ザ・グレート・展開予測ショー

とら、トラ、虎!37) デッド・オア・アライブ(前編)


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 6/19)


「 さ、3000万・・・・・・!? 」
「 はい・・・。 」

ある日、タイガー除霊事務所に、和服を着た婦人が仕事の依頼をしにやってきた。
報酬額を聞いた茜は、あわててテーブルの上を片付けて、婦人にお茶をさしだした。

かちゃっ・・

「 ど、どうぞ。 」
「 ありがとう。 」
「 それで、仕事の内容は? 」
「 ええ。 実はわたくし、旅館の女将(おかみ)をやっております。
  その旅館に最近悪霊が棲(す)みついてしまって、お客様にまで被害が及ぶ始末なんです。
  このままでは旅館の名に傷がつきます。
  これ以上被害を出さないため、一刻も早く除霊をお願いしたいんですが、
  GS協会ではいつやって頂けるのかわからないし、
  ほかの事務所もあたっているのですが、なかなか今日中に除霊して頂ける方がいなくて。 」
「 それで、霊の強さと霊のタイプは!? 」

すっ・・旅館の女将はGS協会の調査用紙を差し出した。 茜は調査用紙に目を通す。

「 協会に調査してもらった結果、Aランクで、霊の数は1体、
  念による突風攻撃のみの霊なんですが、それがかなり強いらしくて・・・。 」

ごくっ・・
『 3千万、そんだけあれば借金なんか軽く全部払えておつりがくる。
  Aランクなら所長でも除霊可能だろ、なにしろGSのバトルで優勝してるらしいからな。 問題は・・・ 』

「 ・・・なあ、この仕事、引き受けるのに1つ、条件があるんだ。 」








・・・しばらくしてタイガーが帰ってきた。


「 3000万じゃと!? 」

「 そうなんだ、限りなく、“B”に近い“Cランク”の仕事なんだ。 」
    『 エミさんとの約束の、Bランク以上の仕事は絶対断るだろうし、
      あとでGS協会のミスってことにすりゃあ大丈夫だろ。 』

「 なんか怪しくないかノー。 」
「 金持ちの女将んとこの旅館だから、気前がいいんだよ!
  向こうの条件は今日中にやってほしいのと、旅館を傷つけないことなんだ。
  それぐらいなら、あたいらがやってもやれねえことはないぜ! 」
「 う〜ん、しかしノー・・・・・・。 」
「 Cランクなら前に2回やったことあるけど、簡単に除霊出来てたじゃねーか! 」
「 じゃが・・・ 」
「 なに迷ってんだよ! こんなおいしい仕事、ぐずぐずしてたら他の奴に取られちまうぜ!!
  そんだけありゃ、借金返しておつりが来るしよ!  なあ!! やってみようぜ!! 」

必要以上におしまくる茜。 タイガーはしばらく考えると・・・

「 ・・・そうじゃの、やってみるか! 」
「 おっしゃ! んじゃ、さっそくいこうぜ!! 」


                                    ◆


■除霊現場 旅館■
2時間後、2人はタイガーの運転する車でその旅館へとやってきた。

「 あかねサン! 準備はええかいノー! 」
「 ああ、ばっちりだぜ! 事務所で一番高いお札も持ってきてるしな! 」
「 じゃあ始めるカイノー! 」



タイガーと茜は旅館の全ての入り口に結界を張り、中へ進入し除霊を始めた。


≪≪  ギィイイイーーーーッ!!!!!  ≫≫


宴会場らしき大広間で、ドクロの姿をした上半身のみの悪霊が飛び回っている。
下半身はほとんどかすれているのだが、体長は上半身だけで3メートルはありそうな大きな悪霊に2人は立ち向かう。
茜は笛を吹き、タイガーは幻覚攻撃をしていた・・・

ピルルルルルルルルルルルルルルッ
キイイイイイィィィ―――−−‐ン

「 へ、ヘンじゃな、なんか妙に強いような・・・あっ!! 」 

カッ・・・悪霊の目が光る!

―――――ビュウンッ
    ≪≪  ギィイッ!!!  ≫≫



グンッ「 ! 」
――――――――――――――――――――――――――――――――――― <ドゴッ>!!!!!


「「「「「  ぐはっ!!!!!  」」」」」

「 所長!! 」

悪霊が手を振り上げた瞬間、タイガーは吹き飛び壁に激突した!
壁のコンクリートを破壊するほどの強い衝撃で、タイガーは一瞬気を失う!

「 おい、しっかりしろよ!! 所長!! 」

ビュウンッ

再び風を起こす悪霊に、茜は手持ちの中で最も強力な結界札で守る!

「 結界札!! 」

キイイイイン! ピシッ・・・パア――――ンッ!

簡易結界が悪霊の一撃で簡単に破られる!

「 何ッ!? 」

「 あかねサン、逃げてツカーサイ! 」
「 所長!! 」
「 こいつ、並の霊じゃない・・・それにさっきの攻撃でワシ、足の骨が折れたようジャ・・・! 」
「 そんな・・・! 」

≪≪  ギィイイイーーーーッ !!!!!  ≫≫

カッ
「「「  咆哮波!!!  」」」

襲い掛かる悪霊に、タイガーは座ったまま口から霊気の弾丸を放った!

