夜食の支度をしようと思って、僕が皆で厨房に入った時、
唐突に水周りの蓋があいててこの世の物とは思えない物体がいたニャン。
黒光りする姿、の割には凛々しい顔?ここまで漂う腐食匂、どうみても害虫かニャ?
掃除は完璧、害虫駆除業者もちょっと前に来たばかりニャのに。
訝しく思ったもののその物体はかなりハイテンションニャン。話が出来るか試したにゃん。

「な、何者にゃん!」

「き・・」

「き?」

『気に入ったーーー!!』

肩(ノ部分)に乗ったとたん、物体は飛び、その体から
ゴミを口にくわえ、触角が鬼のツノみたいになってるにゃん。
数ヶ月前、美神ニャンの事務所で生まれたゴキブリキングにゃん。

「ニャニィ?」

口から、匂害を噴きつけてきたニャン。不意を疲れた僕はとっさに顔を洗うようにして、匂いで鼻をやられるのを防いだニャン。
害虫王ゴキブリキング、害虫の繁殖欲求や生命力が生に対する執着することから生じた、化け物ニャン。

「よ、横島宅でナントカ生きながらえたというところかニャン?」

よもや、綺麗な厨房で害虫なんて害虫ニャンてと、思ってたニャン。
効かない鼻でニャンとか、距離を取って考えたところで、失調感が体を襲うニャン。口呼吸が激しくなるニャン。動悸も激しくなって、平衡感覚が失われていくニャーン。
タダの匂いではないニャ?腐臭から、毒性の物を吐き急性中毒の一歩手前にゃん。

「ゴキゴキゴキ!」

揺らぐ視線の向かうでは勝利を確信したのキャ?ゴキブリキングが排水を瓶にツメラッパ飲みしてにたにた笑ってるにゃん!
次の瞬間、とうとう僕は意識が・・。ニャー・・・。
『ゴキィィィィィ!』

「ニャガ!」

蹴り飛ばされたニャ〜ゥン。
四、五メートル吹き飛び、仰向けになりそうにゃんだけど、ばく転の要領にゃ。でも頭がくらくらニャ〜。
ゴキブリキングに目を向けるニャ。元気満タンニャン。くちょー。

(匂いが鼻先から消えるまで、最小限で物置にいかなくちゃ、ニャン!)

僕(黒猫)害虫駆除の意思を固めたニャ、ふらつく前足を叱咤しながら攻撃に備えたニャン。
ゴキブリキングはゆっくりと近づいてくるニャン。三メートル前になると羽を出すにゃん。

『ゴキゴキゴキゴキ』

じりじりと物置の方へ下がりつつ、触覚、節足、腐臭を交わしていくにゃん。
でも、もう限界ニャぁ〜。後ろ左足がもつれたにゃん。

(なうー)
その機を逃す相手じゃないニャ。致命の一撃を与えんとゴキブリキングが空瓶を!

『ホウチョー!』

『ゴキ?」

ゴキブリキングの羽に包丁のミサイルよろしく体当たりしてるにゃん!
空瓶が天上に辺り、僕の尻尾を掠めたニャン。
更に厨房のあらゆる場所から他の道具達が一斉蜂起するにゃん。

『チリとリー』

『箒、箒、サッサかサー』

『なべナベグツグツー』

『シャモジ〜シャモジ〜』

何時ものように食材を調理する如くニャン。僕を守るようにして釜達が囲むニャン。
予想外の迎撃にゴキブリキングは驚いてるニャン。僕だって同じニャン。
命令してないし、第一退治なんてしらニャいハズなのに。
けど、僕はすぐ冷静になるニャン。
道具達は所詮は料理道具、化け物退治なんて無理ニャン!

「みんな離れるニャン!」

指示が・・遅かったニャン・・。

『ゴキー!』

動揺から立ち直ったゴキブリキングは羽をたたみ、包丁から身を守るニャン。六本足でチリトリを蹴散らすニャン。
後ろから襲い掛かる箒はさっきもってた空瓶で柄を折るニャン。
飛んできた鍋に腐臭をかけて酸化させてくニャン。
命令が届かないのかニャ〜?道具達はガラクタを乗り越えて攻撃を続けるけど、全滅するニャ〜。

(日本の誇る最強の害虫駆除道具よ、僕の手に来るニャン)

道具達を助ける為にも、猫の手じゃ使いづらいゴキジェットのキャップをはずすニャン。

(害虫をやっつけるニャ!)

でも、思うようにはいかニャンだよ〜、いまだ腐臭が折れないし、ゴキブリキングはでかすぎるにゃ。
すると、それまで周りにいた釜が、いっせいに怪物に飛び掛ったニャン。
流石に全てを壊す事はできず、まとわりつかれ、動きが止まったニャン。
その瞬間、僕の手が器用に動いたニャン、全身を使い、スプレーを最強発射できたニャン!
大技?だニャ。ゴキブリキングの動きが鈍ったニャン。
倒すには今ニャ!

「これでも、食らえ、直接口の中に入れてやるニャン」

害虫駆除駅の奔流が怪物に直撃して、腹から白い霧まで出てるニャン。

『ゴキーーーーーーッ!!」

断末魔を残してゴキブリキングは倒れたニャン。
怪物を倒した所為か、急速に鼻の機能が回復してニャ、僕は辺りを見回したにゃん。
動いてるのは・・。いないニャ。致命傷を受けた物も、受けてない物もタダの道具になってる・・ニャン。
そこへ、帰ってきた魔鈴ちゃんが燦然たる有様を見て声を上げたにゃん。


僕は経緯を話して、二人で道具達を大きなシンクに運んだにゃん。
そこは、洗う場所、汚れた体を綺麗する、という訳ニャン。
怪物の姿はなく、普通のゴキブリが逃げそうだったので、
「こにょやろー」
と、前足でつぶしてやったにゃん。
害虫駆除、終了ニャン。

僕と魔鈴ちゃんは、厨房の中にいたにゃん。

元々道具達の霊力は微弱にゃん。
その為道具ゴーレムとしての生命も半分切れ掛かったニャン。だから、
本来の仕事を忘れたのかニャ?
でも、僕を守ろうとしてくれたことは自発的に行ったとしか思えないニャン。
彼らが命令に忠実な道具で有ることはわかってるニャーども、日本には付喪神ってのが有るニャ。
自我があったのかニャ〜?
半年に満たない共同生活で自我が目覚めたのかにゃ・・?
にゃらば、僕に出来ることは彼らを綺麗に洗って上げる事にゃ。
僕と魔鈴ちゃんは、何度も洗剤を加え、僕はちょっとだけ、目を閉じたニャ。

「すっかり遅くなったけど、キャットフード、お土産よ」

「にゃん!」

魔鈴ちゃんニャによりのご馳走ニャン!、僕も努めて明るい声でニャー。

蛍光灯明かりの下、僕達はホールに向かったニャン。




FIN

dry氏、『野菜と人』オマージュ作品

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