ザ・グレート・展開予測ショー

やかま椎やつら


投稿者名:ライス
投稿日時:(03/ 6/20)



 やかま椎やつら


  第9話 長崎は今日も晴れだった!!(帰還編)


 3日目……。ハウステンボスへ向かうバスの中。横島とルシオラは相変わらず、イチャイチャしている。それを尻目に心中穏やかではないクラスメート(というか男)が一杯いたが、二人はそれに気付いていない。そして西条弟も、その一人であった。すると、彼のすぐ後ろの座席にいた夏子が声をかける


「なぁ、西条。例の件、大丈夫なんやろうなぁ?失敗したらただじゃ済まさへんで?」
「フフフ、安心したまえ。手筈はちゃんと整っている。ハウステンボスはわが西条財閥が買い取った。

あそこの働き手には今回の作戦をちゃんと伝えてあるから、こちらの指示通りに動く。見ていてくれたまえ。見事に二人の仲を裂いてみせよう!」
 しかし、そうは問屋が卸さなかった。バスの運転手と先生が何やら話している。そして話し終えると今度は先生が生徒達に向かって、こう言った。「この先で、大きな落石があって車が通れない状況だから、予定であるハウステンボスは中止して、次のホテルで待機するぞ〜。」と。生徒達には不満のどよめきが立つ。すると夏子は、西条弟の胸ぐらをつかんで、ややキレ気味に彼に聞いた。
「…………………オイ、話が違うやないか?」
「い、いや、こんなハズじゃ……」
「こんなハズもどんなハズもあるかい!どーするつもりや、オンドレ〜っ!」
「どうしろといわれても、コレは事故としか言いようが……。」
「オッ、言い訳するんか?エェ度胸やないか、覚悟は出来とるンやろうなぁ……?」
 拳をパキポキ鳴らし、仁王の如き形相で、西条弟に迫る夏子……。
「ちょ、待ちたまえ、夏子さん………グアァァァァァァッ!?」
 アァ哀れ、西条弟は理不尽にも夏子に瞬獄殺(?)を喰らわせられてしまった。おかげで顔は元の原型をとどめないほどブン殴れたのであった…。
「………なんだか後ろが騒がしいわね〜?」
 前の座席にいたルシオラと横島はそれに気付いて、後ろを振り向いた。
「おっ、西条のヤツが夏子ににブン殴られとる。キヒヒヒ、いい気味だ…!」
「結構仲がいいみたいね、あの二人。」
「なにぃ!?あの野郎、いつの間に夏子とそんな仲に…、許せん!夏子はオレのモン……ギャッ!?」
 いつものようにルシオラに殴られる横島。相変わらず煩悩は止まらないようだ。
「ったく、何遍私に同じこと言わせるつもり?これ以上、浮気したら承知しないわよ?」
「………ハイ。」
 こちらも物凄い形相で脅し(?)にかかるルシオラ。横島はただ何も言えずに頷く他はなかった。そして、バスは次の宿泊先へと向かって道をひたむきに走っていった…。

 そしてその夜…。宿泊先のホテル…。
「結局、今日はどこにも行かないまま終わったなぁ…。」
 横島は部屋で寝転がりながらそう呟いた。すると同室のピートが、「しょうがないですよ、事故があったんですし。」と返す。と、再び横島が「これで、ハウステンボスの金が戻ってこないとおかしいよ

なぁ…。ったく、金ぐらい戻ってこないと気が済まねぇな〜。」と吐き捨てるように言う。それを見て、横島の横にいたタイガーがピートに、「……横島さんも大分美神さんに感化されてきてますノ〜?」と、このように耳打ちすると、ピートはハハハ…、と苦笑いを浮かべ、それに頷く。「オイ、横島。コッチで賭け麻雀しねぇか?」と、別班で同室のメガネの藤田が誘う。「おぅ、ヤルヤル。」横島は起き上がり、彼らの方に入っていった。ちょうど同じ頃、ルシオラ達のいる女子部屋では、話に花が咲いて

いたりして盛り上がりを見せていたのだった……。
「で、なんでアンタ達、あんな奴が好きなの?」
「エ?」
いきなりの問いにルシオラと夏子は動きを止める。
「それって、「横っち「ヨコシマのこと?」
「決まってるじゃないの?ねぇ、私達にはあいつの良さが良く分からないんだけど、実際の所どうなの?」
「えぇと、それは……「決まっとるやないか!!」
 ルシオラが口篭もりながら、言おうとするのを、夏子が切り裂くように声を高らかに言葉を発した。
「ま、そら、アンタ等にはわからんかもな。表面の横っちだけ見てれば、バカで、下品で、スケベな奴かも知れへんが、なんちゅうか、内面の奥深さとでも言うんか?まぁ、そこが横っちのいい所なんやけど。」
「ふ〜ん……」
「まぁ、実を言うと、初恋の人だったりするんやけどね………」
 夏子はほんのり顔を赤めると照れ臭そうに喋った。その後、話はその方面に盛り上がっていく中、ただ一人、ルシオラはというと、なにやら神妙な面持ちで話に入り込めずに居た……。
「そういえば……、私は何でヨコシマのことを好きなんだろう……?」
 こうしておのおのの夜は過ぎ去っていく……。



