ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その26(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 6/19)




2006年 12月24日

この日三世院家の『離れ』では厳かという言葉がピッタリなパーティーが開かれていた。
12月24日・・・言わずと知れたクリスマス・イヴ。世間は家族や恋人でこの日を祝い、楽しむ。
そして・・・・・この二人の親子も・・・。

パーン!パーン!

ブロンドヘアーの少女が盛大にクラッカー鳴らす。
離れの小さな一室に華やかな紙吹雪が舞うと少女は笑いながら言った。

「お母さん!メリークリスマス!」

「ふふ・・・メリークリスマス、京華。そして・・・お誕生日おめでとう」

ベッドに入ったままの女性は京華と呼ばれた少女の頭をなでた。
肌は透き通るように白く、髪は金髪で大きな三編みでまとめ右肩から垂らしている。
ただ、生気というものが希薄で今にも折れそうな脆さを見せていた。
この女性こそ京介の長男・京一の愛人であり、京華の母フラウだった。

「うん!ケーキ切ってあげるからお母さんはちゃんとお布団をかぶらなきゃ」

京華はこの年・この日をもって7歳となった。
フラウは30歳・・・日本人の父とイギリス人と母を持つフラウ、つまり京華の4分の1はイギリス人の血が流れている。
そのせいか京華は顔立ちは日本人なのに、髪はプラチナブロンド、目は蒼い瞳という珍しい組み合わせだった。

「こら、京華。その前にお祈りでしょ?」

「あ、忘れてた〜」

三世院家に呼ばれるまでイギリス在住だった二人はキリスト教の洗礼を受けていた。
フラウは敬謙なキリスト教徒、その影響のせいか京華自身も普段の祈りを欠かしたことはなかった。
二人はそっと両手をあわせ目を閉じて黙祷する。

(・・・・・・・・)

京華は少しだけ目を開けチラっと母の首から下げられているロザリオを見つめた。
白銀の輝きを放つそれはとてもきれいで幼い京華には神々しくさえ感じられた。
自分もいつかあれを受け取る日がくるのだろうか・・・
そのとき・・・


コンコン・・・

「は〜い、どうぞぉ」

「こんばんはぁ」

小さなノックに気づきドアを開けるとツインテールの少女が入ってきた・・・
それは・・・

「あ!かすみちゃん来てくれたんだぁ!」

そう、こちらも7歳になったばかりのかすみ。代々橘家は三世院家に使えてきた使用人の一族だった。
使用人といっても三世院家の中で発言力は強く、父、母ともに高給をもらい三世院家で働いている。
二人は京華がイギリスから日本へきた4年前からの友達で、
広い屋敷の庭で迷子になった京華をかすみが見つけたことで一緒に遊ぶようになった。

「こんばんは・・・メリークリスマス、かすみちゃん」

「あ!奥さまごキゲンうるわ・・・し?しゃ?しゅう?」

「子供がそんな気ぃ使わなくてのよ?それに私は正妻じゃないんだし・・・」

「は、はい・・・じゃなくて、うん、おばさま」

幾分か緊張した面持ちで頷くかすみ。
いくら愛人とはいえ三世院家の屋敷で暮らし、その娘は立派に当主の血を引いているのだ。
かすみは思わず使用人と主の関係を思い出して挨拶したのだった。

「かすみちゃんのお父さんとお母さんは?」

「うん、おやしきのパーティーに行っちゃった。わたしは行ってもつまらないし、
 こうやって京華ちゃんやおばさまとケーキ食べるほうが楽しいもん」

「えへへ〜だって京華とかすみちゃんは一番の友だちだもんね!」

ケーキを頬張りながら楽しく話す京華とかすみ。
子供らしく愛らしい会話、それを見るだけでフラウは幸せな気持ちになれた。

「かすみちゃん・・・・これからも京華と仲良くしてあげてね」

「はい!京華ちゃんとはこれからいっつもいっしょだよ?ね〜?」

「ね〜♪」

ニーと笑みを浮かべ笑いあう二人。
そんな子供達につられフラウも優しく笑みを浮かべるが・・・・
突如胸が苦しくなり、苦痛に顔を歪めそうになる。子供達は気づいていない、いや気付かせてはいけない。
フラウは胸をギュっと抑えながらも笑みを作り続けた。

(主よ・・・・・・・・・願わくば・・・・残されるこの子に幸多からんことを・・・)