ドゴ―――――――――ン
≪≪  ギィイーーーーーッ!!!  ≫≫ 

「 さあ、早く!! 」



そのあと2人は、もってきた結界札や破魔札を全て使い、旅館の出口を目指した。
最初の一撃で、全身数箇所を骨折をしていたタイガーは、気を失いそうなほどの激痛に耐えながら片足を引きずっている。
そのためまともな攻撃ができず、悪霊を攻撃するよりも茜を守ることに専念していた。
タイガーの得意の精神攻撃も、並の悪霊なら通じる所が、深手を負ったタイガーの霊力ではこの悪霊には通じなかったのである。

・・・そして旅館を出ると、突然悪霊の攻撃は終わった。
この悪霊の力なら結界を破って出ることも可能だったが、この悪霊の場合、
旅館に留まることを目的としていたようで、それ以上タイガー達を襲う気配はなかった。

そしてその直後タイガーは気絶し、小雨の降るなか救急車でそのまま病院へと運ばれていく・・・。







■白井総合病院■                【 手術中 】

ザ――――――ッ
窓の外は雨が降っていた。
茜は長椅子に座り、祈るように手を組んでいる。

「 所長・・・・・・ 」

たたたたたっ

「 あかねー!! 」
「 魔理・・・ 」


一文字、水樹、洋子、仙香、春華が手術室の前にいる茜のもとへやってくる。
茜は病院についた後、タイガーが相当危険な状態だと聞き、エミの事務所に連絡を入れており、
そこでエミの助手をやっている仙香と春華から、六女の女子寮にいる一文字達に連絡が届いていたのである。

水樹と一文字が茜に聞いた。

「 タイガーさんが重傷ってどういうことなの!? 」
「 いったいなにがあったんだよ! 」
「 だからその・・・悪霊にやられて・・・ 」

仙香は疑問に思う。

「 変ね。 今まで一度も除霊に失敗してないあなた達が、
  Cランク程度の仕事でいきなりこんな大失敗をするなんて。 」
「 それは・・・・・・ 」

ぱっ

「「「「  !!!!!  」」」」

手術中のランプが消え、中から医者が出てくる。 茜が医者に駆け寄る。

「 なあ、所長は! 」
「 まだ予断をゆるされない状況だ。 だが現代医学は決して敗北などしない!
  彼の命がある限り、我々の医学は、医学はああ〜〜〜っ!!  」」
「 ・・・で、結局どうなん? 」

洋子が問う。

きりっ
「 手術は成功した。 だが面会謝絶の絶対安静。 いまは集中治療室行きだ。 」
「 じゃあ命に別状はないんだな!? 」
「 ああ。 しかし、あれだけ頑丈な体をあれほど傷つけるとは、相当な強さの霊と戦ったようだな。

  私も昔は霊などという非科学的なことは信じなかったのだが、
  原因不明の昏睡状態の患者の件や、病魔との死闘やら死神やらなんやらで、
  ちょっとは医者として、非科学的なことを信じてやってもいいかなあ〜と思ったわけで、
  いや、だからといって私は決して現代医学を否定しているわけではなく、
  私は1人の医者として、一つの可能性としていろいろとアレした結果、ナニしたわけで・・・・・・ 」


「 ―――で、どんな悪霊と戦ったんや? 」 

医者を無視して洋子は茜にたずねた。

「 だから、霊が風を起こして所長が壁に飛ばされたんだよ。 そのあと所長が怪我をしてそれで・・・ 」

茜がそれだけ話すと、一文字達全員が反応する。 そして春華、仙香が問う。

「 おかしいわね。 並の霊が念動力を持っているなんて。 」
「 それに巨体のタイガーを吹き飛ばすほどの念動力をもつ霊なら、普通Aランクぐらいいってるはずだわ。
  ・・・あなたたちまさか、Aランクの除霊をやったの!? 」
「 それは・・・ 」



「 ―――それは違うワケ。 」



「 エミおねーさま!! 」

エミの登場に仙香が叫ぶ。



「 タイガー達がやった徐霊はAランクなんかじゃないわ。 ・・・Sランクよ。 」



「「「「 !!?? 」」」」

「 え、S!? 」
 
「 そんなばかな!! あたいらがやったのはAランク―――<ハッ!> 」

あわてて口をおさえる茜。
しかし時すでに遅く、全員の注目を浴びていた。

「 あなたたちが除霊に失敗した後、旅館の女将から旅館の被害について、GS協会に連絡が入ってね。
  それで再調査した結果、悪霊の霊力レベルからSランクと判定されたのよ。 」
「 ランクが変わるなんて事あるんですか!? 」

水樹が問う。

「 ランクはあくまで目安。 協会の調査も完璧じゃないし、霊も日々成長するワケ。
  ワンランク程度のズレならこの世界、日常茶飯事だわ・・・・・・茜。 」

エミは横目で茜を見て彼女の名前を呼んだ。 茜は額から汗を流す。

「 な、なんだよ。 」
「 女将に聞いたわ。 おたく、協会が提示したランクをAからCに書き換えたそうね。 」
「 !? 」
「 なんですって!? 」
「 そういうことかよ、茜!! 」

水樹、一文字が怒ると、茜は開き直る。

「 あんだよ! 困ってる奴から割のいい仕事を引き受けることのどこが悪いんだよ!! 」
「 茜てめえ・・・・・・!! 」

ばっ!

茜に殴りかかろうとする一文字の前に腕を出し、制する洋子。


そして茜に近づき―――
               < バシィーッ >
                             ―――洋子は茜の頬を手の平で叩いた。


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