 そして修学旅行最終日。今日はクラス別行動。横島のクラスは太宰府天満宮へ。
「おぉ、土産屋ばっかりだな……」
 横島は入り口近辺をうろうろと見回す。
「そうねぇ、でもいいじゃない?お土産がたくさん買えるんだし。」
「そりゃあ、まぁそうだけど……」
「じゃ、行きましょ?」
 ルシオラは彼の手を引くと、店へと入っていく。それを見て、心中穏やかではないのは夏子である。彼女はそばに居た西条弟の胸倉をつかむと、
「オイ!!なんとかならへんのか?」
「む、無茶を言わないでくれたまえ!?これ以上はどうしようも………グギャッ!?」
 その瞬間、彼の頬に大きな拳骨の跡が。そしてその場にぐったり倒れてしまった……。
「チッ、使えんやっちゃなぁ〜、こうなったらウチの手で直接……!」
 なにやら夏子の陰謀が渦巻く中、一向は鳥居を越えて、境内の中へ。そこでの集合写真を撮り終え、各自自由行動の時間。横島とルシオラはお守りを買おうとしている。そして夏子は、彼女達に近付いていく。
「こうなったら、力づくでも……、」
 彼女がルシオラの背後に近付いた瞬間、『彼』は現れた。
「君は……、高島くん……?」
 横から聞こえる男性の低い声。見ると背の高い、烏帽子をかぶり、平安京の役人のような装束を着た髭の男だ。おまけに何故かメガネをかけている。
「へっ?オレは横島だけど……?」
「……そうであったな、いや、失礼した。」
「?」
 二人は顔を見合わせて、首を傾げる。そしてその男は続けざまにこう言った。
「では、間違えたお詫び……というのもなんだが、お茶でもどうかね?お茶菓子も出そう。」
「え、でも……。」
「遠慮することはない、さぁ、こちらへ来たまえ。」
 二人は何者かも分からない男に手招かれて、中央の社の中へと入っていく。その時、二人は気付いていなかった。周りの音がなくなっていたことを。人々の動きが止まっているのを。
「どうぞ。」
 お茶に太宰府天満宮名物、ウメガエモチ。ミズキと呼ばれる巫女姿の女性がそれらを二人の前に置くと、彼女は社の外へと出て行った。二人を導き入れた男は、お茶をすすり、湯飲みを置く。
「なんなの?この人……。人間じゃないのは分かるんだけど……。」
「オレに聞くなよ、でもどっかで見たことがあるような、ないような……?」
 耳打ちしあう二人。すると男は咳払いをして、二人を制した。
「ゴホン、申し遅れた。私は菅原道真。ここに祭られている神です。」
「……へっ?あ、あんたが?でも、なんで……?」
「なぜ、君達を招き入れたか。と聞きたいのですか?その答えは簡単です。私は君に知っているのです。前世の君を……。」
「ハァッ!?」
 そして、二人は道真の話に耳を傾ける。平安時代。横島、美神の前世が巡り会い、愛し合い、そして別れの時を向かえ、そして現在……。横島はほとんど記憶のなかった過去の出来事に感心する。一方、ルシオラは言うと、やや深刻な表情をしてその話を聞き入っていた。そして話は終わった……。
「ま、こんなもんですか。私も大昔に人から聞いた話だから、細かくは覚えては居ませんが…。」
「ハァ〜、オレと美神の前世にそんな事があったなんて……。」
「そ、そうね……。」
 ルシオラの表情が堅い。しかし、それに横島は気付いていない。そして道真が言った。
「君達を長居させてしまったようだ。そろそろお開きにしよう。」
「そうだよ、随分長いこと居た気が……。置いてかれていないだろうな、まさか。」
「その心配はない。ココと君等の世界では時間の流れ方が違う。来た時とさほど時間は流れていないと思います。」
「そうすか。それじゃ、俺達はこれで……。ホラ、置いていくぞ、ルシオラ!!」
「あっ、ヨコシマ待ってよ……!」
 来た道を戻る二人。一人は元気良く、しかも嬉しそうに。しかしもう一方は、厳しく堅い表情であった。彼女は思う。
『ヨコシマと美神さんにはあんな因縁があった……。私はそれを邪魔していることに……、イヤ、そんな事、思いたくない。私はヨコシマが好き。でも、ヨコシマは……。』
 俯き、思い悩む彼女。すると……。
「なにしてるんだ?」
「キャッ!?」
 ルシオラの顔を覗き見る横島。突然、彼の顔が現れたのに彼女は驚いた。
「な、なに?」
「お前が来るのが遅いから、見に来たんだ。さ、皆が待ってるぞ?」
 手を差し伸べる横島。それを見て、彼女は微笑み、彼と手を繋ぐ。
「そうね、行きましょ。お土産も買わなきゃね!!」

『待とう、ヨコシマがその言葉を言ってくれるまで……』

 そして時は何事もなく動き出す。滞在を終えた彼らはその後、帰路についた。

 
 長崎の天候は雲ひとつない晴天だったと言う。


〜修学旅行編 完〜


 続く。

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