容赦なく襲ってくる病魔と必死に戦いながら・・・・フラウは京華を見つめた──────慈愛の眼差しで。













2007年 1月6日

07年度第一回三世院家総会。

年初めのこの総会は重役、使用人、側近、親族総勢500人を集め開く大きな総会だった。
もちろんこれには当主・三世院京介をはじめ、次男京二と妻、その子供、故・長男京一の正妻・和江、
そして使用人筆頭の橘家(かすみも含む)も呼ばれ、さらには今まで招待されたことのない愛人のフラウにその娘京華も来ていた。

「ふわ〜、人がいっぱいだねお母さん」

「え、ええ・・・・そうね」

キョロキョロと顔を動かす京華に答えながらもフラウは不安で仕方なかった。
こちらに呼ばれて4年間。一度も総会などに呼ばれたことはない・・・それなのになぜと・・・。

「フラウさん・・・・落ち着きなさい・・・」

「あ、和江さん・・・」

フラウの横に座ったのは故・京一の正妻和江だった。
旧姓・島村和江。京一とは政略結婚にも似たようなものだったが必死に夫支え、家を守ってきた大和撫子。
愛人がいたことも、そして隠し子がいたことが発覚しても決して慌てず、
むしろこちらに呼んで世話をするべきと献策したのは和江自身だった。

「あなた達を呼んだということはついに三世院家として認められたのかもしれない・・・
 いい?何があっても慌ててはダメよ?あなたと京華のことを疎ましく思ってる親族もいるのだから」

和江の視線をフラウが追う、すると行き着いたのは京二の一族だった。
次男とはいえ長兄はすでにいないならば自分達こそが後継者と言い張る京二達にとってフラウ達は目の上のたんこぶだった。

「はい・・・・。あの、一つだけ聞いていいですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・何?」

「・・・・・・・・・どうして私達にここまでよくしてくれるんですか?
 ・・・・・・・・・・あなたから見れば私は・・・・・」

正妻の和江から見れば愛人のフラウは泥棒猫と呼ばれてもおかしくない。
その上自分が得ることの出来なかった京一の子を設けている・・・・憎まれて当然なのにどうして・・・
そんな感情がフラウには昔からあった。
和江はフラウの質問に静かに目を閉じて答えた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・同じ男を愛したから」

「・・・・・・・・和江さん」

同じ男を愛したからこそフラウの気持ちが分かる・・・。
フラウはそんな和江の思いに涙し、ふかぶかと頭を下げるのだった。

そして、10分後・・・

司会の開会の挨拶の後、当主三世院京介がその壇上に上がった。
紋付袴に長い顎鬚、ギラギラにした眼光に会場は一斉に静まり返った。

「今日(こんにち)・・・・・我が三世院グループは隆盛を極め日本を代表する巨大企業に成長した。
 その勢いはますます盛んで宿敵六道グループすらもう敵ではない・・・・」

マイクを通して聞こえる三世院老の言葉に少しだけ安堵の息を漏らす一同。
どうやらお叱りの言葉はない、三世院グループは順調・・・・そう思えた次の瞬間!

「だが!しかしっっ!!!!!」

突如声のトーンがヒートアップしこの場にいる全員を驚かせた。

「三世院家は元を正せば企業などはなく平安の世から続く陰陽の家!
 現代では最高のGS名家だった!!それがここ四半世紀で伸びた美神家という輩に汚い罠をはられワシは失墜し!
 GS界には三世院家に連なる者は極僅か!!この状況がどうして許せようかっ!!!!?」

顔を赤くし怒声をあげる三世院老に一同は目が離せない。
さらに演説は続く。

「よって!!これからはGSとしての三世院家を再興すること優先させ再び日本、
 いや世界に三世院家の名を轟かせようではないかっ!!?」



ワアアアアアアア────────────────────────っっっ!!!!!!!!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチっ!!!!!!!!



京介が話を締めると会場から一斉に歓声と拍手があがる。
だが、決して京介の言葉に同調したからではない、『当主が話を締めたら盛り上げろ』これが暗黙の了解だった。
しかし・・・・京介の言葉はまだ続いた。

「じゃが・・・・ワシは老齢でもはや力不足だろう・・・・・じゃからワシが亡き後の次期当主をここで発表しようと思う・・・」

京介の言葉に会場がどよめいた。
つまり三世院家の後継者、自分達が使えるべき新しい主を発表しようと言うのだ。
この言葉に嬉々とした表情を浮かべるのは京二の一族、長兄がいない今正当な後継者は自分達しかいないからだ。
一同が胸を高鳴らせ口を閉じ黙ると・・・・・・・・・京介は静かに口を開いた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワシの後継者は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前だ───

































・・・・──京華」


京介が指を差したのは・・・・母の隣で目を丸くして驚く蒼い瞳の少女だった─────



                                   その27に続く

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